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しめさば
#独占欲
847
鉱山長と鉱山夫の後に付いて、坑道の中を奥へ奥へと進んでいく。
酷い事故が起こってしまったものの、鉱山の内部を見られたのは少しラッキーかもしれない。
あ、いや、不幸中の幸いというか……。いやいや、少し不謹慎だったか。
「それにしても、さっきの揺れって何だったんでしょう?」
「あー、鉱山の奥で崩落があったようでな」
「え? 奥にいた人は大丈夫だったんですか?」
「ああ、崩落の直前に爆発音が響いてな。
それである程度は避難していたから、生き埋めになったやつはいなかったんだ。
……まだ奥にいる、ガッシュとセドリックは除いて……な」
なるほど、確かに怪我人は多かったけど、全員中級ポーションで何とかなるくらいだったもんね。
被害がそこまで大きくなかったのは、それこそ不幸中の幸いだ。
それにしても――
「……爆発音、ですか」
「爆発といえば、冒険者ギルドの入口でも爆発事故があったみたいっすよ」
「何だと? 今回の一件と関係があるのか?」
「さぁ……? さっき捕まえたヤツなら何か知ってますかね?」
「そうだな。戻ったらこってり絞ってやるか」
……ふーむ。
言われてみれば、爆発が続いていて怪しいもんね。
もしかして、組織立った事件が起きているのかも? こわいこわい……。
「――鉱山長。
俺がガッシュたちを見たのはこの先なんですが……」
ゆるやかなカーブを曲がっていくと、岩や土砂が坑道を塞いでいた。
完全には塞がっていないものの、人間が通れるスペースは見当たらない。
「もしかして、この下にはいねぇだろうな……?
……おおい!!! 誰か埋まっているか!!!!?」」
鉱山長は一際大きな声で、目の前の土の山に呼び掛けた。
その後、耳を澄ませていると、か細い声が聞こえてくる。
「……よし、誰かいるようだ。掘り起こすぞ!!」
鉱山長と鉱山夫たちは、持っていたシャベルで土を取り除き始めた。
私はその後ろに控えながら、さり気なく鑑定スキルを使ってみる。
……中にはどうやら、ガッシュさんとセドリックさんの二人がいるようだった。
怪我はしているようだけど、命に別状は無さそうだから、ひとまず報告するのは止めておこう。
伝えたところで何が変わるわけでも無いし、そもそも説明が面倒だからね。
しばらくすると、ガッシュさんとセドリックさんが救助された。
「鉱山長と――
……お前らも、ありがとよ。セドリックも何とか無事だぜ」
「心配掛けるんじゃねぇよ!」
「そうっすよ!」
「心配したんですから!」
ガッシュさんは鉱山夫たちの兄貴分、みたいな感じなんだね。
確かに頼りになりそうだし、納得は出来るかな。
「あの、怪我をしているようなので、これを使ってください」
話の切れ目を狙って、私は中級ポーションを差し出した。
「え? 何でこんなところに女の子が!?」
「おう、アイナちゃんじゃねぇか。
こんなところで、どうしたんだ?」
「……え? ガッシュさんの知り合いですか!? もしかして娘さん!?」
セドリックさんが驚きながらガッシュさんを見る。
「馬鹿! ちげーよ! 今朝、ここに来る途中に会ってな。
ああ、そうだ。最初に使ってやったポーション、このお嬢ちゃんからもらったものだぞ!」
「そうだったんですか?
……いやぁ、お嬢ちゃんは俺の命の恩人だなぁ。付き合ってください」
「いえ、結構です」
よく分からないことを言われたので、軽く一蹴する。
「はっはっは! なかなか面白いお嬢ちゃんだろう?」
「とほほ……」
「それは良いので、早くポーションを使ってください。痛いでしょう?」
「分かった、分かった。
これくらいの怪我は何てこと無いんだが、ありがたく使わせてもらうよ」
……いやいや? それなりに血が出てますよ……?
私の心のツッコミをよそに、ガッシュさんは傷口にポーションを振り掛ける。
「おお、さっきのより効果が強いな……。
これ、もしかして高級ポーションか?」
「いえ、中級ポーションです」
……効果は2倍だけど、ね!
「そうなのか? それじゃ品質が良いのか……。
あれ? そうすると朝にもらったのは、もしかして初級ポーション?」
「はい」
「そうか、あれで初級ポーションだったのか。
セドリックに使ったとき、しっかり効いていたから中級ポーションだと思ったんだよ」
……初級ポーションも、効果は2倍だからね!
「できるだけ高品質のものを持ち歩いているんです。
何があるか分かりませんから」
私の言葉に、鉱山長が続ける。
「ここに来る前にもな、怪我した全員分のポーションを用意してくれたんだ。
……戻ったら、コンラッドのおやっさんに報告と……報酬を用意してもらいに行かないとな」
「鉱山長、俺も付いていくぞ。
おやっさん、こういうところでもケチりそうだし」
「ちげーねぇ!」
鉱山夫のツッコミに、一同は爆笑していた。
……しかし残念ながら、私には内輪ネタが分からない。
「あのー、コンラッドさん……というのは?」
「すまんすまん。
コンラッドのおやっさんは、この鉱山の所有者でな。俺たちのボスなんだ」
なるほど、ここのオーナーさんね。
「一応貴族なんだが、どうにも金にがめつくてな。
現場の方に、あんまり回してくれねぇんだよ」
「ああいうの、守銭奴っていうんでしょうね!」
「ちげーねぇ!」
一同、爆笑。
……だから! いまいち私は乗れないから!
「よし、それじゃガッシュとセドリックも救助したし、外に出るか!」
「おう」
「「「はい!」」」
内輪ネタが場を席捲する中、ガッシュさんだけ返事が違ったのだけは、少し笑えたかな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
坑道の外に出ると、鉱山夫たちが出迎えてくれた。
ガッシュさんとセドリックさんを囲んで、賑やかに無事を喜びあっている。
私はその光景を、少し離れたところから眺めていた。
さすがにここではよそ者だし、そもそも屈強な男だらけで私は場違いだからね。
そんな中、鉱山長が私の元にやって来た。
「お嬢ちゃん――
……ああっと、ガッシュから聞いたんだが、アイナさんって言うんだな。
アイナさん、今回は本当にありがとうな」
「いえ、お役に立てて何よりです」
「俺の名前も言い損ねていたな。俺はオズワルドってんだ。この鉱山の責任者をやっている。
今回の礼もしたいから、滞在先を教えてくれねぇか?」
「あ、はい。
宿屋に泊まっているんですが、名前は何だったけ……」
「宿屋なんて、たくさんあるからなぁ。
それなら街までコイツを付けるからさ、場所を教えてやってくれねぇか?」
鉱山長がそう言うと、後ろの方からジェラードが現れた。
「……どうも」
あれ……?
何だかいつもより元気が無いけど、どうしたんだろう?
「アイナさんは、それで良いかな?」
「あ、はい、大丈夫です。
えぇっと……アルリーゴさん、よろしくお願いします」
「……うん、よろしく」
「それじゃアルリーゴ、頼んだぞ!」
鉱山長のオズワルドさんはジェラードのお尻を1回叩いてから、鉱山夫たちの輪に戻っていった。
「……痛たた……。
それじゃ――」
「はい、行きましょう」
ジェラードが歩き出したので、私はそれに付いていく。
途中でまた誘われたり口説かれりすると思ったけど、宿屋までの会話はこれだけだった。
気楽ではあったけど――
……何だかジェラードっぽく無かったね? どうしたんだろう……。