翌日、都内某スタジオ。
涼架が一番乗りでスタジオに入ると、すぐ後ろから元貴がやってきた。
「おはよ〜涼ちゃん。あれ、滉斗は?」
「さっき、“ちょっと遅れる”ってLINEきたよ。たぶん…昨日のダメージ残ってる。」
「だろうな。あのテンションからの、あの落差だもんね。」
ふたりで思い出して、くすっと笑い合う。
――そこへ、ガチャ。
「……おはようございます……」
猫背でフードを目深にかぶり、スタジオに現れた滉斗。
「うわ、なんだその陰キャモード」
「お前、昨日“俺がMrs. GREEN APPLEや!”って言ってた奴と同一人物…?」
涼架と元貴のいじりに、滉斗は完全にうつむきながらスタジオの隅に避難。
「……やめて……思い出させないで……」
「グラスの音が……まだ耳に残ってる……」
「いや〜でもあれは最高だったよ。あの一瞬、君がバンド全員だったからね。」
元貴が真顔で言う。
「“俺がMrs.”の直後に“グラス割る男”、伝説だよ。語り継ごう。」
涼架も乗っかってきて、滉斗の顔は机にめり込みそう。
「せめてさ……せめて酔ってなかったら……」
「逆に酔ってない状態であのテンションだったら病院勧めてたわ。」
「…たしかに。笑」
元貴と涼ちゃんが顔を見合わせて納得し合ってる。
しばらく沈黙したあと、滉斗がぽつりと。
「…なあ、俺、やらかした分ちゃんとギターで取り返すから。今日は気合い入れて弾くわ。」
「お、かっこいいじゃん。」
「でも…たぶん10分後にはまた“俺がMrs.”って言い出すんだろうな〜」
「……言わん!!もう二度と言わん!!」
「録音しとけばよかったなぁ〜昨日の。絶対着信音にするのに。」
「やめてくれ、ほんとにやめてくれ…」
結局その日は、誰よりも真面目に音合わせをした滉斗。
でも、たまに肩がピクピクしていたのは、
元貴と涼ちゃんが後ろで「俺がMrs. GREEN APPLEや」ってひそひそ言ってるせいだった。
END笑
コメント
3件
ほんっと面白すぎる笑笑笑 まぁたしかに酔ってなくて俺がMrs. GREEN APPLEや!!とか言ってたらほんと病院行きですよね笑笑笑 これ以上面白いみせすの作品ないって思ってます笑笑