今夜は雪が降りそうだと
女は思った
真っ黒な漆のように
塗り固められた長いベンツが
御堂筋を横に入った狭い道路に
ハザードランプを
点滅して止まっている姿は
そこだけ纏っている空気は鈍く
いかにも極道風な印象を与えた
運転手が路肩に回り
重圧の防弾ガラスの入った
後部座席のドアを開けた
ドアの下から
スラリとした足と
真っ赤なピンヒールが
地面を蹴った
シルバーフォックスの
毛足の長い毛皮に身を包み
降り立った女性の姿は
束の間
通行人の視線を釘付けにした
雑誌のモデルや
ハリウッド女優みたいに
真っ白の肌に赤い唇
目元は綺麗に
メイクアップされていて
艶めいた黒い巻き毛は
彼女が歩くたびに右へ左へ動き
通行人はまるで
映画のワンシーンを
見ているようにうっとり
と彼女を見入っていた
彼女は路肩に止めた
黒塗りのベンツを
横切って小路地を行くと
縦長に真っ赤な建物
「アーリー・キャット」
の自動扉を踏んで
顏をしかめた
饐えた匂いにバックから
ハンカチを取り出し
そっと鼻先にあてた
ゴージャスな女の後から
また数人の使用人のような
これまたタレント
顔負けの美貌の
若い女が2~3人続いた
ここは表向きは
ストリップショー・パブだが
影では人身〇買をしてる噂が
後を絶たなかった
その噂を裏打ちするように
よくこの界隈では
未成年の男女が
行方不明になっている
一向は昼間も
開催されている
ストリップのステージを横切り
数人の酔っ払い客のヤジも
聴こえていないかのように
支配人室がある
店の奥へと向かった
そこの支配人は
ソファに腰かけ
椅子の腕に置いた
コーヒーを飲みながら
「競馬新聞」
を顏の前に広げ
て読んでいた
そこへ
ドアからゴージャスな
女性が入ってきた
彼女はそっとドアを閉め
つま先立ちで歩いて
支配人の前に来ると
ぐいっと新聞を下げて
彼に声をかけた
「ハイ!慎二 」
「ミス!ヨーコ!」
慎二が驚き
手を広げて彼女を
抱きしめようとすると
ゴージャスな彼女は
慎二を突き飛ばし
ソファーに再び深く座らせた
彼女は毛足の長い
ファーコートの前をはだけ
いきなりスカートを
ウェストのあたりまでたくし上げた
「再会のキスをしてちょうだい」
スカートの中は昔風の
ガーターストッキングだけで
パンティを履いていない
慎二は身を乗り出すとかぐわしい
股間の縮れ毛に顏を押しつけた
心臓の鼓動が少し速まり
初めて女性とSEXをした時の
ような感じにぞくぞくした
毎度のことながら
この女に攻められるとクラクラして
頭の回転が鈍くなる
慎二はこの女のアソコには
何か麻薬みたいなものが
塗ってあるのではないかと
以前にすこし疑った事があったが
今はもうそんなことどうでもよい
ただ言われるがままに
ここを舐めまわすだけ
すると
ご主人様は最高の
ご褒美をくれる・・・・・
ぼーっとした頭で慎二は考えた
「そう・・・・
いいわ・・・・・
すごく上手よ・・・ 」
彼女は気持ち良さそうに身をよじると
慎二の髪をつかんで離し
スカートを整えて彼の隣に腰をおろした
最初慎二は目を閉じて
おあずけを食らったような
犬みたいに口をパクパクしていたが
隣に座る取り澄ました
女を見据えてこういった
「君はなんとかして
SEXを淫らなものにしようとしている
でもそこが俺の
好きな所だけどね・・・・
今日は突然
またどんな無茶を俺に
させるつもりだい? 」
ゴージャスな女は慎二の股間を
つかんでさすりながら言った
「あら・・・
ただ貴方のコレに会いたいから
はるばるやってきたと
思ってもらえないのが残念だわ・・・」
すっかり興奮しきっている
息をあらげながら
