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9月29日。
風「もう夏も終わるねー。早いなー」
廉「優太おる~?」
海人「あれ~?廉先輩、どうしたの、日曜日なのに」
廉「何言うとんねん!今日は何の日かわかっとんのか?」
平野「あ!岸くんの誕生日だ!」
風「え?そうなん!?」
廉「だから祝いに来たんじゃないですかぁ!ほれ、ケーキ!あっ、もちろん風ちゃんにも会いにきたんやで~」
れんれんが、ケーキの箱を手にぶら下げている。
神宮寺「でも、今日は日曜日だから、岸くん実家に帰ってますよ?」
廉「うわっ、そっかぁ~」(岸くんに会えなくてしょんぼり…)
岸くん、今頃家族でお誕生会やってるかな?
私達もお祝いしたかったけど、やっぱり家族で過ごすのが一番やもんね。
でも…。
お父さんは土日休みの仕事じゃないって言ってたし、今日もまた兄弟3人で過ごしてるんかな?
岸くんのお母さんが出て行った日は、岸くんの誕生日やった。
そして、兄弟3人でちゃぶ台を囲んでお母さんを待っていた。
今日も3人でちゃぶ台を囲んでいて、岸くん、その時のこと思い出しちゃったりしてないかな…?
風「ねぇっ!今からみんなで、岸くん家にサプライズでケーキ届けに行かへん!?れんれん、せっかくケーキ買ってきたんやし!」
廉「おっ!いいなぁ、それ!ん?でも風ちゃん、岸くん家知ってんの?」
風「うん、まあ、ねっ?」
平野に同意を求める。
廉「”ねっ”てなんやねん!?何を2人の空気出しとんねん!?」
海人「えっなになに、ふたりで岸くんんち遊び行ったの?ずる〜い!いついつ!?」
風「そんなわけで、来ちゃった!」
岸「マジか~!うれっし~なぁ…!」
杏奈「あっ紫耀くんだー!えっちょっと待って、他にもこんなイケメンが!ちょっと優太の高校どうなってんの!?こんなイケメンいっぱいいるの聞いてないけど!?」
廉「まじか!岸くんの妹こんな可愛いんか!初めまして、永瀬廉です。でも、ごめんな~、俺には風ちゃんゆう想い人がおんねん」
れんれんが肩を抱き寄せてくる。
杏奈「え?風ちゃんって、紫耀くんと付き合ってるんじゃないんだ?」
平野「いや、こいつは…」
風「余計なこと言わんでええ!」
平野をバシッと叩く。
岸「でも、お前らそんな突然大勢で押しかけてきても食べるもんがねえぞ!金取るぞ!」
神宮寺「そういうと思って」
風「ちゃんと材料持ってきたよー!」
岸「おぉ~、普段はなかなか買えない鶏ももじゃないか!唐揚げ作れるじゃんo(*゚▽゚*)o」
スーパーの袋を覗き込んで、岸くんが目をキラキラと輝かせる。
岸「お~し、これで色々ご馳走作っちゃうぞ~!」
風「岸くんの誕生日なのに、岸くんが作るんやね(笑)じゃ、私も手伝う!」
平野「俺も手伝うよ!」
風「平野、料理できるんだ?」
平野「まーな」
廉「風ちゃんがやるなら俺もやるか!」
神宮寺「じゃあ、俺も何か手伝いますよ」
そんなにたくさん台所に入れないので、結局れんれんとじんくんは野菜の皮むき作業にあたり、手際が悪く最終的には岸くんに途中で取り上げられていた。
平野は意外にも岸くんと同じくらいに華麗な手さばきで料理を行っていた。本当に平野は何やらせてもできるんやなぁ。
海ちゃんといわちは、はなから手伝うつもりはなく、居間で杏奈ちゃんとトランプで遊んでいる。
杏奈「ちょっと海ちゃん”スピード”弱すぎるんですけど~!スピードなのに全然スピードじゃない!」
岩橋「海人はおっとりしてるからなぁ」
海人「えぇ~~ん(>_<)」
廉「海人、完全に杏奈ちゃんにも年下扱いされてんな。誰といても弟キャラぶれねえなあいつ(笑)」
