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る ぇ の
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長いです。本編より長いので時間ある時にどうぞ。
佐野さんが大人しめ(?)なので、カッコイイ佐野さんを期待してたらごめん。
センシティブつけてない時点で察してほしいです。
────────
更に後日談
◇勇斗視点
「…俺だってお前への好きは変わってない」
仁人がそう明かしてくれて、もう一度俺と付き合うと言ってくれて俺の幸せボルテージは過去最高を更新した。初めて付き合ったあの時も最高だったけど絶対的に今の方が価値があると思ってる。
あの頃、ちょっとした不安ばかりでまわりを窺っていたとき、同じ温度で目が合うのは仁人だった。
今俺たちはどうなってる?
みんな常に探りながらだったと思う。
でも絶対負けねぇぞって一番俺に分かるのが仁人だった。怖がりのくせに頑張って立ち回って、少しカラ回ってはしゃいでる俺を見て笑ってくれた。
顔が好みだったのも否めないけど。
目が合って笑い合って隣に座ってくだらない事しゃべってなんか安心してもう一回目が合って、その目にすっごいドキドキした。
「俺仁人が好き、かも」
「…、俺も、勇斗のこと好きだと思う」
恋愛的な意味で。
その時近くにいたからじゃなくてちゃんと特別になりたい好きだからね?
それを二人で確認して『じゃあ付き合おう、俺たち』ってなって、そんで初めてキスをした。
両想いなのが嬉しかった。
一応皆には隠してたからお互いそこはきっちりしてた。太智にはバレてたっぽいけど。
『誰かと付き合うの初めてだからよく分からない』とか言っときながら二人きりになった時のふにゃふにゃになった仁人はめっちゃくちゃ可愛くて、何かにつけてキスしたがってそんな仁人のサラサラな髪を撫でて甘やかすのがたまらなく幸せだった。
◇◇◇
うわ俺のせいかも、と心の中で謝りながらどしゃ降りの中を少し離れた駐車場からビニール傘で防御しながらマネージャーとホテルの入口まで走る。
「…こういう時俺絶対天気悪いすよね」
「本当だよ、佐野くん台風呼びすぎ」
長い付き合いのマネージャーと軽口を言い合いながら、隠れ家的に緑で隠された石畳を進んでホテルの玄関までたどり着く。
22時前。
こんな雨じゃなかったらもう少し早く着いたのに。他のメンバーはもう部屋に行ってるのかな。
「えっ、俺が一番!?誰も来てないの!?」
仕事の関係でホテルに着くのは俺が最後って聞いていた。
ホテルで先に準備をしていたスタッフが現状を説明してくれる。
「この台風で新幹線が止まってしまって関西でロケ撮影をしていた塩﨑くんと曽野くんが静岡で足止めされてます」
「山中さんは長野で雑誌の撮影でしたが、撮影が終わった頃から線状降水帯が長野を中心に動かなくて。様子を見ていますが車を出すこともできないようです」
「吉田さんは」
それぞれこちらに来ることができない理由を聞きながら、どうしようという前にじゃあ代わりに何をすればいいかを頭の中で組み立て始めていたとき。
「あ゛ぁ゛っ、もぉぉっ、何なんだよこの雨ぇっ」
半分ずぶ濡れになりながら仁人が玄関からエントランスに飛び込んきた。
そして、俺を見つけるとまず悪態をついた。
「勇斗ォ!お前こういう時に限って嵐呼んでんじゃねぇよっ」
えー、お前自然の天候に人は関係ないって言ってたじゃん…。
「えっ、俺のせいなの?てゆっか、おいちゃんずぶ濡れすぎない?傘差さなかったの?」
