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魂審問庁の法廷に、冷たい鐘の音が響いた。 それは、次の被告の裁判が始まる合図だった。
「被告、螺斜 朝美絢。前へ」
白い霧が割れ、制服姿の少女が姿を現した。 十五歳。 その目は深い影を落とし、歩くたびに肩が震えている。
裁判長が静かに告げる。
「これより、螺斜 朝美絢の審問を開始する」
検事が立ち上がり、罪状を読み上げた。
「被告・螺斜朝美絢。 死因は自死。 しかし本裁判で問われるのは“死に至った経緯”と“魂の状態”である」
少女は小さく息を呑んだ。
検事は続ける。
「被告は生前、深刻ないじめを受けていた。 だが――本件では、被告が自らを過度に責め続け、魂を損壊させた行為が審理対象となる」
裁判長が補足する。
「魂審問庁では、自死そのものを罪とはしない。 しかし、魂を壊すほど自分を否定し続けた場合、 “魂の歪み”として審理される」
朝美絢は震える声で言った。
「……私が……裁かれるんですか……?」
「あなたを罰するためではない」 裁判長は静かに首を振った。 「あなたの魂がどれほど傷ついているか、 そしてその傷がどこから来たのかを明らかにするための裁判だ」
検事が手を上げる。
「証拠映像を提示する」
光が広がり、教室の記憶が映し出される。
机に書かれた落書き。 隠された靴。 背後で笑う声。 無視。 孤立。 沈黙。
朝美絢は目をそらした。
検事が言う。
「被告は、いじめの被害者であった。 しかし――被告は誰にも助けを求めなかった。 その結果、魂が限界まで追い詰められた」
少女は震える声で反論した。
「……だって……言ったら……もっとひどくなると思って…… 家族にも……迷惑かけたくなくて……」
検事は冷静に返す。
「その判断が、あなたをさらに追い詰めた。 あなたは“自分の価値を否定する”という、 魂に対する重大な損壊行為を行った」
裁判長が告げる。
「では、証人を呼びます」
朝美絢が驚いて顔を上げる。
「……証人……?」
「あなたの生前を見ていた者だ。 あなたが知らなかった事実を語る者でもある」
法廷の扉がゆっくりと開いた。
そこに立っていたのは―― 朝美絢が想像もしなかった人物だった。
少女の目が大きく見開かれる。
「……どうして……あなたが……?」
裁判長が宣言する。
「証人、入廷」
砂時計の砂が落ちる音だけが、法廷に響いた。