神宮寺「玄樹は、海人といる時だけお兄さんキャラ発揮するんですよね(笑)」
岸「よーし!みんなできたぞー!」
人数に対してちゃぶ台が小さすぎるので、段ボールで即席テーブルを作った。
食卓には唐揚げやエビフライやきれいに盛り付けられたサラダが並び、そして、もちろんチャーハンも並んでいた。
そして、みんなでハッピーバースデーの歌を歌って、ケーキを切り分けた。
大人数だったから、1人分はちょっと小さめになった。
岸「杏奈、どれがいいい?玄樹は?おっきいの取っていいぞ」
「えっとねー、どれにしよっかなー」
杏奈ちゃんといわちが遠慮なく大きいのを取る。
神宮寺「なんか杏奈ちゃんと玄樹ってちょっと似てるよね」
「え?」
隣に並んだ2人が揃って声を上げてキョトンとした顔をする。
廉「確かに!自由奔放なところとか、ぶりっ子が上手くてちょっと小悪魔なところとか」
岸「そっか、だからか!玄樹のこと妹みたいでほっとけないって思っちゃうんだよなぁ!確かに杏奈に似てるわ!納得だわ!」
平野「岸くん、家では杏奈ちゃんに、学校では玄樹に翻弄されてるもんな」
杏奈「ぶりっことか小悪魔とか、ちょっと失礼なんですけどー(ฅ`・ω・´)っ」
岩橋「ほんとほんとー!(ฅ`・ω・´)っ」
二人が揃ってふくれっ面をするものだから、またそっくりな双子みたいに見えて、みんな笑った。
楽しい時間も終盤に差し掛かっていた。
風「片付けは私がするから。今日は岸くん主役なんやからゆっくりしててな」
台所で洗い物をしていると、大貴さんが横に来た。
大貴「風ちゃん、今日はありがとう。こんなに賑やかな誕生日は初めてだよ。優太もきっとすごく嬉しかったと思う」
風「それならいいんですけど。突然来ちゃって迷惑やったかなーってちょっと思ってたから」
大貴「俺、ゆすぐね」
風「あ、じゃあお願いします」
居間では岸くんが覚えたてのギターで、得意の歌を披露している。
みんなのワイワイ騒ぐ声の中、大貴さんと二人で流しの前に並んで一緒に食器を洗っていく。
大貴「優太はほっといたら、いつも家族のために自分を犠牲にしちゃうんだ。だから今日みんなが来てくれて、ちゃんと優太が主役になって、優太の誕生日祝えたって感じだよ。
杏奈は明るくて天真爛漫な子に育ったけど、ちょっとワガママで自由奔放すぎるところがあって。
だけど、それが母親がいないことの寂しさへの裏返しなのだとしたら、自分が代わりにそのわがままを全て聞いてあげたいって、かなり優太は甘やかして育てちゃってさ。
このままじゃ優太が自分の人生無視して全部杏奈に捧げちゃうんじゃないかなって心配で、親父とも相談して、優太を寮に入れることにしたんだ。
優太はサッカーが上手くて静学からスカウトが来てたのに、自分がこの家を出たら、家事はどうするんだ?って断ろうとしてたんだよ。
それに寮費だってバカにならないって遠慮して。
だけど、あの寮、まるでボランティアみたいな金額で受け入れてくれるだろう?それで何とか優太を説得して」
そう、海ちゃんの両親がただただサッカーをやる子の応援がしたくてやってる寮だから、本当に格安で子供を受け入れているらしい。
大貴「だけど、優太が家を出て、やっぱり杏奈は寂しかったみたいで、何かと学校で問題を起こしては、優太を呼び出す時期があったんだ。
それで優太、学校の試験をほったらかして杏奈のとこに飛んでいって、留年しちゃったんだよね。一緒に住んでる長男として、杏奈の情緒不安定を支えきれなくて、本当に優太には悪いことしたと思ってる」
岸くんが留年したのって「頭悪いから」なんてからかわれてたけど、本当は杏奈ちゃんのためやったんや…。
大貴「ずっと家族のために自分を犠牲にしてきたから、あいつにもし本当に大切だと思えるものが見つかったら、ちゃんと自分の人生を生きてほしいと思ってるんだ」