「この横雨で傘の意味とかなかったわ」
仁人が持っていた雨の滴る傘を苦笑いするスタッフにスミマセンと身を低くしながら手渡す。
俺が来た時より更に雨は酷くなっているらしい。
「…他三人はたどり着けてすらないよ」
「え?」
もう一度、二人で今の現状をスタッフから説明を受ける。
俺たち以外の三人は今日中にここへ来る事はほぼ不可能。
もう日程的に他の日に振り変えるのも無理。
「…とりあえず俺と仁人だけで何か撮ったらどうですか」
撮れ高、という訳ではないが何か進められるとしたらそれしかない。
「…それがいいですよね。俺たち二人だけでどこまで話していいか確認していいですか」
仁人もすぐにそれを理解してスタッフに訊ねる。
「仁人、かなり濡れてるけど大丈夫なの?」
「中まで濡れてないからコート脱げは大丈夫」
そう言って仁人は水を吸ったコートを脱いだ。シャツの上に臙脂色のざっくりしたカーディガンを羽織っていて相変らずお洒落だなと思った。俺は今日普通の黒いセーターだもんな。
「足元も濡れてるけど、それは撮さなければいいから…、あ、ヘアメイクはちょっと整えてほしいです」
「あ、俺もいいですか」
二人で髪と顔を整えてもらって、エントランスの奥、ロビーの先のラウンジで急遽二人で今の状況を語る体でカメラを回すことになった。
スタッフがカメラや機材をセットして予定変更にも素早く対応してくれている。
「────という訳で」
ラウンジの高そうなソファーに二人でかしこまって座って、自己紹介から。
「佐野勇斗です」
「リーダーの吉田仁人です。…本当ならあと三人いて五人で『僕たちはM!LKです!』ってやるところなんだけど」
「まず『僕たちは』係の舜太がいない。てゆっか俺たち以外ここにたどり着いてませーん!」
どうしよ、と仁人と二人、困ったように頭を抱える。
「今年台風来すぎ」
「ほんとにね、でも誰のせいでも無いからね?」
俺の張る予防線に仁人が『まぁそういう事にしとくけど』とちょっと意地悪そうに笑う。
「本当は五人で集まる予定だったんだよね」
「うん、これから年末に向けて本格的に忙しくなる前に五人でゆっくり語ろうかって」
「言っていいのかな?ここ結構良いホテルをほぼ貸切にしてもらってるんだよね」
「ちょっとだけ慰労も兼ねてるらしいのにあいつらもったいねぇ〜」
都内近郊にある総部屋数少なめのラグジュアリーなホテル。
静かで和を基調としたエントランスからラウンジにかけてすでに上品さと特別感が漂っていた。
「…有難いことにM!LKで忙しくさせてもらって」
「本当に。数字とか扱われ方とか、遠巻きに見てたのがやっと最近になってその現実に触れるようになったと言うか」
「でも恐る恐るでしょ?仁人疑り深いもんな」
「勇斗はそう言うのビビってなくてすごいと思うよ」
「俺だってビビってるわ!!」
この人気の勢いに気持ちがちゃんとついていけてるメンバーなんていないだろう。
「…でも、あの頃願っていた事がすっごいスピードで叶っていくのは興奮するくらい嬉しい、かな」
これまでの月日に改めて想いを馳せてしまい鼻の奥がツンとする、両手の指で鼻を押さえながら込み上げそうな涙を抑えていると仁人がそんな俺を見つめながらそっと自分の左手を伸ばして俺の手に添えた。
「頑張ったもん、俺たち。みんなで頑張ったけど…でもやっぱり勇斗が一人で先に走ってくれたからって言うのは…事実として感謝してる」
…カメラ回ってんだよね?
え、え、仁人が素直なのってレアすぎる。こんなとこで出していいの?
