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教主は、いつもの夜道を歩いていた。あの“トラック事件”以来、夜空を見上げる癖がついてしまっている。
……今日は来ないかもしれない。
そう思いながら信号待ちをしていると。
――ビシッ
やっぱり空が裂けた。
「教主ォォォォ!!」
ドォン!!
次元の裂け目から勢いよく降り立つ黒い影。
「イサムレヨン様……」
しかし今日は、様子が少しおかしい。
いつもの外套。
いつものヘルメット。
いつもの反射ベスト。
……でも。
体がほんのり赤く光っている。
「……イサムレヨン様?」
教主が近づくと、彼は腕を組んで誇らしげに言った。
「安心しろ、教主」
「今日はトラック対策をさらに強化した」
「さらに……?」
イサムレヨン様は背中を指差す。
そこには謎の装置がついていた。
ボタン、配線、そして小さなアンテナ。
「これは次元安定装置だ」
「これがあれば、もう空高く吹き飛ばされることはない」
教主は少し不安になった。
「……それ、大丈夫なんですか?」
イサムレヨン様は自信満々に頷く。
「問題ない」
その瞬間。
ピッ
装置が鳴った。
「……?」
ピピッ
また鳴る。
教主が恐る恐る聞く。
「イサムレヨン様……今、音が……」
イサムレヨン様は振り返り、装置を見る。
ピピピピピピ
点滅。
赤いランプ。
そして小さく表示される文字。
[過負荷]
沈黙。
「……」
「……」
イサムレヨン様がぽつりと呟く。
「……教主」
「はい」
「これは……」
ピピピピピピピピピ
「……よくない音だ」
その瞬間。
装置がまぶしく光り始めた。
「イサムレヨン様!?」
イサムレヨン様は一瞬だけ慌てたが、すぐに落ち着いた顔になる。
そして、教主の肩を軽く押した。
「離れろ」
「え?」
「少しだけ……爆発する」
教主の思考が止まる。
「え?」
次の瞬間。
ドガァァァァァン!!!!!
夜道に大爆発。
煙がもくもくと立ち上る。
信号機がカタカタ揺れる。
しばらくして煙が晴れると――
そこには。
真っ黒こげのイサムレヨン様が立っていた。
髪がちりちり。
ヘルメットは無事。
反射ベストはなぜかピカピカ。
教主は呆然とする。
「……イサムレヨン様」
「無事ですか」
イサムレヨン様は少しふらつきながらも、ゆっくり頷いた。
「……問題ない」
そして空を見上げる。
焦げた煙が夜空に広がり、
偶然、文字の形になっていた。
すきだ
教主はそれを見て、思わず笑う。
「ふふ……また空に書いてます」
イサムレヨン様は少しだけ照れた顔で言った。
「……狙ってない」
少し間を置いて、続ける。
「だが」
ゆっくり教主を見る。
「爆発しても」
「会いに来る」
そして小さく呟いた。
「……教主がいるからな」
夜道にはまだ、
ほんのり煙の匂いが残っていた。