風「そうやったんですね。でもなんで私にそんな話?」
大貴「だって風ちゃん、優太のこと好きでしょ?」
風「えっ…!」
大貴「人に弱み見せたがらないやつだからさ、支えてやってよ」
大貴さんはニヤッとして、居間に戻っていった。
しっかり者のようでいて、恋には超鈍感な岸くん。
ぼーっとしてると言われてるけど、恋には超鋭い大貴さん。
似ているようでいて、全然似てない兄弟やな(笑)
風「こんな時間だし、そろそろお暇しなきゃね」
岸「じゃあ俺もみんなと一緒に寮に帰るかな」
杏奈「え~帰っちゃうの~やだー!今日は泊まってってよー!」
岸くんが困惑している。
風「岸くん、泊まってってあげたら?明日ここから学校行っても間に合うやん」
廉「じゃあ俺も泊まってくかなー。もっと優太と一緒にいたいし」
れんれんが彼女みたいに岸くんに寄りかかる。
杏奈「えっ!うんいいよいいよ!泊まってく!?」
岸「バカ、冗談に決まってるだろう?」
杏奈「え〜いーじゃん!ねっ?ねっ?」
杏奈ちゃんが海ちゃんや、いわちに同意を求める。
海人「うん、じゃあ俺も泊まってく~」
玄樹「俺もいいよー」
海ちゃんといわちが岸くんにベタベタとまとわりつく。
杏奈「わーい!みんないいって!いいでしょ、優太!」
杏奈ちゃんは岸くんの手を持ってブンブンと振り回す。
そして、れんれんもまだ岸くんにすりすりしている。
平野「岸くんめっちゃ子沢山みたいになってんな(笑)」
風「うん…」(どうにかどさくさに紛れて、あの輪の中に入って岸くんにベタベタできないかと考えている)
平野「じゃあ、俺らも泊まってくか!」
神宮寺「えっ、突然、そんな迷惑じゃ?」(やはり1人だけ常識人)
岸「別にいいけど…こんな大勢で風呂入ったら…水道代取るぞ?」
みんな「岸くん、それはケチすぎるわ。引くわ…」
風「えっとー、私一応女子なんですけど…突然泊まりとか言われても…」
平野「でも逆に1人でこんな夜に歩いて帰る方が危ないだろ?お前も泊まってくしかねーな!」
杏奈「大丈夫大丈夫!一応ここと、もう一つ部屋あるし!」
杏奈ちゃんが居間と続きになっている隣の部屋を指差した。
お風呂上がりの姿を同級生の男子に見られるのはなんとなく恥ずかしいので(それに、私の入った後のお湯に男子が入るというのもなんかやだ)、お風呂は私が一番最後にしてもらった。
お風呂から出てくると、布団が敷かれていた。
杏奈「考えてみたらさ、うち布団そんなにたくさんないし、男子の人数が多すぎて、向こうの部屋だけじゃ入りきらないしね」
確かに人数からして部屋を仕切ることは不可能で、居間と隣の部屋とにまたがって、布団が敷かれていた。
布団は4組。このスペースに9人で寝ることになる。
風「不可能じゃない!?」
杏奈「でも、もうお風呂も入っちゃったしね。今更帰れないしね!」
廉「やば。風ちゃんのお風呂上がり姿。なんかエロ…。しかも風ちゃんと一緒に寝るって…ヤバい、一晩我慢する自信が…(๑°ㅁ°๑)」
平野「はい、廉は一番端っこ決定な!」
廉「え〜!風ちゃんが遠い~!」
杏奈「じゃあ、女子2人は端っこってことで、私が優太の隣になれば問題ないね!」
わわわ!杏奈ちゃん1人挟んで岸くんと隣で一晩寝るなんて、ドキドキすぎるぅ~!((+_+))
廉「めっちゃ狭っ!!俺、超壁と紫耀に挟まれてんねんけど!紫耀、お前、場所取り過ぎやん!?」
平野「しょうがねえだろ、もともとガタイがいいんだから」
杏奈「ギュウギュウにみんなでくっついて寝れば大丈夫だよ!」
岸「暑っついわ!」
確かに9月ももう終わるというのに、みんなで寝たら暑いくらいだった。