「まぁ、他の三人がどう思ってるかは分からないけど」
仁人が照れながら目をそらす。
「え、分かんないの!?…あーもぉ、あいつら三人どうしていねぇんだよ!!」
「それは本当に!」
わはは、と仁人が笑って俺も笑った。
「あとさ、今回かなり良い部屋用意してもらえてるって聞いたんだけど勇斗もう見た?」
「まだ。俺も仁人の少し前に着いたとこだったし」
「あいつらには悪いけど高級ホテル満喫させてもらいますよ」
「だな。あと明日になったら天候次第で三人も順次ここに合流することになってるけど」
「「一番遅かった奴罰ゲームな」」
他にもグダグダ話したりしたけどそんな感じで撮影は終わって、あとは使えるところを編集さんに任せる。
「じゃあお部屋に案内しますね」
「全員で使える部屋を用意していました」
「二人では広いかもしれませんが」
ベルスタッフさんに案内された部屋は綺麗で豪華で開放的な間取りでまず通されたリビングからめちゃくちゃ広くて目の前の大きなガラスの先には夜の外界が広がっていた。生憎の台風で視界は全然だったけど。
「リビングを中心に寝室は三つあります。ご自由にお使いください」
ありがとうございます、と俺が言うとベルスタッフさんが細々とした部屋の説明をしてくれた。
一緒に来ていたM!LKのスタッフが、明日他三人がいつ来るかまだ分からないけれども目安として7時には起きて来てくれると助かりますと言って『では明日また』とベルスタッフさんと揃って部屋を出ていった。
仁人と二人きりか〜。
え、俺たち付き合ってるんだけど大丈夫?
もう一度付き合い始めてから、多忙なせいでプライベートで完全二人きりってマジでなかったから。
「勇斗」
部屋に入ってからずっと静かだった仁人が俺を呼んだ。
「なに?」
「…カーテン閉めていい?」
「…あー、はいはい」
テラスに面してあるであろう一面の大きなガラス戸は横から打ち付ける雨粒でガラスのあちら側が水流のようになっていた。
「…巨大水槽、みたいだもんな。怖いよねぇ」
「…うるさいな」
怖がりだし苦手なもの多すぎるし、しっかり者のリーダーって事になってるけどこの人絶対一人で生きてけないでしょ。
さっき聞いたリモコンを使って2種類のカーテンを動かしてその大きなガラス戸を覆う。
重い遮光カーテンのおかげか雨音も少しだけ遮断された。
「…俺がいるからコワクナイヨー」
「あーハイハイ」
耳を赤くして仁人が俺をあしらう。
「仁人」
俺の呼びかけに仁人がこちらを見る。
「ハグさせて?」
両手を広げて言ってみる。
どうだろ?ふざけんなバカとか言われるかな。
仁人は一瞬ビクッとしてから視線を少しだけ迷わせて、そして、自分から進んで俺に抱きついてきた。
うわーーーーー
予想が嬉しい方に全振りしたことに驚きながら俺も目の前の仁人に腕をまわして抱きしめる。
お互いにぎゅーっと抱きしめる力がちょうど良くて気持ちいい。暖かくて良い匂いでもう勝手に気持ちは高まっていく。
「…仁人」
そっと仁人の髪を撫でて耳を触りながら頬に手を添える。俺を見上げる仁人の目元は赤い。
角度をつけながら、顔を近づけてこのまま──
「…それはしないはずじゃん」
間に仁人の手を差し込まれてブロックされた。
「ええええぇ!?いいじゃん!付き合ってんのに!!」
「そう言うのはしないからってお前が言ったんだろ」
騒ぐ俺の腕からするりと抜け出して仁人が距離を取る。
「えー!えー!えー!」
今この状況でそれ言う!?
「うっさいな、俺流されるの嫌だからな」
耳も首も赤くなってるくせにあの時引いた線から超えることはきっちり拒否してくる。
「…風呂入る。先でいい?」
「あぁ、…うん、どうぞ」
濡れちゃったからね、ゆっくり温まってね。
…まぁ、一晩二人で過ごせるってことに感謝しよう。ハグまでで我慢できるかわかんないけど。
部屋の中をぐるりと見てまわったりリビングのデカいソファーに大きくもたれてバスルームからの水音に悶々したりしていると、結構早く仁人が出てきた。
「あれ、早いね」
「だってお前も濡れたんだろ?次早く入った方がいいじゃん」
「あぁ、うん、ありがと。パジャマ可愛いね」
ベージュのなんかサラサラしてるやつ。
「あ、これここに用意されてたやつ!いつもの寝巻きも持ってきてるけど、さすが高級ホテルのは着心地とか良さそうと思って使わせて頂いた!」
嬉しそうに報告してくるからこっちも楽しくなっちゃうね。
「へぇ、じゃあ俺もそれにしよ!お揃いでいいよね」
「え、あっ、…好きにすれば?」
お揃い、に反応してたけどこれは不可抗力だからね!
