テラーノベル
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最終話 「これからも、同じ夜を」
春の風が、カーテンを揺らす。
窓の外では、いつもの街が、いつも通りに動いている。
でも、部屋の中だけは違った。
⸻
葛葉視点
ローレンが、隣で眠っている。
呼吸は穏やかで、指先がまだ俺の袖を掴んだまま。
(……ほんとに、ここまで来たんだな)
高校の頃。
離れて、会えなくて、
それでも毎日連絡して。
泣かせて、泣かされて、
それでも離れなかった。
努力嫌いな俺が、
唯一、続けてきたこと。
——ローレンと、向き合うこと。
「……起きてる?」
小さな声。
目を開けると、ローレンがこっちを見ていた。
「起きてる」
「……よかった」
安心したように笑うのを見て、
胸の奥があったかくなる。
「なぁ、ローレン」
「ん、」
「俺さ」
少し間を置いて。
「これからも、隣にいてぇわ」
照れも、誤魔化しもない。
「ずっと、」
⸻
ローレン視点
その言葉は、
一番欲しかった形で、胸に落ちてきた。
「……うん」
短く、でも迷いなく答える。
「俺も」
指を絡めて。
「くっさんの隣、譲る気ないよ」
少し笑われるかと思った。
でも、先輩は笑わなかった。
ただ、静かに抱き寄せてくる。
「それでいい」
耳元で低く。
「それがいい」
窓から差し込む光が、
二人を包む。
特別な言葉は、もう要らなかった。
⸻
エピローグ
朝食を作るとか、
どっちが先にシャワーを使うとか、
そんな些細なことで笑う。
外に出れば、
またそれぞれの世界がある。
でも。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
帰る場所は、同じ。
離れた時間も、
越えてきた夜も、
全部ここに繋がっている。
初夜は、終わりじゃなかった。
それはただの、通過点。
これから先、
何度でも同じ夜を迎えるための。
——始まりだった。
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