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「ドウモ、スミマセンデシター。」
皆が帰る放課後、俺一人職員室に呼ばれていた。理由はなんとなく分かるけど…。
「お前なあ…自分が何したか分かってんのか。」
「うん、窓ガラス割ったことで怒ったんだよね。」
「分かってんなら何だその謝罪は。小学6年生にして、謝罪の仕方もわからないのか。」
「小6で何でも分かってると思ったら大間違いですよ。んじゃさようなら~」
「おい、ちょっと待て…!」
呆れた顔した先生を無視して、職員室を後にする。正直、先生が嫌いだ。
俺の両親は小さい頃に事故がきっかけで他界した。それからはじいちゃんが面倒を見てくれていたのだが、歳も結構いっているため、家事は基本的に俺がしている。家計は厳しいが、それなりに幸せだった。
だが、先生はいつも余計な心配をする。「大丈夫?」とか「ちゃんとご飯食べてる?」とか、偽善者ばっか。俺の何を知ってるんだよ。
あ〜…腹立つ。
「話しかけてくるなよな〜」
ドン!
ボーっとしながら歩いていると誰かにぶつかった。
「あ、すんません…」
ぶつかったのは高校生だった。顔立ちがよく、いかにもなイケメン。
いーよな、こういう奴は。人生イージーモードなんだろな〜。
そんなことを考えながら通り過ぎようとしたが、勢いよく手首を引っ張られ、危うくコケそうになる。
「うおっ!」
不審者か!?
「…あ、ごめんね!えっと…聞きたいことがあるんだけど…」
「?」
なんだコイツ、初対面で…。
「あー…その〜…///」
「?もういいすか?」
「あ…!待って待って!!そ、その…が、画面の中から出てきたりする?!…かな…。」
········。
は?
「は?」
「あ、いや、ごめん!」
顔真っ赤…。あ、罰ゲームか何かなのかな。
イケメンでも大変なんだな…。
「いや、いいすよ。じゃ。」
こういう変な人は軽く受け流すのがいい…。
「ただいま〜。じ〜ちゃーん、昼ご飯食ったか〜?」
あっという間に家に着いたな…。なんか、静かだな…
「お〜い、じ〜ちゃーん!なあ!?」
「そんな叫ばんくても聞こえるわい!!」
「…じゃあ、1回で反応しろよ…。」
いつもどおりで良かった。ちょっと心配したじゃん。
「じーちゃん、ちゃんと昼飯食べた?」
「食べた食べた。ゴホッゴホッ…」
何故か縁側座っているじーちゃんの背中がいつもより小さく見えた。
調子悪い?
「じーちゃん風邪?大丈夫?」
「なーに、平気だよ。わしはまだまだ…ゴホッゴホッ…。」
「…病院行く?心配。」
「いいって言っとるじゃろ。とにかく、手ぇ洗ってこい。」
「…はいはい。」
じーちゃんも、もう歳だし、体大切にしてほしいんだけど…。
元々、ああいう性格だ。長生きするだろう。
「笑(しょう)、今日は夕飯いいからな。」
「え?何で?」
「今日はそういう気分じゃない。」
「…やっぱり、病院行こう?」
「何でだ、大丈夫だ。」
「でも…!!」
「大丈夫だと言っているだろう!!!!」
「!っ…ごめん…。」
静かな空間にじーちゃんの声が響く。この音、やっぱり嫌いだ。
あれから特にこれといったことは無く、あっという間に、俺は布団の中。
じーちゃんのことが気になるけど、また怒られそうだな…。
もう、寝よ。
ピピピピ…ピピピ…、、
「…ん」
目覚まし時計が朝を知らせると同時に止める。最近、目覚まし前に起きるのが癖になっている。
「じーちゃん、おはよう…。相変わらず朝早えな。」
じーちゃんはテレビを見ながら無言だ。珍しいな…、じーちゃんがテレビに集中してるなんて。
「じーちゃん、目玉焼きでいいよな。」
「……。」
「じーちゃん…?」
「…おい、笑…、、これ…」
じーちゃんがテレビを指さしながらゆっくりこちらを向く。
そのテレビには、とある少年が写っていた。
俺とそっくりな少年が。
「お前…いつ…」
「ち、違うよ、俺じゃねえよ。」
《…絶賛人気上昇中のバーチャルユーチューバー! ショウさんです!!!》
な、名前まで一緒!?
