テラーノベル
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プラチナブロンドが美しいあの方は、もしかしたらお父様が団長を務める第五師団の方で、見回りをしていたのかもしれない。だって、貴族のご子息なら魔術師団の正装ではなく、周囲の令息のように着飾るものよ。
周囲の様子をそっと窺うけど、魔術師団の礼服を着る方は他に見当たらない。それに、彼はお父様と話がずいぶん弾んでいるようだ。ただ、どちらも笑顔一つないのを見ると、お仕事の話をしていると考えるのが妥当に思える。
風が吹いて、男性の美しい前髪が揺れて輝いた。
長い髪はきっちりと一本の三つ編みに結ばれているけど、あれを解いたらさぞ豊かで、世の令嬢がうらやむ長さだろう。その長い髪が解かれる姿を想像したら、どういうわけか、まるでお姫様のようにブラシを当てて髪を梳く姿が浮かんだ。そんなことは絶対にないだろうと思えば、尚更おかしくて笑いが込み上げてくる。
助けてくれた人で妄想して笑うなんて、不謹慎よね。だけど、頭の中は誰も見やしないし、子どもの妄想くらい大目に見て欲しい。
だって、こんなことでしか私の気持ち軽くすることはできないんだもの。
堪えきれない笑いを継母から隠すようにして、口元に押し当てたハンカチ押し当てた。見つかったらなにを言われることか。人混みの中で、隠れながら扇子で背中やおしりを強かに叩かれるかもしれない。そんなの絶対に嫌だわ。
だけど、見つかっちゃいけないと思えば思うほど、不謹慎にも妄想が進んでいく。
にこりとも笑わない姿で髪を梳いてもらったら、お礼をいうのかしら。あるいは、当たり前のような顔で手入れをしてもらうのかも。どこかの有力貴族なら、ありうるわよね。──笑いが胸の内で沸き上がった。
ダメよ。継母に気付かれてしまうわ。
気持ちを落ち着けようと息を吸いながら、つい男性の美しい姿を目で追ってしまった。すると、扇子を口元に当てた継母の顔が、そっと私の耳元に寄せられた。
「諦めなさい。無能なお前には縁のない男よ。まぁ、そこらの小娘にも言えることでしょうけど」
小バカにするような声に背筋が強張った。
継母の告げる言葉の意味がわからずに黙っていると、悪趣味な扇子がパチンと閉じられる。
扇子がすっと動いた。指し示された先には微笑む令嬢たちがいる。彼女たちは、ひそひそと話しながら彼へと熱い視線を送っていた。だけど、彼はにこりとも笑わず、着飾った令嬢の誰一人とも視線を合わせない。熱い視線に気づいていないのか、はたまた無視をしているのか。
再び広げられた扇子とともに、継母は私に顔を寄せた。耳元で嘲るような声が告げる。
「無能なお前が、よき伴侶なんて望むんじゃないわよ」
言葉の意味をすぐには理解できなかった。だけど、鼻で笑われたことで馬鹿にされているのだと気づくことはできた。
反射的に唇を噛んで、悔しさに耐えると、継母は気分よさそうな顔で私の耳元で笑い声をこぼす。
「人並に恋ができるなんて思わないことよ。一生、私のために働きなさい」
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ああ、そういうことか。
ハンカチで口元を隠した私を見た継母は、私が彼に恋心を抱いて頬を染めていると勘違いしたのね。お父様が、よき伴侶をなんていったからだわ。そんなこと、微塵も考えていなかったのに。
私は恋愛をするどころか、恋愛小説を読む暇すら持ち合わせていない。無能と蔑まれて雑用係のように毎日を送っているのに、どうして男性との結婚を思い描くような乙女思考になれるっていうの。
それに、今日からお姉様はいない。継母から私を守ってくれる人は、もういない。
叩かれようが、屋根裏部屋に閉じ込められようが、泣いている場合じゃない。恋をする暇があったら、継母を追い出す手立てを考えないといけないの。
絶対に、お父様の目を覚まさせて、継母をレドモンド家から追い出してみせるんだから!
コメント
1件
うわああ第3話読み終えたよ…!!😭💕 主人公の“恋愛してる場合じゃない”っていう現実的な思考、めっちゃ刺さった…!「一生私のために働きなさい」って継母の言葉、胸がぎゅってなったよ。でもそこで笑いをこらえてる姿がもう健気すぎるし、お姉様いなくなったのに「絶対追い出してみせる」って決意してるところ、めっちゃ応援したくなる!!✨ 助けてくれた男性の髪梳く妄想して笑いそうになるのも可愛すぎて、ギャップでやられました…次話も絶対読む!!📖💕