ヨーコの体に視線をやった・・・・
年齢不詳の彼女の体はほっそり
していて豊満な乳房に細い腰
肌の色はぬけるように白く
ボディローションのせいで
陶器のようにキラキラ輝いている
ほっそりとした腰つきから優雅に
形の良い尻にカーブは描かれ
とてもエレガントだ
美容整形にあけくれたとしても
彼女の完璧なフォルムは
作られるのに難しいだろう
慎二にとってこのミス・ヨーコの存在は
彼の人生に多大な影響を及ばせた
うちの一人だった
慎二は手早くベルトを外し
ズボンを膝まで降ろして
多少乱暴な感じでヨーコの脚の間に
腰を深く沈ませた
しっとり暖かく濡れたヨーコの内側に
締め付けられると
また闇に落ちてゆく感覚を味わった
「それで・・・・
今日は何の用だ? 」
「ああ・・・
もっと深く突いて・・・・ 」
彼女は恍惚とした顔つきで
ちょうどよい角度に
当たるように腰を回していたが
その瞳の奥で可能性を探り
動機を分析していた
慎二にはわかっていた
賢い女だ
罠だとわかっていても
絶頂を迎えられずにはいられない
数分突いただけで
怒涛に呑み込まれた
この女を相手にもち
こたえられる訳がない
睾丸が引き締まり
肉体を貫く快感が全身を震わせ
満ち足りた思いと
一緒にほとばしらせる
あろうことか
彼女の内側は最後の一滴まで
逃さないといった感じで
強く脈打った
満ち足りた混沌から
目覚め死んだように
彼女の隣に横たわった
今は何も考えられない
一仕事終えた彼女の口は開いた
「2~3人 新しい子が必要なの 」
荒い息をもとに
戻し彼女の口にキスをして言った
「 ついてこい 」
薄暗く狭い地下の
廊下はいつまでも続き
慎二達の足音が
響くばかりだった
並んだドアの向こうは
無人どころか床や壁
配線も未完成で
ペンキの匂いと
石膏ボードやセメントが
むき出しになっていて
いったい誰がこのミナミの
ストリップ劇場の地下に
こんな隠し部屋があると思うだろう
つきあたりの階段を降り
かんぬきのかかった鍵を
慎二が開ける姿を
ヨーコとその付き人の
若い女2人が見守った
「本当なら良い買い値が
付く所だったんだ・・・・ 」
慎二は何やら
ブツブツ言いながら
いかにも惜しいと
いった感じでヨーコ達を中に迎えた
そこは小さな裸電球が一つと
大きなソファーに
若い女が数人下着姿で
横たわっていた
ヨーコは顏をしかめながら
慎二をたしなめるように言った
「・・・・
いい趣味ね慎二・・・ 」
慎二はヨーコから目をそらし
忍び笑いをしている
どの女の子も未成年らしからぬ容貌だった
仕込むのなら幼いうちが良い
慎二はそれを心得ている
みんな
どんよりとした目つきで
こちらを見つめている
おそらくヘロインか何かで
飛んでいるのだろう
ヨーコは東北からはるばる
慎二の元へやってきたのは
期待外れだったかも
しれないと思った
「ミス?ヨーコ」
付き人の一人が
ヨーコに耳打ちをした
彼女の目線が
部屋の隅に移動した
四角いコンクリートの
打ち付けの部屋の一番奥で
曲げた両ひざを胸に
抱え込んで床に座っている
少女を発見した
目がどんよりして
口が腫れてアザになっていた
タンクトップと
パンティしか身に着けていない
ヨーコの付き人が
かがみこんで何か話しかけたが
その子は首を振っていた
見たところまだ
未成年のような感じが
うけられた
興味をひいたヨーコは
その女の子の前に
かがみこんだ
顔色は悪いものの
この女の子は
きれいな顔立ちをしていた
女の子は泣いていた
「あなた・・・・どうしたの? 」
ヨーコは話しかけた
赤らげた顏からは涙の後があった
今やヨーコに話しかけられて