「お、おめえ…!!」
「だから違うって!!!あ〜!!朝飯、昨日の残り食べて!俺、もう学校行く!!」
ランドセルを背負い、顔や歯は磨いたものの、髪はクシャクシャのまま学校に行く。
「おい、待て!笑!!」
意味が分からん!!なんで俺が!?ってか違うし!!『…そ、その…画面の中から出てきたりする?!…かな…』
走っている最中に、ふと、あの高校生が言っていたことを思い出す。
あれって…そういう意味…か…?
い、いやいやいや!!!違う違う!!だってあの人、男だし!!
関係ないない!!
教室に入ると、早速噂が聞こえた。
「ショウくんじゃない?」ボソッ
「おーい、美少年ー!w」ボソッ
…どうしてだ…。なんでだ…。情報早えな…。
しばらくして、若い女性教師、佐藤が俺を職員室に呼んだ。
やばい、これやばい!!!
「笑くん、君、ネットで活動してない?」
「活動してないです!!!ニュースの人は別人です!!!!ホントです!!!」
佐藤先生は数秒間黙ると、突如笑顔になり、両手を広げた。
「私、ショウくんのファンなの。一回でいいから、抱きしめさせて🖤」
「!!!…む、無理です!!!俺、ショウくんじゃないです!」
何なんだこの教師!?キモすぎだろ!!
「なんで…?いいじゃないの~ほら、おいでよ🖤」
「っ!!」
怖くなり、その場から逃げ出した。どうせ教室に行っても笑われる。なら学校を飛び出すしか…!!
学校を飛び出し、ひたすら街を走る。
『…そ、その…画面の中から出てきたりってする?!…かな』
またあの高校生の言葉を思い出し、足を止める。
い、いやいやいや!だから、違う違う!だってアイツ男だし…!相手美少年だぞ!?
そもそも、何であんなに似てるんだ?…もしかして!
ひらめいた途端、ザーザーと大雨が降ってきた。
さ…最悪すぎるだろ…。
近くに公園があることを思い出し、屋根付きのベンチに避難する。
何でだよ…。今日は何かと最悪すぎる…。
俺にそっくりな活動者が出てきたり、クラスに笑われたり、先生に変なこと言われるし…。
自然と目に涙が浮かぶ。
「…何でだよ…。何で…。」
うつむいていると、視界に足が見えた。
「大丈夫、君…?」
…聞き覚えのある声がした。驚いて顔を上げると…
「え!?イケメン!?」
「き、君は…!!//」
「いいの?高校生がこんな時間ブラブラしてて。」
「だ、大丈夫…//」
耳赤い…。
あれから落ち着き、二人でベンチに座って話すことにした。
このイケメンは類(るい)っていうらしい。
「…あの〜…緊張してんの?類さん…?」
「な、名前…!あ、ごめん…いや、笑くんがあまりにも推しに似すぎて…緊張するっていうか…。///」
もしかして…
「その推しって…ショウくんのこと?」
「っ!!は、はい…。//」
「そうなんだ。」(ちょっと意外だ…。)
そういやずっと下向いてるな…。顔がよく見えない…。ムムム…
気になって顔を覗き込むと手を真っ赤な顔に当てていた。
そんなに…。
そしてたまたま目が合う。
「!!!///」ビクー!!
「あ、ごめん」
「見ないで下さい!///」
…と、言われても…。
「ていうか、何でショウにゃ…、笑くんはこんなところに…?」
「あー…えっと…」
(困ってるショウにゃんかわいい💞)
「今、変なこと考えたろ」
「か、考えてないです!!」
「…俺がここにいるのは…」
俺は類さんにこれまでの事を話した。
「…そうだったんだ…ごめんなさい、僕、悪い事しちゃいましたね。」
「いや、いいっすよ。びっくりしたってだけなので。」
「…僕があのニュース見たときに思ったことは、有名になったんだなっていう喜びと同時に、君は大丈夫かなっていう不安があったんだ。」
「!!…」
「凄く心配してたから、今こうして君の顔が見れてとても嬉しいです…。」
この人、不審者って思ってたけど、普通にいい人だな…。ファンだからって変に要求しないし…。…っていうか…
「…あのさ、そろそろ教えてくんない?類さんがここにいる理由。」
「え!?あー…いや、ホント、深い意味があるわけではないので…」
「教えて…。」
下から睨みつける
「💘うぐっ///」
「え?」
え?何その反応…。思ってたのと違うんだが?
