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タイトル:バギーの大変の始まり(第一話)
ある日、元七武海、そして自称カリスマ海賊のバギー船長は、自分の船の甲板でふてくされていた。
海は穏やか、空も晴れ渡り、誰が見ても最高の航海日和だ。しかし、バギーの顔はなぜか暗い。
「なあ、Mr.3……」
バギーは、甲板で書類整理をしていた元バロックワークスのMr.3にぼそりと話しかけた。
「この俺様が……この大海賊バギー様が! 彼女がいないのはおかしいと思わねえか?」
すると、Mr.3は顔を上げ、呆れたように肩をすくめた。
[今さらそんなこと気にしてたのカネ」
「なんだと!? 俺様は人気者だぞ!? 世界中の海賊が俺を尊敬してるんだぞ!?」
「尊敬っていうか……恐れてるだけじゃないか……」
Mr.3の辛辣な言葉に、バギーはぐぬぬと歯を食いしばるしかなかった。
そんなある日、運命は突然やってきた。
バギーは近くの港町で補給のために寄港していた。
「おいお前ら! 食料と酒は忘れるな! あ、あとピエロ用の化粧品もだ!」
相変わらず自分の身だしなみには余念がないバギーだが、そのとき——
港の向こうから、一人の女性が歩いてきた。
透き通るような金色の髪、涼しげな青い瞳。白いワンピースが潮風になびいている。
バギーは思わず目を見開いた。
(な、なんだあの美人は……!? 俺様のハートが……撃ち抜かれたァァァ!)
彼はまるで磁石に引き寄せられるように、その女性のもとに駆け寄った。
「お、お嬢さん! あ、あ、あの……俺様と……付き合わないか!?」
突然の告白に、周囲の町人はざわめいた。
しかし、女性は首をかしげ、そして微笑む。
「いいですよ。……結婚しても。」
「え……け、けけけ、結婚!? い、いきなり!?」
バギーは思わず仰け反った。
だが女性はさらりと言葉を続ける。
「ただし、これだけは守ってね。」
「……な、なんだ?」
「子供をいっぱい作ること。それだけ。」
バギーは口をパクパクさせ、まるで金魚のようになった。
「え、えぇぇぇ!?」
女性は名前を名乗った。
「私、クリスタっていうの。……実は私、少し変わっていてね。私の子供は普通の人より早く育つのよ。」
バギーは頭を抱えた。
結婚だの、子供だの、こんなスピード展開は人生で初めてだ。
しかし——
(俺様は海賊王に並ぶ男……! ここで引いたらカッコつかねェ!)
「……わ、わかった! その条件、受けて立つぜ!」
こうして、まさかのスピード婚。
バギーとクリスタはその日のうちに港町の教会で結婚式を挙げた。
部下たちも半ば呆れつつも祝福した。
「キャプテン、ほんとに結婚するんスか!?」
「う、うるせえ! 男には勢いってもんがあんだよ!」
そして数日後——
バギーの人生を大きく変える存在が産まれた。
元気な女の子。名前はクリスタが決めた。
「この子は……パリよ。」
「お、おおおお……俺様の娘か……! か、可愛いじゃねえか……!」
だが、バギーの驚きはここからだった。
パッキーは生まれてすぐ、普通の赤ん坊よりも驚異的なスピードで成長していったのだ。
一日でハイハイを覚え、三日で歩き、一週間で「パパー!」と喋った。
船内はパニックである。
「キャプテン! 娘さんがもう甲板走り回ってますよ!?」
「ぎゃああああ! 待てパリ! 舵輪は触るなァァァ!」
そしてその日から、バギーの“本当の大変”が始まった——。
夜、船の寝室。
バギーは疲れ果て、布団に倒れ込んだ。
すると隣でクリスタがにこにこと笑う。
「どう? 楽しいでしょ?」
「た、楽しい……いや大変すぎるんだよォォォ!」
だが、バギーは不思議と悪い気はしなかった。
世界政府から追われ、海賊たちから恐れられる日々よりも……
パリの笑顔と、クリスタの隣で過ごす日々は、なんだか心地よい。
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