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「いきなり告白されて驚きました。そのときは、友達という感情しかなかったので。だけど不器用ながらも、一生懸命に想いを伝える姿を見ていたら、次第に俺も雅輝のことを好きになりました」
ちょっとだけ照れた橋本は、最終的に俯いて話し終える。そんな恋人の姿を横目で捉えた宮本は、自分の想いを伝えようと、きちんと前を向いて声を大にした。
「今では一緒にいなきゃ駄目だって思うくらいに、お互い支え合っていて。それで――」
「やはり佑輝と違って、雅輝はしっかりしているな。プレゼンの仕方がきちんとしている」
やれやれといった感じで肩を竦めた父親が、弱り顔で母親に視線を投げかけた。
「ほんとね。佑輝は途中から自分が何を言ってるのかわからなくなって、ずっと江藤さんに頼ってばかりだったもの。雅輝の言葉には、説得力があると思った。母として、反対するのは難しいなって」
「しかも自分の息子はしっかりやっているとばかり思っていたが、実際は親が思っているよりも危ういところがあるものなんだな」
宮本は顔を見合わせて笑い合う両親を見て、ほっと胸を撫で下ろした。弟の佑輝のときは、終始居心地の悪い雰囲気が漂っていたため、同じような目に遭うと覚悟していた。
気の緩んだ宮本の手を握りしめていた橋本の手に、ぎゅっと力が込められる。その痛みにハッとして隣を見ると、首を横に振る姿があった。
「雅輝のご両親としては、息子さんが同性と付き合うことを不安に思うかもしれません。その前に先に歳をとってくたびれたオッサンになる俺が、捨てられるかもしれないんですけど」
「捨てるわけないのに。どうしてそんなことを言うのさ?」
「先のことは、誰もわからないからだ。それに案外、雅輝がいい女と出逢うかもしれないだろう」
「俺は陽さんしかいらない! 絶対に別れないから!」
「雅輝、落ち着きなさい。橋本さんは可能性の話をしているだけだ」
ピシャリと言い放たれた父親のセリフに、宮本は口を引き結んだ。
「俺も雅輝と同じ気持ちでいます。コイツよりも、いいヤツが現れるとは思えないので」
「陽さん……」
「やり取りを見ていただいた時点でおわかりでしょうが、俺たちはまだまだ未熟者同士です。だからぶつかることも多い。しかしながら、一緒に高め合っていくこともできる、最高の相手なんです」
橋本はソファから床に下りて正座し、ふたたび頭を下げた。
「俺たちの付き合いを、認めてはいただけないでしょうか?」
宮本も橋本の隣で正座しながら、深く頭を下げる。
「父さん母さん、お願いします!」
しばしの沈黙がリビングに流れた。床に平伏して頭を下げたまま、微動だにせずにいるふたりに「頭をあげなさい」という声がかけられる。
息を合わせたように、顔を見合わせると。
「橋本さんが仰ったように、先のことはどうなるかわからないが、雅輝がひとりの男としてきちんとやっていけるように、傍で見守ってやってほしい」
そう言って父親が頭を下げた。
「わっ……」
嬉しさのあまりに変な声を出した宮本だったが、隣にいた橋本は頭を下げながら、
「はいっ、肝に銘じます」
張りのある男らしい声で、きちんと返事をしたのだった。