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大学の同窓生で学部も同じだったという彼女は松本ふみ子と名乗った。
松本は俺が瞳と付き合っていた事を知っていたが俺は松本の存在を全く知らなかった。
同じ学部とはいえ中高とは違って授業が重なっていなければ知ることも無いし、それも人数が多いから積極的に知ろうとしなければ知り合わないだろう。
あの頃の俺は会社を継ぐことそして、瞳と出会ってからは瞳だけが俺の世界だった。
松本ふみ子とはその夜ベッドを共にしたが連絡先は交換しなかった。
そもそも、ここで会った女性とはだれも連絡先を交換していない。
学生時代に苦い思いをしたことでホテルに入ると財布やスマホはバッグにいれて鍵を掛けるようになった。
シャワーから出ると、時々自分が合わせていない数字になっていることがあり、うんざりするとともに冷えていった。
松本ふみ子はBARの常連のようで、たまに行くと隣に座って飲んでいた。
何度か誘われたが、快楽だけの気持ちのない行為で何度も関係を持つことで勘違いをさせてしまう事を思うと何度も誘ってくる彼女が鬱陶しくなり、一時BARから足が遠のいたが、その店は落ち着く場所でもあるあるから1年ほど経ってふらりとBARへ行くと彼女が最近は来ていないと聞きホッとして気楽に行けるようになったが、気がつくとまた彼女が現れるようになった。
前回とは違い不用意に近づいてくることもなく、数回に一度くらい一緒に飲んだ。
愛人の子であるあいつは可もなく不可もなくといった感じの大学を出た後は親父の勧めで町田の太陽光発電の部署に入社した。
三島貴江、あいつの母親で“愛人社員”がいた町田事業所が前身の部署だ。
三島貴江親子が住んでいた町だったから親父はよほど町田のあの場所が大切なんだろう。
帰国後しばらくはじいさんの家に住んでいて、おふくろは時折やって来て、どこそこのお嬢さんだとか言っては写真を置いて行ったが、中を見る事なく郵送で送り返していた。
じいさんも、親父の事で負い目がある為、おふくろには何も言えないでいた。
親父とは仕事上での付き合いだけで、プライベートについての誘いや話は一切付き合っていない。
何を言われても、俺はあいつより愛されていなかった事がわかっているし、これ以上傷つきたくなかった、親父を憎んでいたが完全に切り離すことはできない。そんな自分が時折嫌になる。