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「だって涼ちゃんがさぁ。」
また今日も元貴の相談にのる。
僕は、元貴の親友として、彼の涼ちゃんへの一途な想いをずっと知っていた。
同時に、涼ちゃんが元貴に抱いている「家族のような愛」の言葉が、決して元貴が望むような恋愛感情ではないことも理解していた。
僕は二人の間で板挟みのような状態だった。
練習の合間に、僕は涼ちゃんにさりげなく尋ねた。
「涼ちゃんさ、元貴のこと、本当にただのメンバーとか、家族としか思ってないの?」
涼ちゃんは一瞬、はっとしたような顔を見せたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「え?若井、いきなりどうしたの?うん、元貴は大切な仲間だし、家族みたいなもんだよ。若井もそうだけど」
涼ちゃんの返答に、内心ため息をついた。涼ちゃんが本心を隠しているのか、それとも本当にそう思っているのか、若井には判断できなかった。
でも、元貴の苦しむ姿を見ているだけに、若井はもどかしさを感じていた。
もともと僕はメンバーの中でも最も鈍感だと自他ともに認めるタイプだった。
でも、最近の元貴と涼ちゃんの間に流れる、言葉にならない空気を、なんとなく察するようになっていた。
練習中に元貴が珍しくミスを連発した。普段なら決してしないような単純なミスに、眉をひそめた。
「元貴、今日なんか変じゃね?いつもならあんなミスしねぇだろ」
そう言うと、涼ちゃんがすぐに元貴をかばった。
「若井、あんまり元貴のこと責めるないでよ。調子悪い日だってあるじゃん。」
涼ちゃんの言葉に、元貴は少しバツが悪そうな顔をした。
その様子を見て、ぼんやりとだが、二人の間に特別な何かがあるのではないかと感じ始めた。
それは恋愛感情なのか、友情なのか、僕にはまだよく分からなかったが、ただならぬ雰囲気が漂っていることだけは確かだった。
僕は、心の中で二人のことを見守ろうと決めた。バンドの雰囲気が壊れることだけは、何としても避けたかったからだ。
僕は、二人の関係を理解していき、
元貴と涼ちゃんの秘めたる感情に、少しずつ影響を与え始めていた。
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