女の子はしゃくりあげて泣いていた
「ひっく・・・ひっ・・・・
さ・・・・寒い 」
恐らく慎二達に
ひどい目にあわされたのだろう
どのくらいここに
閉じ込められていたのか・・・
電球をつけてまじまじと
女の子を見つめてみる
その子はぬけるような白い肌に
今は頬を赤く染め
首の鎖骨のくぼみには
赤い斑点が浮かんでいた
「ヨーコさん・・・・
この子・・・
熱がありますよ 」
ヨーコの付き人が言った
なるほど・・・・・
ヨーコは口元に人差し指をあてがえ
物思いにふけっていた
少ししてヨーコは口を開いた
「慎二 この子もらっていくわよ 」
「ちょっ・・・・
ちょっと待ってくれよ
この女は上玉なのに
こっちの女にしてくれよ 」
慎二の嘆きに一睨みを
きかせたヨーコに
もはや誰も逆らえなかった
「・・・・くそっ・・・
わかったよ・・・ 」
慎二は黙ってヨーコの後ろに
棒のように立ち尽くした
激しく奥歯をかみしめている
ひざをぴったりと胸に張り付け
三角座りをしている
歳はも行かない少女をこんな所に
閉じ込めているとは
おそらくここまで来るのに
慎二のしたことは
容易に想像ができた
ヨーコは
しくしく泣いている女の子の前に
しゃがみこんで目線を合わせた
なるほど・・・・
本当に色が白い
髪も薄い栗色で染めている感じではない
瞳の色もアーモンドに近い茶色だ
どうやらこの子の親はハーフか
色素が薄いDNAだったに違いない
熱があるせいで
鎖骨に赤い斑点が浮き出ている
おそらく興奮しても
この斑点は浮き出てくるだろう
そしてこの子の体質は
稀にみる貴重で
ある種族には恐ろしいほど好まれ
ほとんどお目にかかれない
ここに来たのは
もしかしたらとてもよかったのかもしれない
ヨーコは長い間
その子をじっと見つめていた
「あなた・・・・ 名前は? 」
とヨーコが問いかけた
女の子は泣きながら
そしてハッキリと答えた
「ユ・・・・ユカ・・・ 」
ヨーコは頬笑んで彼女に言った
「死にたくなかったら
私と一緒に来なさい ユカ 」
アドレナリンに眠りを破られた
あたしはベットで
がばっと跳ね起きた
全身の神経が
悲鳴をあげている
このままだとまた
この間のように過呼吸になる
あんな苦しいのは
もう二度とごめんだ
すぐさま
大きく深呼吸をして
自分なりの
精神療法を駆使して
アドレナリンの
引き金になった
夢をさえぎろうとした
フラッシュバック
男たちの笑い声
息遣い・・・
SEXのにおい・・・
それが不意に記憶のほうから
あたしに触れてきた
何人もの手が
あたしを人形のようにつかみ
下着をはぎ取り貫いた
容赦なく衝撃的な
押し付けがましさで
顏を押し付けられたソファーが
ガクガク軋む音
体の芯まで揺さぶられ
力が入らず
骨が水になって
しまったような感覚
ズキズキする殴られた頬
黒いシルエットから口々あがる叫び声
でも何を言ってるのかわからない
そして・・・・
男達の満足げなあえぎ声
自分の中に吐き出された精・・・・
あたしはべとべとにされた
きつくまぶたを閉じても
男たちの白い顔 黒い顔が
見える
あの部屋で起きたことが
ついさきほど起こったか
のような錯覚に陥る
恐怖・屈辱・いやらしい
あの怪物たちは
あたしを何日も
あの部屋に閉じ込めた
両手を顏に押し当てて
深呼吸をしようとしたが
横隔膜が痙攣をおこして
全身が揺さぶられている今は
息をするたび
肺に冷たい空気が入り込む
そう ここは寒すぎる
あれからもう
何日も経っているのに
どうして?・・・・
あの日から何度も問いかけた
「面接に行って来てほしい」
とジョージはあたしに行った
最初から仕組まれていたことだったの?
