莉心…本名は歌心だけど…side
今日はoff。
もちろんいつもなら嬉しい。…だけど。
私は初めて休みを呪ったかもしれない。
目の前にいるのは無邪気な笑顔でソファーに腰掛けている男の子。
あれは数分前の事だった。
ピンポーン
ここに引っ越してきてから初めてチャイムが鳴らされた。
宅配は何も頼んでないし…とすると知り合いが…
でも私の知り合いってろくな人いないんだよな…、っと
憂鬱な気分で出る。
「…はーい。」
「お姉さん!来ちゃった。」
目の前には、パッと見は無邪気、な笑顔を浮かべている小学生。
この笑顔の奥にはとんでもない思惑が隠されていますよ、と彼の知り合いみんなに知らせたくなる。
「来ちゃった。じゃないの。」
「エヘヘ…。」
「嗅ぎ回るのは終わり。…言ったよね?」
「そうだね。でもボクはお姉さんとお話したいんだ~」
「いいの?君に色々聞いちゃうよ?」
「そっくりそのままお返しします!」
…負けた。
特例として入れてやろう。
…てなわけだ。
「…で?なあに?話したいこととは。」
「お姉さんの仕事、前聞いたけど安室さんと同じって言ってたでしょう?」
「そうだね。」
「喫茶店の店員なら…なんで、仕事柄目立てないなんて言ったの?」
そういやそんなこといったな。
確かに不思議か。喫茶店の店員なら目立ったって問題ないはずだもんな。
「君が察している通り、私の職業は喫茶店の店員ではないよ。」
「っ!じゃあ…なに?」
「君はひとつ私に質問したね。次は私のターンだ。」
強引に話を切りあげて質問を考える。
…彼に聞きたいことは沢山あった。
厳選するのは難しいが…ひとつ忘れてはいけないのが、
この質問をする意味は、答えを聞くことではなくて、
彼を追い返すこと。
私はそう自分の中で釘を指して、彼に言う。
「…なんで君は、そんなに演技が上手いのかな?」
「…は?」
彼は聞かれた意味がわからないようだったので、ちゃんと説明をしてあげる。
「日本警察の救世主とも言われた高校生が、よくそんな小一男子を演じられるね。」
「…え?何言ってるの?ボク子供だよ!」
やっぱはぐらかすか。
「無駄だって。…もう知ってるんだし。
観念して吐きなよ。」
そう言うと、彼の私を見る目がさらに鋭くなる。
もう彼は偽りの笑顔さえ浮かべていない。
「…なんで知っているんだ?」
「さあね?私情報屋みたいなとこもあるから。」
「みたいなとこもある…本職ではないってわけね…」
「察しが良くて助かるよ。話がスムーズに進む。」
そして私は、彼にとどめをさした。
「もっといろいろ聞かれたいか?暴かれたいか?」
すると彼はく…と唇をかみしめて言った。
「…また来ます。」
「もう来なくていいよ。」
ほんとに。
…もうほんとに勘弁して…
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