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ふと目にとまったのは、料理作り方が楽しく描かれている児童書。そこの最後のページに書いてある言葉に惹かれた。
『料理は心を込めて、愛情たっぷりと』
自分の弟を大事にできなかった。自分のことばかりで、こんなことになって後悔してる。
きっと今更だって実里は思うだろう。
自己満足なのかもしれない。こんなんで償いのつもりかって呆れられるかもしれない。
けれど、今度こそ弟を——実里を大事にしたい。
何度も何度も失敗してようやくできた栄養満点オムライス。
実里の部屋のドアをノックする。オムライスを床に落として以来、実里は顔を合わせてくれない。
「実里、ちゃんとご飯食べよう」
「うるさい!うるさいうるさい!どっかいけ! 」
ドア越しに聞こえてくる実里の怒声。
「ドアを開けて……俺のことは嫌いでもいいから」
懐いてくれていた実里の心を裏切ったのは俺だ。
あの時のことをずっと後悔をしていても、こんなことしかできることが思い浮かばない。
「……実里、いなくなったりしないで 」
大っ嫌いだったよ。羨ましかった。妬ましかった。
でも、実里がいなくなるのは考えられないんだ。
お願いだから……
「ぼくなんていなくなればいいんだ!おかあさんだっておとうさんだって……お前だって邪魔者を見るようにぼくを見てるじゃん!」
ドアを開けるのは簡単だ。
でも、開ける勇気がなかった。面と向かってまた拒絶されるのが怖かったんだ。
けどさ、もういいよ、拒絶されたって嫌いだって言われたっていい。一方的でもいい。
見返りなんていらないよ。
兄弟なんだから。家族なんだから。
「実里」
ドアを開けて、ベッドで踞る実里の元に駆け寄った。
オムライスがのったお皿を床に置き、実里を抱きしめる。なるべく背中には触れないように。
「いなくなったりしちゃダメだ」
本当は気づいていた。
実里が夜になるとうなされて泣いていることも、あの日から部屋の電気を消せないことも。
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