バスルームもかなり立派で大きな湯舟もあって、本当は仁人はちゃんと浸かりたかったんだろうなと思いながら熱めのシャワーで身体を流す。
準備されていた男性用のパジャマはMサイズとLサイズがあって俺はLを取ったけど減り具合から仁人はMを着たんだな、って分かって笑ってしまった。
髪を乾かすのもそこそこにリビングに向かうと仁人はソファーに座っててテーブルには飲み物の瓶とナッツとチーズ、あとノートパソコン。
「何見てんの〜?」
ひょい、と仁人の横から入り込むと画面からよく知る声が響く。
『えー!勇ちゃんと仁ちゃんペアパジャマじゃん!』
『うわ、夜のカップルやばすぎ〜』
『あ〜俺ら行かんで良かったかもな』
三分割されたディスプレイに俺と仁人、柔太朗、太智と舜太がそれぞれ映っている。
「…リモート始めたんだ?」
「うん、柔太朗が集まれなくて悔しいからちょっとみんなで話そうって」
俺がシャワー使ってる間に決まったらしい。
『いいなぁ、佐野さんと吉田さん、めっちゃ良いとこ泊まってるんやろ?』
『ほんまや!俺と太ちゃん足止め食らってビジネスホテルやで!!』
「来れなかったお前らがわるーい」
仁人が太智と舜太を揶揄いながら俺の横でケラケラ笑ってる。
『えー、よっしーご機嫌じゃん』
柔太朗が浮かれてる仁人を見て目を細めている。
…浮かれてる?
「待って、仁人なに飲んでんの」
「ん?あー、シードル?」
「ああ、リンゴのお酒の…」
「冷蔵庫にいろいろあったけど、これ美味しそうだったから」
まぁ大丈夫か?この後寝るだけだし。
『仁ちゃんてお酒飲むと甘えたになるんやろ?勇ちゃんちゃんと面倒見ぃや!』
「ならねぇよ!普通に嗜んでるだけです〜」
『あ、もうヤバいって!語尾が可愛い感じになってるわ!』
「なってないってぇぇ」
仁人が、舜太と言い合ってる。
いや、もうそれいつもと違うから。
「仁ちゃん、どんだけ飲んだの?」
仁人の手にあったシードルの瓶を取り上げて残量を確認すると半分以上減ってる。ペース早くね?
「も〜、返せ」
奪われた瓶を取り返そうと仁人が俺へ手を伸ばす。
「いや、もう控えた方がいいよ仁ちゃん」
「なんでぇ?まだ全然残ってんじゃん」
高く取り上げて仁人から遠ざけたシードルを取り返すべく、仁人が俺の足の上に片手を置き身体を伸ばしてもう一方の手を必死で掴もうとしてる。
『…吉田さん猫みたい』
『うっわ、イチャついてるよ〜』
あ、これ見られてるんだった。
気を抜いた一瞬で仁人にシードル瓶を奪われた。
「も〜…、仁ちゃん、せめてもう少しゆっくり飲んで?」
「…あ?」
心配して言ってるのに逆効果だった。
俺はね、いいんだけど。
酔って上目遣いで睨んでくる仁人可愛いし。
でもその姿他の三人に見られてるの後で後悔すんの君じゃないですか?
