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彼はパイプ椅子に座って、ジェニを膝に乗せ、抱きしめながら冷静に色んな人に指示を飛ばしていた、斎藤に救出した時の状況説明をし、このビルのオーナーにも、弁護士を交えて話し合う時間と場所を指示していた
そうするとサイレンを鳴らした救急隊が到着し、当たりはいっそう騒がしくなった
救急隊員はジェニが低体温症になっていないか確認し、血圧を測り、酸素を吸わせた、でもすぐにジェニはその酸素マスクが息苦しいので乱暴に外した
その後も彼が消防隊と救隊員に事情を説明している間、ジェニは彼の腰に両腕を回してしがみついていた、もう安全だとわかっているのに、どうしても離れられなかった、彼の方もぺったりジェニが張り付いているのを気にせず、時々ジェニの背中を優しくさすってくれた
「ジェニ・・・どうする?救急車に乗って病院に行く?どこか痛いところがあったら見てもらうかい?僕も後から行ってあげるよ」
ジェニは首を振った
「おうちに帰りたい・・・」
すると竜馬が救急隊に丁寧に説明し、彼女を早く着替えさせてやりたいからこのまま連れて帰る旨を伝えた
「そうなんです・・・今夜は散々な目にあったので・・・ええ、僕が経過観察で様子を見ておきますので、もしも誰かが事情を聴きたいと言ってきたら・・・ここに連絡をして」
ビルのオーナーと、警備会社や斎藤達がジェニを囲んで、竜馬の車まで傘を刺して送った
「もし、私達でお役に立てることがありましたら、遠慮なくおっしゃってください」
ジェニは全ての人の対応を竜馬にまかせて彼の車の助手席に乗り込んだ、毛布にくるまっているが全身びしょ濡れなので少し寒い、外の車の前でこのビルの関係者何人もが、丁寧になんども竜馬に詫びを入れて、救出劇は終わりに近づいた
やがて運転席に竜馬も乗り込んできて、車の中に静けさが戻った・・・ジェニは車内で二人っきりになり、やっと安堵の疲れが出てぐったりした、竜馬が毛布にくるまれたジェニの頭を優しく撫でる
「私一人のためにこんなに大勢の人が・・・とんだお騒がせね・・・私」」
しょぼんとしてジェニが言う
「何を言うんだ、君は死ぬところだったんだぞ?彼らは僕達に訴訟を起こさないでほしいんだよ、でもそれなりのことはキチンとしてもらうつもりだ」
リードしてくれる男性は素敵だ・・・まぁ時と場合によるけど、今のジェニには「こうしろ」と命じてくれる人が必要だった・・・竜馬はジェニをもう一度キツク抱きしめた・・・またジェニの涙が頬を伝う
「ああ・・・無事でよかった!まったく水に浸かっている君を見た時は、生きた心地がしなかったよ」
グスッ・・・「竜馬さん・・・竜馬さん・・・助けに来てくれて嬉しかった」
竜馬はジェニにキスをした、二人のキスは土とエレベーターの中の水の匂いがした、ジェニは夢中で彼のキスに応え、あの時エレベーターの中で感じた苦痛・・・悲しみ絶望などの、あらゆる感情が全身に押し寄せ・・・キスをしながら泣き続けた
彼は水で濡れたクシャクシャの髪の毛を両手で後ろに束ね、ジェニの顔をマジマジと見つめた、真っ暗闇の中から車内の明るい場所で見られて・・・急にジェニは自分がボロボロなのに気づいて恥ずかしくなった
「あ・・・あの・・・あんまり見ないで・・・お化粧もとれてグシャグシャだし・・・ソバカスも・・・」
「君のソバカスが大好きだよ」
竜馬の言葉にハッとし、ジッと彼を見つめた・・・彼は優しい声で続けた
「君を愛している・・・ジェニ、僕と付き合ってくれ」
ジェニが問いかけるように見つめる
「で・・・でも・・・あなたは伊藤さんと・・・」
