午後11時59分。
東京都郊外にある廃遊園地「メモリア・パーク」は、誰も足を踏み入れてはならない場所だった。
朽ちた観覧車、骨組みだけのメリーゴーラウンド、冷たく錆びたジェットコースターのレール。そのすべてが、“何か”の気配を孕んでいる。
だが今夜、そこに7人目の影が立っていた。
薄暗い月明かりの下、ゆっくりと振り返る少女。
その顔は、神夜天音とまったく同じだった。
ただ一つ違うのは、その目の奥に――**“黒い笑み”**が宿っていたこと。
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――数日後。
神夜天音は、学校に復帰していた。
「本当に……全部夢だったのかなって思っちゃう」
そう言って笑う天音は、前と何も変わらないように見えた。
だが秋冬は、感じていた。
どこかが“おかしい”。
夢のようだった遊園地での出来事。あれほどの恐怖、あれほどの死があったにもかかわらず、大輝、紗季、悠斗、美緒、大輔の誰一人、その記憶を持っていない。
いや、それどころか――
彼らは最初から、“天音を知らない”と言った。
「誰? 神夜天音って」
「そんな名前、クラスにいたっけ?」
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秋冬だけが、“彼女”を覚えていた。
なぜ、俺だけ……?
答えを探すように、秋冬はある夜、ふとスマホのカメラロールを開いた。
そこには、一枚の写真があった。
――6人で写った、あの写真。
だが、中央にいるはずの天音の顔だけが、黒いノイズに塗りつぶされていた。
「……天音……?」
その瞬間、画面にひび割れが走る。
そして、スマホのスピーカーから微かに聞こえた。
「ねえ、秋冬くん――
今度は、“影”を探して」
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同時刻、廃遊園地「メモリア・パーク」。
七瀬大輝が、奇妙な夢に導かれ、この場所を訪れていた。
「……なんだ、ここ……?」
誰もいないはずの遊園地の中央に、彼はそれを見た。
メリーゴーラウンドの中心に浮かぶ“黒い鏡”。
そして、鏡の中にいた――もう一人の神夜天音。
「こんにちは、大輝くん」
「お前、天音……? いや、違う……」
「“私は影”。でも、私は本物の天音でもある」
鏡の向こうで、彼女は微笑む。
「“今度のゲーム”は、『影探し』。
あなたたちの記憶の中にいる“もう一人の天音”を見つけて。
間違えたら、またひとり、消えるだけ」
大輝が後ずさると、突然、背後のスピーカーから遊園地のBGMが流れ始めた。
陽気な音楽の裏に混ざって、女の子のすすり泣く声が聞こえる。
「助けて……ほんとうの私を、見つけて……」
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その夜、秋冬のスマホに謎の招待状が届いた。
『メモリア・パークへのご招待』
時刻:午前0時ちょうど
目的:影を集めて、存在を取り戻せ
メンバー:秋冬、大輝、紗季、大輔、美緒、悠斗、天音
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全員の名前が、そこにあった。
だが――最後の一文が、すべてを凍らせた。
「※6人の中に、“偽物”が一人います。見つけないと、本物は永遠に消えます。」
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