『いーじゃん!あと寝るだけなんやろ?酔っ払っても勇ちゃんが面倒見てくれるんやん!』
面白そうに、舜太が俺と仁人に言った。
「はぁ?酔ってねぇし面倒とかかけませんけど?」
『うわ、自覚ないやつや〜!もうええって!勇ちゃんさっさとベッド連れて行きや!』
「なんで連れてかれなきゃなんねぇんだよ!」
『もうええから!どうせ一緒に寝るんやろ?』
「一緒に寝ませーん!俺鍵かかる部屋で一人で寝まーす」
『えぇ!?嘘やろ、勇ちゃんかわいそすぎん!?』
「なんでだよ!!勇斗と一緒だと危ないだろ!!」
…その自覚はあるんだ?
いやでもそろそろ落ち着いてくれないといろいろと危険な気がする。
けど頭良くて口達者な二人の会話のスピードにハラハラするしかできない。
柔太朗も『舜太、そのへんで』とか言ってくれてるけどあんま効果ない。
太智は…、画面から消えてる。あー逃げましたね。
『あんな?仁ちゃんもう26やろ?そんなえっちイヤーとか言ってても可愛くないで?』
「可愛いつもりで言ってませーん!お前なぁ、このデカい勇斗に迫られたら怖いの分かるだろ!」
『いや分からんけど!ちゅーか!昔は勇ちゃんとエロい事までやってたんやろ!?なんで今更怖がってんねん!!』
「怖がってねぇ!!エロいのは勇斗だから!!」
『やることやっといて勇ちゃんだけのせいとか通じやんで!?』
「やることって…っ、…あ〜」
ヤバいヤバいなんかヤバい。
「仁人少し落ち着けって」
仁人を引き寄せて宥めようとしたけど間に合わなかった。
「もしかして舜太、あの頃俺達がセックスしてたって思ってる?してませーん!!勇斗がベッタベタ触ってきてただけですー!」
「わー!わー!仁人っ」
『え…、セックスしてないん?』
「してねぇっ、あ、でも抜き合いはしてたk…」
強引なのはやめとこうと思ったけどそんな事言ってられなくて後ろから抱き抱えて仁人の口を手で塞ぐ。
このままだと俺の癖までバラされそう。
「太智っ、聞いてんだろ!?そっちの通信切れっ」
姿の見えない太智に向かって叫ぶと、数秒待たずに太智と舜太の窓が閉じた。
「…舜太逃げた?」
「太智に切ってもらったの!!仁人も落ち着けって」
バトってた舜太がいなくなった画面を見ながら仁人が毛を逆立ててる。
一方の開いた窓から静かな笑い声が聞こえる。
『…なんか、二人の衝撃的事実はいっつも本人たちがバラしてくれるんだよねぇ』
面白そうに、でも困ったように笑いながら柔太朗がこっちを見てる。
『…俺ももう寝るね。勇ちゃん、よっしーをよろしくね』
「柔太朗までよろしくとかそういうこと言うのかよ」
いつもの仁人じゃないから柔太朗にも絡みに行こうとしててマジで早く正気に戻ってくれの気持ち。
『…あのさぁ、よっしー』
柔太朗が少し低い声で仁人を名指しする。
『二人のこと、初めちょっと面白がってたのは悪かったと思うけど、今は心からお幸せにって思ってるよ?多分舜太も太ちゃんも』
『…勇ちゃんもだけど、特によっしーはそういう事しっかり分けて考えられる人だって分かってるしね』
『でもさぁ、…二人でいる時はいいじゃん。お好きにどうぞだよ』
仁人は舜太の時とは違って黙って聞いてる。YJの二人はなんか独特に通じ合ってる波長があるみたいだからかな。
『…勇ちゃんにこんな優しくしてもらってんのにツンツンばっかじゃ良くないって自分でも分かってんでしょ?マジで変なガードとかいらんて』
『じゃ、落ちるけど、明日行くまでに空気良くしといてね?なるべく早く着くようにするから』
そう言って、柔太朗が通信を切った。
仁人は俺の腕の中で黙ってる。
「…歯磨きして寝よっか?」
抱きしめた手でポンポンしてそう言ってみたけど仁人はじっとしている。
ふー、と仁人が大きく息を吐いた。
そうして意を決したように俺の方に振り向いた、身体ごと。
対面で寄りかかってくる仁人の背に腕を回して、改めて緩く抱きしめる。
「…勇斗」
「ん?」
「勇斗、勇斗、はやと」