「彼女とは婚約を解消した、僕は堅物でつまらないそうだ」
二ヤッと笑った、彼はジェニの手を取り、手のひらを優しく撫でた
「彼女のおじいさんには多大な借りがあってね、僕は恩師に恩返しするには孫の彼女と結婚して幸せにすることだと思っていた・・・でも彼女のおじいさんには違う形で恩返しすればいいかと、今は思っている」
竜馬は両手で優しくジェニの頬を包みこみ、その瞳を覗き込んだ
「ソバカスに・・・茶色くてこぼれ落ちそうなぐらい大きな瞳の女性に・・・心を奪われたままでは誰とも結婚できない」
ジェニは手で口をおおった
―それって・・・私のこと?―
.:・.。. .。.:・
「君は自由で型にはまらない、予測がつかない、人生を自力で歩んでいる、僕が君を幸せにしてあげられるかどうかわからない・・・僕は堅物で退屈な男だから、でもこれだけは言える・・・」
竜馬がじっとジェニを見つめて言った
「君の傍にいると僕が幸せなんだ」
ジェニはハタと竜馬を見つめた・・・ずぶ濡れで髪もくしゃくしゃで、濡れねずみのようになっているのに、彼の微笑むその顔はとびきりハンサムで、ジェニを狂おしいほど燃え上がらせる
「あ・・・あなたは堅物なんかじゃないわ・・・そりゃちょっとそんな所もあるけど、私が今まで出会った中で、一番素敵な男性よ」
また彼がハハッと笑った
「お世辞でもうれしいよ」
彼は本気にしていない、あとで嫌と言うほどわからせてあげないと
「それでも君の傍で君の手助けがしたいんだ、宗一郎から君がエレベーターの中に閉じ込められていると聞いた時、あまりのショックで心臓発作を起こしそうになった」
「私も水と暗い所と狭い所は二度とごめんよ・・・」
彼が思い出してブハッと笑いだした
「そして慌てて助けに行ったら、エレベータのシャフトから君の魂の叫びが辺り一面に響いていた、やっぱり君は予想がつかない」
ジェニはポっと頬を染めた
「だって・・・もう私は死ぬんだと思った時・・・それしか出てこなかったの、私にはそれだけ深刻な悩みだったの・・・笑わなくてもいいじゃない・・・」
ぷぅっと頬をふくらませて訴える、笑ってごめんごめんと竜馬がジェニの頭を撫でた、途端に気分がよくなった
「君みたいな女の子はどこにもいないんだ・・・君と一緒にいると、すべての常識が頭の中から吹っ飛ぶ」
彼はジェニを抱き寄せ首筋に顔を埋めた
「初めから僕達やり直さないか?オフィスで思わず君にキスをした時・・・あのバイクの上で初めて君を抱きしめた時から・・・」
「愛してるわ竜馬さん・・・キスして」
彼が笑ってぎゅっとジェニを抱きしめ・・・そして口づけた、彼の唇は滑らかで温かかった、その歯が戯れにジェニの唇を甘噛みする・・・ジェニの背中に甘い戦慄が走る、もう寒くはなかった、ジェニは内側から燃え上がっている気がした
「家に帰ってセックスしようよジェニ」
とんでもなく甘くセクシーな声で囁かれ・・・
ジェニは生きて彼の腕の中にいる喜びと、暗闇のエレベーターの中に閉じ込められていたのを思い出し、この数時間で天国と地獄を一気に味わっていた
竜馬がさらに濡れたジェニの髪を撫でて耳元で囁いた
「朝までつながっていよう」
.:・.。. .。.:・
コメント
1件
第106話、読み終わりました…!竜馬さんがジェニを救出した後の、車内での二人きりの時間が本当に印象的でした。特に「君のソバカスが大好きだよ」という告白に胸が熱くなりましたね。エレベーターの閉じ込めという絶望から、一転して竜馬さんの愛の言葉に包まれるジェニの感情の動きが丁寧に描かれていて、読んでいるこちらまで泣きそうになりました。ずっと見守ってきた二人の関係が大きく動く、素晴らしいエピソードでした!