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空は青い。雲は流れていく。そして命は尽きていく。何年も何年も何年も何年もそれがずっと繰り返して今があるし、今、この瞬間に死んだ人、生まれた人がいると君は言った。あの夏に君は死んだ。
不治の病。治っても薬の副作用で死に至る。
知っていた。
知っていたのに心の準備はできなかった。
まだどこかで君がいたように感じる。会いたい。そう強く願ったその夏に、また君と会った。
「おぉ?よぉーっす!」
「は…?」
元気そうだった。墓の上であぐらをかきながら座っている姿は生前と変わらない。
「元気にしてたぁ?ユウトくぅ〜ん」
「え…は…?お前、死んだんじゃ…」
「…死んだよ私は!けど本物でーす!ぴーすぴーす!!」
「じゃぁ、なんで…」
「いやぁ、ユウトがあまりにも寂しそうだったから」
「一日中部屋に篭って泣くなよばーか」
コツンと頭を叩かれる。いつもの変わらない彼女だった。
「じゃ、どっかに行く?」
墓をふわりと降りて柔らかい髪をなびかせる。
「…うん」
彼女についていくことにした。
よく遊んだ公園、買い物に行ったショッピングモール、好きだった飲食店。その光景は、生きていた頃と全く変わらなかった。
「はぁ〜!楽しかったー!ありがとねユウト」
「こちらこそだよ、哀しさが吹っ飛んだ」
「私の心臓は、どう?」
その言葉で、視界がバッと明るくなった。
あの夏、彼女が死んだあの夏に俺は…死にかけていた。
不治の病。それは例え治ったとしても薬の副作用で死に至る。ところが最近の研究で臓器移植なら治る病になった。だが、臓器移植したドナーは死んでしまう。
…彼女は俺のためにドナーになった。
思い出した。
目の前にいる彼女は彼女ではない。俺のただの空想だ。
「ユウト、顔を上げて?」
「私は、大丈夫だから、ね?」
なんでそんなに笑える?
なんでそんなに…
「私は…家がちょっと、あれでね、死にたかったの。けど人の役には立ちたかった。だから、顔も知らない誰かに自分の心臓を渡した。」
信じられない。だが彼女が言っていることは真実だった。
「だから、私は君の心臓になった。
…ありがとねユウト、名前も知らない私を救ってくれて。」
その瞬間、全て理解した。
俺は彼女の記憶を見ていただけだった。
名前も知らない彼女から心臓をもらった。臓器の記憶。それを見ているだけだった。
翌年
彼女の家を医者に教えてもらい、行く事にした。家は無くなっていた。せめてお墓に行こうと、彼女の墓の前で手を合わせた。初めて知った彼女の名前。
アスカ。
「…ありがとうなアスカ。俺のためにドナーになってくれて…。アスカが見せてくれた記憶と一緒に、強く生きてみるよ。」
墓から立ち去ろうとした時、柔らかい風が吹いた。振り返ると彼女はお墓の上にあぐらをかきながら座っているように見えた。