「なぁに?」
あ、なんか懐かしい。
酔った仁人は素直でおしゃべりで可愛いね。
甘え方があの頃みたい。
「…俺、分かんないよ。だってずっとこーゆーの無しでメンバーとしてやってたのに。それで我慢してたのに」
「…うん、まぁ別れてからの方が長かったしね、…って我慢してたの?」
「ん…、でも怖いんだよ。せっかくの『今』があるのに、俺があの頃みたいになったら良くないんじゃないかなって」
「仁ちゃん気にしすぎ。…まぁそれが仁人なんだけどさ。柔も言ってたじゃん、二人きりの時ぐらい、って。大丈夫だよ俺たちは」
リーダー吉田仁人は崩れないよ、と頭を撫でてやると大きな目を細くして気持ちよさそうに笑った。
「…俺、勇斗のこと好きだからさぁ、こんなんだとめっちゃ甘えたくなる」
「全然いいよ?いくらでも甘えさせたるわ」
俺も笑ってしまう。嬉しすぎて。
仁人が小首を傾げて甘える。
「…キスしたいんですけど」
「…ふふ、おっけぇ」
二人で笑いながらキスをする。
2回、3回。
口付けが深くなる頃にはソファーの上に仁人を押し倒していて、何回目かのキスの後顔を離したら目元も首も耳も薄らピンクの仁人が潤んだ目で俺を見上げていた。
「…俺が怖い?」
「それは…ないけど、あの…」
なんかそわそわしてるな?
なんか脅えてる感じ?ではない、と思いたい。
ん、と頬を撫でて『言ってみ』を促すと、ちらりと俺を見て目を伏せてから小さな声で呟いた。
「…勇斗は、その、俺とセックスしたいわけ?」
「んあっ!?」
「…俺も男だしもうお互い大人になったし、好きな相手だし、流れ的にはそうなのかなって分かる、勇斗がセックスしたいならそうするべき?なのかな?とか思う、けど、」
ごにょごにょ言ってる仁人の口を塞ぐ。
なんで?って感じで仁人が俺を見上げる。
「あのさぁっ、仁人の口からあんまセックスとか聞きたくないわ!つか酔いが冷めたらお前絶対後悔の海に沈むぞ?」
神聖とか無垢とか清廉とか言う年でもないけど、なんか仁人はそう言うんじゃない。
とりあえず抱きしめとこ。
「…まぁ、したくないっつったら嘘になるけどぉ」
「…」
腕の中の仁人がちょっと身構えたのが分かる。
「仁人が嫌なことはしない。…その気になってくれようとしたけど怖いんでしょ?じゃあ別にいい」
腕の中で、顔と顔が触れ合うくらいの近さで仁人が困ったような顔をしている。
「…ほんとに?」
「だってさぁ、このまま」
抱きしめる力を強くする。逃げられないくらいに。
「…押さえつけて仁人が怖いって言っても止めないで力づくで抱くことは多分できるだろうけど」
「仁人を好きなのはそういう事じゃないから」
「…幸せで楽しいって思ってる仁人と一緒にいたいんだよ、俺は」
ずっと、それはそう。
M!LKがどんな時でも苦しくても別れたあとも、楽しそうにメンバーと笑ってる仁人がいれば俺も幸せだったんだよ。
仁人がそろりと身動いだので力を弱めると仁人は引き出した両腕を俺の背中にまわした。
「…ごめん、絶対これが正解じゃないって思うけど、勇斗の優しさに甘える。…セックスは怖いけどキスはしたいって言う俺ズルい?」
「んーん、仁人らしいわ。逆にキスはして良くなったのね?うぇーい!じゃ、いっぱいしよ?」
額同士を擦り付けて仁人の目元や鼻や頬にチュッチュッしてたら仁人がくふくふ笑いながら「あの頃みたい」と零した。
「…いっぱいキスしてふわふわになって…勇斗はこの後どうしたい?」
仁人の目はその先を促してる、
あぁ、あの頃の流れがこんなんだったね。
「…俺は触りたい。ベッタベタに」
「…おっけぇ」
俺の背に抱きついたまま、仁人がにへらと笑って身体の力を抜く。
パジャマの裾から手を入れると少しだけビクッとした。手のひらで触る肌が温かい、滑らかで気持ちいい、もっといっぱい触りたい。
視線が絡んで熱い息でキスをしたら仁人の吐息も熱かった。
でもあの頃とは違うかな。
大好きだったけど別れてしまったあの頃の俺たち。
