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「なあ、ライ」
放課後。
緋八マナがふと思い出したように言う。
「今年も文化祭、あるんやろ?」
「あ、うん」
伊波ライが頷く。
「来る?」
少しだけ期待したような目。
「……行くに決まってるやろ」
即答やった。
⸻
■あの日と同じ場所
文化祭当日。
去年と同じように人で溢れている校内。
「……やっぱ多いな」
「言ってたね、人混み苦手って」
「せやけど」
隣を見る。
「今日は、まあええわ」
「なんで?」
「……お前おるし」
「ふふ」
笑われた。
でも、否定せえへん。
「ここ、覚えてる?」
ライが指差したのは。
初めて出会った場所。
「ああ」
忘れるわけない。
「ここでさ、目合ったよね」
「……そやな」
あの時は。
ただ見てただけやった。
でも今は——
「今は隣やもんな」
「うん」
自然に、手が触れる。
そのまま絡められる指。
⸻
■今年は違う
「いらっしゃい!」
去年と同じように接客するライ。
でも。
「マナ、ちょっと手伝って」
「は?」
「人足りないんだ」
「しゃーないな」
エプロンを渡される。
「似合ってる」
「うるさいわ」
⸻
一緒に立つカウンター。
「いらっしゃいませー」
「……ぎこちないな」
「初めてだからね」
ライが隣で笑う。
その距離が、やけに近い。
⸻
「ねえ、マナ」
「なんや」
「こうやって一緒にできるの、いいね」
「……まあな」
正直、悪ない。
むしろ。
めっちゃええ。
■見てる側の反応
少し離れたところで。
「……なあ」
赤城ウェンが呟く。
「完全に夫婦感出てない?」
隣の
小柳ロウが頷く。
「出てるな」
⸻
さらに後ろ。
「いいなああれ」
佐伯イッテツがぼやく。
「やれば?」
宇佐美リトが軽く言う。
「俺らで屋台?」
「絶対喧嘩するでしょ」
「否定できない」
⸻
■ふとした瞬間
一段落して。
「疲れた?」
「ちょいな」
「おつかれ」
そう言って。
ライがそっと肩に触れる。
「……人前やぞ」
「いいでしょ」
「……まあ」
もうバレてるしな。
⸻
「マナ」
「ん?」
「今年はさ」
少しだけ近づく。
「ちゃんと一緒にいられるね」
「……そやな」
去年は。
ただ見てただけ。
話すだけで精一杯やった。
でも今は。
⸻
「恋人やしな」
「うん」
その言葉に、ライが嬉しそうに笑う。
■少しだけ特別な時間
校舎裏。
人が少ない場所。
「ちょっと休憩」
「せやな」
並んで座る。
少し静かな空気。
⸻
「……なあ、ライ」
「うん?」
「去年さ」
「うん」
「あん時、めっちゃ見てたん気づいてた?」
少しだけ意地悪く聞く。
するとライは、少し考えてから。
「うん、なんとなく」
「……マジか」
「でも、また来てくれると思わなかった」
「そら、行くやろ」
「なんで?」
「……好きやったからや」
さらっと言ってしまってから。
「……あ」
やってもうた、と思った。
⸻
でも。
ライは、すぐに笑った。
「知ってる」
「なんやそれ」
「顔に出てた」
「……出てへんわ」
⸻
■あの日の続き
「マナ」
「ん?」
少しだけ距離が近づく。
「去年は、ここで何もできなかったね」
「……せやな」
ただ見てただけ。
でも今は違う。
⸻
「今ならいい?」
「……今ならな」
小さく答える。
⸻
そっと触れるキス。
文化祭のざわめきが遠くなる。
ほんの少しの時間。
でも。
ちゃんと“今の二人”のキス。
⸻
「……人来るで」
「来ないよ」
「なんでわかんねん」
「なんとなく」
適当すぎる。
でも。
少し笑ってしまう。
⸻
■これからも
帰り道。
「楽しかった?」
「……めっちゃな」
素直に答える。
去年とは、全然違う。
「俺も」
ライが優しく笑う。
⸻
「なあ」
「うん?」
「来年も来るで」
「うん、待ってる」
「その時も」
少しだけ照れながら。
「一緒に回ろな」
⸻
ライは、少し驚いたあと。
すごく嬉しそうに笑った。
「約束ね」
「……おう」
⸻
夕焼けの中。
繋いだ手。
少しだけ近い距離。
⸻
あの日は、始まりやった。
そして今日は、その続き。
⸻
これからも。
何度でも、隣で。
同じ景色を見ていく。