テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
扉の前に立つ。
近くで見ると、その巨大さが際立っていた。
石でできた重厚な門。継ぎ目は見えず、一枚岩のようだ。
「……開くのか、これ」
手をかける。
冷たい。
だが、その瞬間――
ゴゴゴ……と、低い音が響いた。
「っ!?」
押してもいないのに、扉が動く。
ゆっくりと、左右に開いていく。
まるで――
“迎え入れる”ように。
「……」
息を整え、一歩踏み出す。
中は――静かだった。
驚くほどに。
外の空間とはまるで違う。
広い部屋。
天井は高く、壁は滑らかに整えられている。
そして。
「……なんだ、これ」
無数の石板。
部屋の中に、整然と並べられていた。
大小様々。
円形に配置され、その中心には――
少し大きな石板が一つ。
まるで、ここが“中枢”だと示すように。
俺はゆっくりと近づいた。
不思議と、恐怖はなかった。
むしろ――
触れるべきだと、分かっていた。
手を伸ばす。
中央の石板に、触れる。
その瞬間――
世界が、変わった。
「――っ!?」
視界に、光が溢れる。
映像。
いや――
情報。
大量の光景が、頭の中に流れ込んでくる。
通路。
分岐。
空間。
魔物。
罠。
すべてが、一瞬で。
「ぐ……っ」
頭を押さえる。
多すぎる。
だが――
分かる。
これは、このダンジョンの“全体図”だ。
「……見える」
思わず呟く。
まるで、上から見下ろしているように。
各階層の様子が、はっきりと。
どこに何があるのか。
どこに誰がいるのか。
すべて。
「……これが、管理……?」
その時だった。
視界の端に、数字が浮かび上がる。
「……なんだ、これ」
視線を向ける。
そこに表示されていたのは――
エナジーメーター。
満たされていない、空のゲージ。
だが、その意味は――
なぜか理解できた。
「……ダメージで、増える……?」
口に出す。
確信があった。
冒険者や探索者にダメージを与えることで、このゲージが増加する。
そして――
「満ちれば……使える」
何に?
それも、すぐに分かった。
視線を動かす。
石板の一つに、意識を向ける。
そこには――
“配置”の項目。
「……試すか」
思考と同時に、映像が変わる。
ある通路。
空間が空いている。
そこに――
“置く”。
イメージする。
形。
動き。
さっき戦った魔物。
「……カニ」
その瞬間。
空間に、影が現れる。
輪郭が固まり――
カニの魔物が、そこに“出現”した。
「……出た」
思わず息を呑む。
完全に同じだ。
さっき戦った個体と。
「……これ、俺が……?」
理解が追いつかない。
だが、確かなことがある。
今、自分は――
ダンジョンに干渉している。
操作している。
さらに、別の感覚が流れ込んできた。
宝箱。
餌。
誘導。
配置。
すべてが、“可能”だと。
「……マジかよ」
思わず笑いが漏れる。
怖さよりも、驚きよりも――
強い感情があった。
面白い。
その時だった。
頭の奥に、何かが触れた。
「……っ?」
意識が、わずかに引かれる。
声。
いや、感覚。
あの竜のものだと、すぐに分かった。
「……理解……できたか……」
直接、響く。
「……ああ……なんとなくな」
「……それが……迷宮の心臓……」
心臓。
確かに、そんな感じだ。
「……お前が……次の……」
言葉が途切れる。
だが、続きは分かった。
「……管理者、か」
静かに呟く。
否定は、できなかった。
ここまで来てしまった。
そして――
できてしまった。
「……」
石板を見つめる。
無数の選択。
無数の可能性。
そして――
自分が、それを“動かせる”。
「……なるほどな」
ゆっくりと息を吐く。
状況は、理解した。
完全じゃないが、十分だ。
「……やるしかない、か」
誰に言うでもなく呟く。
逃げ場はない。
戻る道もない。
なら――
使うしかない。
この力を。
この迷宮を。
俺は再び、石板に手を置いた。
今度は迷いなく。
自分が、“動かす側”になったことを受け入れて。
コメント
1件
みぅです🥀 第7話「コントロールルーム」、読ませてもらいました。 主人公がついにダンジョンの“中枢”に触れて、全体像を把握し、さらに魔物を配置してしまうところ、鳥肌が立ちました…! 「自分が動かす側になる」という覚悟の決め方も、ダークでかっこよかったです。 この先、どういう迷宮を作っていくのか、すごく気になります。 続き、楽しみにしてますね🌙