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その日は時間のかかる任務がひとつあって、ようやく終わったと事務所に戻ってきたんだ。事務所のドアの影に知らない気配があって、でもその横には見知った凪ちゃんの気配があって、依頼者かなと思い、近づいたら嬉しそうに向き合うふたりがいた。おまけにキスまでしちゃって。
びっくりして固まってたらふたりが出てくるところで、既のところで物陰に隠れてふたりを見送った後事務所の中に入ってへたり込む。上がってしまった息を整えようと息を沢山吸おうとしたのにちっとも吸えなくて。
【なに….あれ…】
ふとした疑問が口の隙間からこぼれた。それを境に疑問がふつふつと湧いてくる。凪ちゃんと楽しそうだったあいつは誰? なんでキスしてたの? 俺が知らないところで?
あの紫陽花色の瞳に映る1番はいつも俺だと思ってた。いじりいじられ、頼りになる良き友人だと思っていたが俺が貴方に対して抱いている感情はそれだけではなかったみたいだ。一般的に愛と呼ばれるもの。いや、それも違うか。俺の凪ちゃんを思う気持ちを一言ごときで表したくない。 その綺麗な瞳に俺だけを映して欲しい。どうしたら、どうしたら、どうしたら、どう、した、、ら、
朝日の暖かい温もりと鳥のさえずりの音で目が覚める。どうやら昨日はそのまま寝てしまっていたようだ。シャワーを浴びて、髪を乾かして、ご飯を買いに外に出かけて帰ってくると奏斗が来ていた。
【どうしたの】
なんて問いかけたら
“なんか話聞かなきゃいけない気がしてさ”
なんて返される。つくづくこのリーダーには敵わないなと思う。いつだって俺の事お見通しなんだから。この状態の奏斗には隠し事はできないので素直に答える。
【昨日任務から帰ってきたら、凪ちゃんが俺の知らない人とキスしてて。どうしたら俺のもとから離れないように出来るかなって。もし奏斗がさ、この状態だったらどうしてた? 】
何を隠そうこの男俺の同期である渡会雲雀と付き合っているのである。それもあまりよろしくない方法を使って付き合い始めたのだ。だから少しは頼りになるのかもという下心もある。
⟬もー! あんたねー、僕のことなんだと思ってるのさ。まあ僕だったらー? 監禁かな。家借りれるコネはあるし弱がってるヒバもかわいいと思うし。 ⟭
監禁、、、か。意外といいかもしれない。凪ちゃんと俺で二人っきりになるのは簡単だし。そしたら家は実家から借りればいいか。それなりのもの用意してくれると信じてる。どうやって堕とそうかな。
⟬ちょ、ガチでやる気!? アキラがいない間の言い訳どうすんのさ。 ⟭
「もちろん。言い訳はあとからでも何とかなるよ。体調不良とかさ。奏斗も人のこと言えないでしょ。あんな方法取っといてさ。」
ちなみにあんな方法というのは、雲雀を裏から手を回して誘拐させそこをヒーローのご登場という形で助けて告白したのだ。俺がこれを知っているのはいつぞやかの日の借りを返しに凪ちゃんと手伝いに行ったのだ。
⟬その事は言わないお約束でしょ。もー!!わかった、いいよ。リーダーが許してあげる。その代わりアキラのこと壊さないでよね。復帰してもらう予定なんだから。⟭
【絶対壊さないよ。俺のこと好きになってもらうだけだから。 】
“これは2人だけの秘密ね”なんて約束して外に出る。嬉しくってついつい鼻歌がこぼれる。
後は準備をするだけ。
待っててよね、凪ちゃん。
ついに今日が決行の日。準備は万端だ。無事に家も借りられたし、眠らせる薬だって用意してきた。たった今話したいことがあると呼び出して凪ちゃんのことを待っている。あ、来た。
「なんです?セラ夫、言いたいことと言うのは。」
その質問に答えずに背後に回って腕に針を刺す。ぷすっと音を鳴らしたそれは、腕の中に規則的に液体を注入していく。
「なに、して、、、」
【喋るのも辛いでしょ、ほらはやく力抜いたら〜?笑】
まるでスローモーションのように動く君。打った薬は俺でも効く薬なんだから君に効かないはずがないでしょ。力抜いてはやく楽になったらいいのに、負けまいと動いてる。ついにはおおきく振りかぶってこちらに向かってきている。でもさ
【力で元暗殺者に勝てると思わないでよ。】
大きく体を動かしたせいでがら空きになっている鳩尾を殴る。刺激に顔を歪めて呻いてる凪ちゃんは絵画のような美しさで喉がごくりと唾を飲み込む。
【また後でね、凪ちゃん。】
意識を失っている凪ちゃんに聞こえたかは知らないが声をかける。凪ちゃんを担いでなるべく人が通らない道を通っていつもの家ではなく、借りた家に帰る。この家はもともと拷問用の部屋で防音性も高いし、窓にも格子がかかっていて監禁するのにはうってつけの家である。なぎちゃんを運び込んで、片足にこの部屋ぐらいなら歩ける鎖をつける。もちろんこれも俺が実験台になって壊れなかった優れもの。外すには俺と奏斗が持っている鍵が必要で、俺を騙すだけじゃ外には出られない。細々と説明してきたが要するに絶対に抜け出せないのだ。脱出できないと悟ったとき、君はどんな顔をしているのだろう。そんなことを考えているとようやく君が起きそうな感じがしたから、君に近づいたんだ。
「ここはどこだ?」
なんて寝起きの甘く掠れた音が響くから返事の代わりに凪ちゃんの手の甲にキスをする。
【 ここはねー俺と凪ちゃんの気持ちがひとつになる場所。】
「わ”っ!! ちょ、馬鹿お前何して」
【プリンセスにはお目覚めのキスが必要でしょ?】
なんて微笑んだら案の定怒られて。
「何やってるんですか。というか本当にここ何処です?さっき巫山戯たことぬかしてましたけど。」
【巫山戯た事じゃないよ。俺は本気。ていうかそんなに呑気でいいの?目の前にいるのは仮にも君を誘拐した本人なのに?】
その言葉で俺に薬を盛られたことを思い出したらしい。呆れた目つきから猫のように周りを警戒する目つきに変わった。そんなに威嚇したって俺には無意味なのにね。
「さっきの巫山戯たことが本当ならば答えはノーですよ。私とあなたの気持ちはひとつになることは無い。生憎ですが私には恋人がいるんです。諦めてくれませんか。」
そんなことは承知の上だ。それが嫌でこうやって誘拐してきたんだから。
【諦めるわけないじゃん。凪ちゃんこそ、その恋人のこと諦めて俺と付き合おうよ】
凪ちゃんからの返事は想定済みのNOだった。そうだよね、簡単に諦めるわけないもんね。でも俺だって絶対諦める気は無いから。心の中で宣戦布告をして凪ちゃんと向かい合う。
【簡単なゲームをしようよ。ルールは簡単、これから五日間君の色んなところ弄ってあげる。君がイかせてって言ったら君の負け。俺と付き合う。1週間君が耐えきったら俺の負け。君のことを諦めるよ。】
どう、簡単でしょ?なんて嘲笑を含んだ笑みで笑ってあげる。それに凪ちゃんの負けず嫌いの心は働かざるを得ないことを俺は知っている。それにならって、君は”上等ですよ受けてたちます”なんて生意気な返事が返ってきて静かにほくそ笑む。全てが俺の想定通りなんてことを知らずに。あーあ、可哀想な凪ちゃん。