杏奈「でもさ、こういう人の温もりって私嫌いじゃないよ」
岸「ん、まぁな」
それからもしばらくは陣地の取り合いの小競り合いでキャッキャして、まるで修学旅行の夜みたいだった。
朝起きたら台所で小さくうずくまって岸くんのお父さんが寝ていた。
杏奈「あ、お父さんの場所考えるの忘れてた」
そしてみんなでまた笑った。
それから、岸くんはちゃちゃっとみんな分の朝ごはんと、家族分のお弁当を作り、私たちみんな一度制服に着替えに帰らなきゃいけないので、ちょっと早めに家を出た。
9月も終わりなので、さすがに朝は清々しい気温だった。
前を岸くん、平野、じんくん、
中間にれんれん、海ちゃん、
そして後ろを私といわちで歩く。
風「お父さん、口数は少ないけどあったかい人やったね。大貴さんもすっごくいいキャラしてるし、杏奈ちゃんはちょっと生意気やけど、すっごく岸くんのこと大好きで甘えてるのわかるし。ああいうあったかい家族で育ってきたから、岸くんもあんなにあったかい人にできあがったんやねぇ…」
岩橋「ますます好きになった?」
風「うん……えっ!?」
岩橋「気づいてないとでも思ってた?」
いわちがふふふと笑う。
風「うそっ!なんで!?」
岩橋「ふふ。俺、けっこうそういうの鋭いんだよね~」
風「ちょ、内緒やからね!?今んとこ全然脈なしだし…!」
岩橋「脈なしっていうかー、岸先輩って俺みたいなの好きだと思うんだよね」
風「は?」
岩橋「言ってたじゃん?杏奈ちゃんと似てるって。岸先輩って、世話焼きたいタイプの人だから、こういう妹タイプが結局合ってると思うんだよね」
風「私だって”妹みたい”って言われたー!」
岩橋「う~ん、確かに風ちゃんも儚げな雰囲気もあって岸先輩のタイプから遠くはないと思うんだけどー、風ちゃんってどっかお姉さんぶっちゃうところがあるっていうか、無理してしっかりしようとがんばっちゃうところあるでしょ?
岸先輩とか神宮寺みたいな世話焼きたいタイプはね、むしろ振り回されるくらいのが好きだから、だから俺はあえてわがまま放題で、彼らの母性本能ならぬ”兄本能”をくすぐってあげてるわけ。世の中には”可愛い~”ものを愛でたい人種がいるから、俺がその”可愛い~”対象にあえてなってあげてるってわけ!」
風「いわち、私そこまでしたたかでポジティブになれへん…」
岩橋「ま、悪い意味での”計算”ってことではなくて、結局は”相性”ってことになっちゃうんだけど。
岸先輩は、もっとわかりやすく助けを求めている人とか、全面的に甘えてくれる人がたぶん好きだよって話。俺は、全面的に甘えさせてくれる人が好きだし、岸先輩とか神宮寺といると自然体でいられるわけ。たぶん海人もこっちタイプね。そういう相手とは、無理せずとも惹かれ合うってこと。
どっちかっていうと~、紫耀先輩は”強がってるけど本当は弱いとこある”みたいなタイプが好きっぽいから、風ちゃんとは相性いいと思うけどね」
風「はっ!?なんで今平野が出てくんの」
岩橋「単なる相性の話だってば!」
風「それはいわちの分析やろー?信憑性どーだか」
岩橋「ま、岸先輩を落としたいなら、”支えてあげたい”よりも”私を支えて~”ってスタンスで行ったほうが可能性あるよってアドバイスだよ!
でも、俺がもし女の子を好きになるとしたら、風ちゃんのことを好きになるけどね!」
いわちがパチっとかわいくウインクをしてから、「神宮寺ぃ~、待ってよ~!」と前へと走っていった。
じんくんが振りむいて、ニコニコしながらいわちを迎えている。
風「ん?”もし女の子を好きになるとしたら”って…いわち、それ爆弾発言やない~~!?」
その時、岸くんが振り向いた。
岸「あのさ…、みんなありがとう!マジで!すっげー楽しかった!そんでなんか…救われた!
