「2年はペアでここに並べー。」
入場門に2年生が組ごとにわかれて整列し始めている。
トイレの窓からその光景を見る。
私たちは急いでトートバックから衣装を取り出し、服を脱いで着る。
衣装は男女でペアルックになっていて今年の体育祭のテーマが「青春」のため、青色がベースのデザイン。
トップスはショート丈の黒シャツで、首元に青色のチェックリボンをつける
丈の長さは、ちょうどお腹の部分が3センチほど見えるようになっている。
ボトムスは膝上10cmぐらいで、フリルの着いた青色スカート。
私と小春はそれを着て見合った。
小春は何を着ても似合う。
小柄だけれど細くてスタイルがいい。
ウエストはクビレができるぐらいだ。
「小春、かわっ____」
「××めっちゃ可愛いー!!!!」
そう言いながら小春は私に抱きついた。
私は困惑しながらも「ありがとう、小春も可愛い。」と笑って言った。
トイレから出た私達は入場門に向かう。
小春はペアの川原くんを見つけ、私と分かれた。
その時小春は自分の頬に指を当てて「ちゃんと笑う!」というように笑顔を見せた。
私は微笑みながら頷いた。
唯一他クラス同士で組んでいる私たちは、先生から3組の列に入れと言われていた。
元々3組の孤爪くんはその列にいると思い、私は3組の方でキョロキョロ辺りを見渡した。
私はハッとする。
皆同じ衣装で分かりずらいけれど、金色の髪がよく目立つ。
孤爪くんだ。
黒シャツに黒ズボン。
首元に青色のネクタイ。
細くて、スタイルはいいけど、やっぱり猫背の孤爪くん。
私を探してるのか、孤爪くんもキョロキョロと辺りを見渡していた。
私はその場で固まってしまって孤爪くんを見ていた。
視線を感じた孤爪くんはこちらを向いた。
そしてゆっくり近づいてくる。
「いた。気づいてるなら声かけてよ…。」と眉を下げて言う。
「かっこいい…。」
私は声が漏れた。
「かっこいい…。」
私はより近くでその姿を見て、思わず呟いてしまった。
孤爪くんは目を真ん丸にしてじっとこちらを見ていた。
その表情みて、しまった、と深い後悔に襲われる。
「あ、いや、違う…!いや、違くないけど…その。」
テンパりすぎて頭が真っ白になる。
ああ大失敗だ。どうしよう。
でも言ってしまったらどうしようもない。
孤爪くんはキョトンとした顔で私を凝視し続ける。
その頬が、ほんのりと赤く染っていく。
「かっこいい…?え、俺、?」
孤爪くん以外いない。
けどそんなわざわざ繰り返さなくてもいいのに。
私は顔の熱さで死んでしまうんじゃないか、と思いながら俯いた。
何も答えられずにただ下を向く。
「…ありがとう。」
その声で、私はゆっくり顔を上げる。
そこには口許に手を当てて視線を逸らした孤爪くん。
その顔の頬と耳は、ほんのりと赤かった。
「次は2年生による演目、ペアダンスです!2年生お願いします!」
放送が聞こえた後、曲が流れ出す。
それに合わせて全員が校庭の真ん中に広がる。
全員が入場し終わると、曲がフェードアウトされる。
一瞬の沈黙が流れる間、孤爪くんと見つめ合う。
緊張で硬い顔の私を見て孤爪くんはにこりと微笑む。
私の心の中が、すーっと軽くなっていく。
曲が始まった。
私はそれに合わせて動き始める。
さっきまで緊張でバクバクとうるさかった心臓。
それがだんだんと収まっていく。
私は、練習で頑張ってきたことを思い出しながら、曲に合わせて踊る。
曲が間奏に入る。
その数秒、孤爪くんと顔を向かい合わせる。
「笑って。」
孤爪くんが、クシャッとした笑顔で私に言った。
私は頷いて、釣られるように笑顔になる。
そして頷きながら、私は思った。
やっぱり私は、孤爪くんが好きだ。
どうしようもなく好きだ。
好きなっちゃいけないと思っても、
この想いは消さなきゃと思っても、
何度も何度も自分に言い聞かせても。
私の中で彼が消えることは無かった。
孤爪くんは一瞬で私を、こんなにも幸せにしてしまう。
胸が締め付けられるように痛くても、その痛みを、幸せに変えてしまう。
______♪……。
曲が止まり、私たちはポーズを決めて停止する。
周りから、大きな拍手が広がった。
私は小さく息を吐く。
私の横にいる孤爪くんも、小さく肩を上下に揺らしていた。
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