「……分かりました、推しのためです。」
「俺は推しじゃねえ。」
「そ、その…ふ、不良でして…。、暇だったので公園を…」
· · ·は?
え!?不良!?この人が!?嘘じゃん!?めっちゃいい人だと思ってた!!髪黒いし、前髪長いし!!
「ショウにゃ、笑くん?」
「あ、い、いや、意外だなって思った。っていうか…。そういう事なんだったら早く言えばいいのに。」
「お、推しに言ってるみたいで嫌だっただけです…///…推しには、いい人だって思われたいですから…///」
「…ふーん、俺、推しとかいないからよく分かんねえけど。っていうか、タメ口でいいよ、俺年下だし。」
「え!?ショ、ショウにゃんにタメ口なんて!!」
類さんは胸の前で手を猛スピードで左右に振る。
「俺、ショウにゃんじゃねえし…。」
「あ、そうか…。でも…。わ、分かった…。」
あれからすっかり夕方が来て、俺たちは解散した。類さんがまたあそこで会いたいというのでまた会うけど。
それにしても、いい人だったな…。ショウさんの事めっちゃ知ってたし…。
明日は行かなきゃな、学校…。
「ただいまーじーちゃん。」
シーン………
返事が無い。
これ、また何回も言ってうるさいって怒られるパターンかな…。
「ただいま!じーちゃん!」
シーン………
「じーちゃん…?」
嫌な予感がして急いで廊下を駆け抜ける。いつもは2回で反応するのに、今日は様子が変だ。
いつもじーちゃんがいる部屋に行くと、横になって腹を抱えていた。
「じーちゃん!!!!?」
「しょ、笑か…っ救急車を…」
「わ、分かった!!!」
何も考えることなく119番通報する。不安と恐怖で涙が…。
〘はい、こちら…〙
「じーちゃんが大変なんです!!じーちゃんが…じーちゃんが…!!!」
急な出来事で、あまり覚えていない。ただ言われるがままに救急車に乗り、じーちゃんの無事を祈った。幸い、重い病気では無かったが、入院することになった。
「…じーちゃん、ごめんな…もっと早く気づけば良かったよな…。」
泣いちゃ駄目だ。泣きたいのはじーちゃんなんだから…。
意識が無いじーちゃんを見て胸が苦しくなる、痛くなる。
これからどうしよ…、帰ってもじーちゃん居ないし…。金ねぇし…。入院費もあるし…。
「は〜…。」
悩んでいると部屋にノックがかかり、看護師さんが顔を覗かせた。
「笑くん、ちょっといい?」
「え、警察?」
ナースステーションに呼ばれ、看護師さんと対面で話すことになった。
「うん。笑くん、両親いないみたいだね、だから警察に預けようと思って…。」
「そ、そうですか…。」
仕方がないよな、こればっかりは…。
「今日は病院で過ごして、明日、行こうと思うから。それで大丈夫?」
「はい、大丈夫です…。ありがとうございます…。」
病室にもどり、一息付く。
そういえば明日類さんと会う予定だったな…。看護師さんに時間調整してもらお。
「え?おじいさんが?大丈夫なの?」
あれから次の日、いつもの公園で類さんに事情を話した。
まだ会って一日しか経ってないから、言うの躊躇ったけど、今後も会うかもしれないと思い、言うことにした。
「一応大丈夫。ったく、ビビらせやがって…あのじーさん…。」
「何もなくてよかったよ。おじいさんは今家にいるの?」
「いや、入院することになった。様子見るんだって。」
「…じゃあ、ショウにゃ、笑くんはどうするの?」
「警察行く。しばらくは施設で過ごすって。」
「…笑くんは本当にそれでいいの?」
「?…いや、だって、それぐらいしかなくね?仕方ないんだって。」
「…笑くんは大人だね。」
「どういう意味?」
「もっと甘えていいと思うよ?だって、まだ6年生でしょ?」
「…甘えてられねえよ。俺がなんとかしないと、じーちゃん最悪の場合死ぬかもしれないんだし。だから、“頑張らないと”。」
俺がそう言うと、類さんは目をそらした。
「推しには、楽しく生きてもらいたい。」ボソ
「…?ごめ、あんま聞き取れなかった、なんて…」
俺が肩に触れようとすると勢い良く立ち上がり、俺の肩を掴んだ。
「類さん!?」
「甘えてください!!たくさん、僕には甘えてほしいんです!!推しには苦しんでほしくない!!」
「!!」
「だから…!!///…僕と、住みませんか?///」