テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第43章 「静謐なる神殿潜入」
夜の神殿へ
王都の大聖堂――昼間は参拝客や巡礼者で賑わうが、夜ともなれば厳重な警備に覆われる。
その漆喰の壁と尖塔を、俺たちは路地裏の影から見上げていた。
「……ここからが本番ね」ミリアが囁く。
「緊張する……でも、頑張る」ルーラも覚悟を決めた声で言う。
シアは神官服の上に外套を羽織り、小さく頷いた。
「裏口の警備交代の瞬間に入ります。ほんの数分ですが、巡回の死角が生まれるんです」
潜入
俺たちは石畳をすり抜け、裏門の影に身を寄せる。
衛兵が二人、交代のために言葉を交わし、その間隙――。
「今です!」
シアの合図で、俺たちは身を滑らせるように門内へ。
神殿内部は月光を受けた白壁が淡く輝き、静けさがかえって不気味さを増していた。
廊下を進み、奥の記録庫を目指す。そこに、評議会が隠した文書があるはずだ。
小事件
だが、すべてが順調にはいかない。
角を曲がった先で、巡回兵と鉢合わせた。
「誰だっ!」
兵が剣を抜く。
「っ……!」ルーラが身を固めるのを庇い、俺はすかさず兵の腕を打ち払った。
ミリアが素早く兵の足を払うと、鈍い音を立てて倒れ込む。
「気絶させただけ。殺してないわ」ミリアが低く告げる。
俺は兵を影に引きずり込み、縄で縛り上げた。
「……先を急ごう」
記録庫
厚い扉を抜けた先に、記録庫が広がっていた。
棚にずらりと並ぶ羊皮紙と書簡の山。
シアは慣れた手つきで一冊を抜き取り、震える声で言う。
「これです……“器”の候補者名簿。――ルーラさんの名前が……」
ルーラは目を見開き、震える指で自分の名が記された部分をなぞった。
そこには「銀髪の少女、器候補第一位」と明記されていた。
不穏な影
その時、記録庫の奥から気配が走った。
闇の中から、黒衣の影が一歩踏み出す。
「……やはり侵入してきたか。愚かな小娘め」
不敵な声が響く。
神殿直属の暗部――“影の神官”と呼ばれる存在だろう。
油断すればここで全て終わる。
俺は剣を構え、仲間を背に庇った。
「――逃げ場はないかもしれん。だが、ルーラは渡さない」
静謐な神殿の中で、次なる戦いの火蓋が切られようとしていた。