もう一度、付き合ってくれると言った仁人。
M!LKはもう大丈夫。
俺はもう、今、全然怖いものとかないんだよね。
◇柔太朗視点
早朝には雨も止んでいたから、無理を言って早めに出て車もできるだけ飛ばしてもらったけど、目的地のホテルに着いたのは8時過ぎだった。
エントランスから入ると見知ったスタッフが俺を迎えてくれた。
「おはようございます。遅れてすみません、…みんなは?」
「山中さんお疲れ様です。30分ほど前に塩崎さんと曽野さんも到着してまして、その、お部屋に案内しますね」
言われるままにスタッフについて行く。
あー、俺最後なんだ。
罰ゲームすんの?やだなぁ。
おそらく、俺らの部屋であろう部屋の前に大勢のスタッフが待機している。
なにこれ。
「山中さん!良かった。M!LKの部屋はこちらです」
「あ、うん、皆さんは…?」
「時間も限られてますし撮れるものは寝起きでも遅刻組との顔合わせでも撮りたいんですけど」
あーね、そりゃ撮った方がいいよね。
「準備できるまでM!LKメンバーしか入れるなって朝イチで佐野さんから連絡があって」
「………。あ、わっかりました〜!じゃあ俺様子見て来ますね〜」
勇ちゃん朝からナイス手回し。
え、中どうなってんの?ヤバい状況じゃないよね?さすがに。
そっと、部屋に入るとある意味ヤバい状況だった。
リビングの真ん中で、よっしーと舜太が土下座しあっている。
「ほんっっと仁ちゃんごめん!!俺っデリカシーとかなくてっ」
「いや!オレも酔ってたと言え嫌な絡み方して本当に悪かった!!」
「俺な、二人のことめっちゃ応援したいねん!ラブラブでいてほしくて昨日は変なスイッチが入ってもうて!」
「あ、うん。いや俺そういうの上手く受け取れなくて拒絶が先に来ちゃって…ごめん」
お互いに謝りあってて面白い。
勇ちゃんはよっしーの斜め後ろで同じように正座してニヤニヤ笑ってる。
あー知ってる。後方彼氏ヅラってやつでしょ、キッツ。
少し離れた所で、太ちゃんがリモコンでカーテンを開閉させて遊んでいた。
「おはよ、太ちゃん」
「柔ちゃん来たん?おっはよ〜」
太ちゃんはいつもの太ちゃんで安心する〜。
「いつからあれやってんの?外でスタッフさんみんな待ってるよ」
「…そうねぇ、なんかキリないし」
でも俺関わりたくないねん、とその顔が言っている。
「…朝、その、太ちゃんたちが来た時二人の様子とかどうだった?言いたくなかったらいいんだけど」
やっぱね、気になるからね。
「…変な現場に入って行きたくないやん。着く前に佐野さんに『もうすぐ着くから』って連絡しとったから何とか最悪のパターンは逃れたで」
やれやれ…、と太ちゃんが遠い目をしている。
勇ちゃんともよっしーとも付き合い長いもんね、関わりたくないけどあの二人からは離れられないよね。ごしゅーしょーさまです。
「…太ちゃんがいて良かったわ〜」
「ほんまや、昨日あのあと舜太に注意すんのもめんどかったわ」
「…ほんと太ちゃんシゴデキすぎ」
改めてM!LKのバランスは絶妙だと思う。
みんなが五人のことを大切で大好きなとこ。
誰かが誰かを補ってるとこ。
「ね〜、スタッフさんみんな待ってるからそろそろ準備しよ」
一番最後に来た俺が言うってなんなのってなるけど、それを聞いてカーペットに座っていた三人が『っは!』と腰を上げる。
「柔ちゃん、おはよぉ」
「柔〜おはよ〜」
勇ちゃんと舜太が挨拶してくれる。
よっしーも少し気まずそうに「おはよ」って言ってくれた。
「…昨夜は、柔太朗にもケンカ腰になってごめん」
猫みたいにフーフー言ってたよっしーも可愛かったけどね。
「ううん、気にしてないよ。それよりさぁ」
よっしーとさりげなくよっしーの横でその腰に手を回してる勇ちゃんの二人に向かって言う。
「なんで急いで来た俺たちよりここに泊まった二人がまだパジャマなの?あとよっしー、めっちゃキスマーク見えてる」
え、うそ、うわぁぁぁぁ!!