この前、紫耀と舞川ちゃんにはちょっと話したんだけどさ、俺んち、母親いないじゃんか?昔、俺の誕生日に、家出てったんだよね。
だから、誕生日に兄弟3人でいると、やっぱりチラッとあの日の記憶が蘇ってギュッてなるっていうか。でも昨日は、みんながいてくれて、あまりに賑やかすぎて、一度もギュッてならなかった。
そんなん母親が出てってから、初めてだった。
だから…マジでありがとう!!」
廉「岸くん、そんなことがあったんか…」
海人「全然知らなかったーー!岸くーん!!」
れんれんが自分のことみたいに辛そうな顔をして、海ちゃんはまた号泣していた。
平野「またギュってなりそうになったら」
神宮寺「いつでもそばにいてあげますよ!」
平野とじんくんが両側から岸くんの肩をガシっと組んで、横でいわちがニコニコしながらそれを見ていた。
れんれんと海ちゃんも横に並んで歩きだす。
朝焼けで照らされた6人の後ろ姿が、ザ青春!って感じでキラキラと美しかった。
いわちの分析は正しいのかもってちょっと思うけど、
岸くんの好きなタイプになってどれだけ相性が良くなるかってことよりも、
昨日の誕生日に岸くんの心がギュってならないほうが大切だと思ってしまうんよ。
だからやっぱり私は、岸くんのことを”支えてあげたい”ってどうしても思ってしまうんよ…。
その後、れんれんだけ自宅に帰らなきゃいけないので、
「なんで俺だけー!青春の仲間外れやめろー」
と騒ぎながら別れていった(笑)
寮の部屋に帰って一人着替えながら、自然と顔がにやける。
昨日の誕生会、小さなちゃぶ台と段ボールのテーブルに並べられた岸くんの手料理、トランプ大会、岸くんのギター、みんなでぎゅうぎゅうになって雑魚寝したこと、さっきみんなに「ありがとう」と言ってくれた時の岸くんの笑顔、朝焼けに照らされた6人の後ろ姿…。
たぶん、私にとって今まで生きてきた中で最高の一日だった。
友達といて、こんなに楽しいと思えたことはない。
こんなに大切だと思える仲間たちはいない。
私もいわちも、いじめにあったことをきっかけにこの寮にやってきた。
岸くんは、お母さんが出て行ったことで家族のためにお母さん代わりを務めるようになって、家族のために自分を犠牲にしてしまう岸くんを心配したお兄さんが、岸くんをこの寮に送り出した。
みんな、それぞれの事情を抱えて、偶然ここにやってきて、私たちは出会った。
きっかけとなったのは望まない出来事だったけど、でもそれがなければ、私たちが歩んでい居る道はいまだ交わってなかったのかもしれないと思うと、これはすごい奇跡のように思えた。
この6人は、私にとって本当に大切な存在で、
この6人と過ごす時間は本当にキラキラしていて。
アメリカで辛い思いをしたことも、彼らに出会うためだったのかと思うと、それにすら感謝したい気持ちになった。
だけど私は、この時は知らなかったんだ…。
他にも事情を抱えてこの寮にやってきた人がいることも、
この6人といられる時間はもうあと少ししかないことも…。
制服に着替えて平野と岸くんと3人で教室に入ると、急に教室のざわめきが止まりシーンとなった。
ん?何?
すると河合先生が青ざめた顔で入ってきて
「岸、ちょっと」
と岸くんを呼び出して連れていった。
廉「お~っす!…あれ?どした?」
れんれんが入ってきて、やはり教室の異変に気づく。
ありさ「風、廉、あんたたち、これ知ってたの?」
ありさが携帯を見せてきた。
あまりに衝撃的な文字が飛び込んできて目を疑う。
「Mr.Kingの岸優太、教師と熱愛発覚!!」
そして、その下には写真も添付されていた。
岸くんとまきちゃんが幼稚園生くらいの小さな女の子を真ん中に挟んで手を繋いで楽しそうに歩いている。
あ、この女の子…!?
そうや、杏奈ちゃんが彼女じゃなくて妹だったことで、ホッとしてすっ飛んでた。
この女の子の謎がまだ残ってたんだ…!