あたしは膝を抱えた
全身の筋肉がこわばって
体中が痛い
ひどい動機がして
心臓が閉めつけられる
寝室の大きな窓から
月の光が差し込んでくる
ここはあの汚いドブの
匂いのする部屋から
脱出させてくれた人が
経営するマンションだった
あの日・・・・・
何人もの男に犯されて
恐怖で混乱している時
昼も夜もわかって
いなかったあの頃
正気ではなかったので
あんまり覚えていないけど
泣き崩れるあたしの前に
ものすごい美人が目の前にいて
あたしに言った
「死にたくなかったら一緒に来い」
と
文字通りあたしは
死にたくなかった
その女性の言われる
ままに手をとった
車に乗せられて
高熱があったせいか
あたしはそのまま意識を失った
ずいぶん遠くへ来た気がする
気が付いたら
このマンションの
ベットに寝かされていた
今はまぶしいほどの
月の光が注ぎ込み
ナイフのように
冷たく鋭い影を落としていた
ワンルームのベット以外には
何もない部屋で
3日3晩高熱にうなされた
その間
闇医者だと名乗る
おじいちゃんが来て
体を隅々まで診察され
切れた頬や
膣の内側には軟膏が塗られ
破傷風の抗生剤やら
梅毒ワクチンやら何本か注射された
新しい木綿のパジャマを着せられ
温かい食事を与えられ
ゆっくりと
肉体は回復していった
傷ついた心とは裏腹に・・・・・
ここは
あの驚くほどの美人が経営している
風俗店の女の子が住む寮だった
そして熱が下がってから
美人はあたしの部屋へ
やってきた
彼女は自分の事を
「ヨーコ」
と名乗った
そして何もかも
あたしのことを知っていた
あたしとジョージのことも
すべて・・・・
ジョージが莫大な
借金を抱えていること
ジョージの身柄はあの忌まわしい慎二
のものだということ
ジョージの借金は
一生ジョージがあのホストクラブ
「ゼビアス」で働いても返せないほどの
額に膨れ上がっていた
なので慎二はジョージと一緒に
暮らしているあたしに目をつけて
あたしの身元を調べた
都合の良いことに
あたしは「孤児院出」
だったので
あたしがいなくなっても
心配する家族がいないことを慎二は知った
そしてあのストリップ劇場は
慎二の副業で
人身売買を闇で行って
いることで有名だった
薄暗い部屋・・・・
あそこに閉じ込められていた
あたしの他に何人かの女の子
みんな座ったり
ゴロゴロ寝ていて
ぐったりしてて・・・・
よどんだ目をしていた
何日もフロに入っていないだろう
鼻につく汗と体臭
おそらく自分も臭っている
ブルっと背筋が凍った
そしてヨーコという人が
あたしを慎二から
「買った」と言った・・・・
ここは
あたしの意思も
なにも尊重されない
絶望感を募らせながら
体を二つ折りにして激しく泣いた
コンコンとノックされ
ドアが開いた
「・・・ユカ? 大丈夫? 」
金髪でサラサラの髪の
女の人がのぞいていた
「泣き声がしたから・・・・・
また 泣いてるのかと思って 」
女の人はガウン姿で
部屋に入ってきて
あたしのベッドに腰を下ろした
この人は「セリナ」さんと言った
あたしが熱にうなされてる時に
世話をしてくれた人だった
この人もまた
ヨーコさんに劣らず
とても美しい人だった
ハラハラと頬に涙が伝わる
セリナさんは優しく
背中をなでてくれた
「何度も言うけど・・・・
泣いても何も
かわらないのよ・・・ 」
あたしは猛然と肩をしゃくりあげて泣いた
「ひっく・・・・あたし・・・かえりたいっ!・・ 」
そう言ったけど
どこに帰ればいいのだろう・・・?
ジョージの所?孤児院?
ジョージに裏切られたという
絶望感・・・・
もっぱら
この事実を受け入れたくはなかった
あたしの心は必死に抵抗していた
ナイフで心を刺されたよう
涙はとめどもなく溢れて
流れ落ちる
ここは・・・・
東北地方の有名な風俗街・・・・
あたしは・・・・・
ジョージの借金のかわりに
風俗に売られた・・・・・
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