って首元を押さえるよっしーと
見んなよ柔太朗〜!!
とか言いながら笑って仁ちゃんを抱き抱える勇ちゃん。
「あ、やっぱそうやん。俺もさっきから気になってた!」
舜太が追い討ちをかける。
太ちゃんは大画面のテレビつけて観てる。
「とりあえず二人は着替えてね。どうする?五人で朝ごはん食べるとこから撮ってもらおうか?」
俺が前にでて仕切ることってあんまりないんだけど、今日は仕方ない。
「おっけー、それでいいよぉ」
部屋の前で待機しているスタッフの皆さんにその旨を伝える。
こんな状態でM!LKは無事に五人トークとかできるんか?
…できたら罰ゲームの件が忘れられて流れてくれるといいんだけど。
【終】
────────
自分でも何を書きたかったんだ?って思うので読んでモヤモヤする方にはごめんなさいです。
くっついた後のイチャイチャを書く!これは佐野さん視点で!って書き始めたけどjntとsyntの画面越し口論バトルが楽しくてそこ書いてから満足して数日寝かしちゃいました。その間やってみの特大snjnとか延々と見てた。
最後はまとめられずに山中さんに締めてもらいました。最後まで同じ波(気分も書き方もテイストも)で書くのって難しいです。
シリーズがこんな終わりで大丈夫かなって言うのはあるのですが、二人は上手くやってます〜ってことで。
追記。(話のテンポ的に入れられなかったやつ)
・ホテルの部屋の解説(寝室が3つ:主寝室、和室、ロフトのそれぞれツイン部屋)
・synt先生の台風進路、影響の解説
ここまで読んでいただきありがとうございました!!
次は自分の妄想で動かしても罪悪感少なそうなパロ書きたいなぁ。
普通の学パロとか。
海老学園の海老パン争奪戦の生徒会陣営のいろいろとか。
コメント
5件

極上のさのじん読んで、悶えました、、、いっぱい甘やかして大事にしてるのが伝わってきて、多幸感いっぱいの作品大好きです!!
一気に拝読しました! グループのために一度別れるって設定がリアリティがあってとても好きでした…!それでもまだお互い好きなところも、ysdさんのツンとデレの割合も、現実とリンクしてて非常に萌え散らかしました、とっても最高でした!!!!
お疲れさま〜、読んだよ🥀 もう、今回も仁人と勇斗の距離感が絶妙にじれったくて可愛かった…!特に酔った仁人が甘えたになって「キスしたいんですけど」って言うところ、あれは反則すぎる(笑)勇斗の「俺は触りたい、ベッタベタに」って返しも熱すぎて悶えたわ。 最後柔太朗が仕切ってくれててよかったね。M!LKのメンバー全員がちゃんと二人のこと見守ってる感じが伝わってきて、温かい気持ちになったよ🌙 次は海老パン争奪戦のパロディって言ってたけど、それも絶対面白そうだし楽しみにしてるね!