僕の母は、2年前、交通事故で死んだ。
当時僕は中学三年生だった。
聞いた話では、歩道を歩いていた母に、猛スピードでトラックが突っ込んだそうだ。その時、車道側の信号は赤だったと言う。
トラックの運転手には持病があり、突然発作を起こして意識を失ったらしい。その為止まれなくなって、歩いていた母に突っ込んでしまった。
母はその場で死亡が確認され、トラックの運転手は病院に搬送され助かった。トラックの運転手の名前は岡野大河(おかのたいが)45歳という事を、しっかり覚えている。
岡野は毎日僕の家に謝りに来て、差し入れやお金を差し出してきていた。父は「もういいですから」と言っていたけど、僕は簡単に許すことが出来なかった。持病だかなんだか知らないが、僕の母を殺したことには変わりないのだから。
当時の僕はたぶん、かなりイカれていたと思う。岡野大河をこの世から消せないか、とか、もういっそ殺してやろうか。家に来た時に毒入りのお茶でも出してやろうか。そんなことばかり考えていた。
事故から約1年後、(当時高校一年生)岡野を許せていなかった僕は、ふとテレビから流れてきた話題に耳を傾けた。
それは、「呪い」に関してのオカルト番組だった。
僕はすぐさまインターネットで「呪い」に関して調べた。ありとあらゆるサイトから情報を入手した。当然、検索履歴は「呪い」という単語ばかりになる。自分で気色が悪いことを自覚しながらも、必死で「呪い」について調べた。
僕が調べていたのは、「呪い」に関してだが、さらに詳しく言えば「人を呪いで殺す方法」。憎い相手を呪いで殺す。こんなことを信じて実行する僕は馬鹿みたいだが、その時の僕はどうも必死で、呪殺の手順や必要な道具などの詳細を死に物狂いで調べていた。
それから数日後、僕は市内にある山へ足を運んだ。
この山は、熊が出るだとか、イノシシが出るなどという話が、近隣住民の間で有名だったため、住民はよほどの理由がない限り近づくことがない、そんな山だった。
勿論、僕がそんな山に近づいた理由はしっかりとある。それがまさに「呪い」に関する事だった。
呪いの手順はこうだ。
1.山で行うこと。
2.誰にも見られてはいけない。
3.呪殺したい相手の写真の裏に、どうやって死んで欲しいかを赤いペンで記入する。
4.塵になるまで燃やす。
一見、どこにでもある嘘の情報みたいだが、
僕は手順通り、それをこなしてしまった。
「誰も……見ていないよな」
岡野大河の写真を取り出した僕は、その顔を見た瞬間、再び殺意に包まれ、赤ペンを強く握った。
「こんなやつ……こんなやつ……!川に飛び込んで溺れて苦しんで死ね!!」
そう叫びながら、
「川に飛び込んで自殺」
と、怒りに任せて書き込んだ。
その後、写真を塵になるまで燃やした僕は、必死になっていた自分が馬鹿らしくなって、足早に山を後にした。
数日後、岡野大河は死んだ。
コメント
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しらさんの作品はどれも面白くて読みやすくて憧れます(*>∀<*)
ご高覧いただきありがとうございます! ノベルをあげるのは初めてで、まだ至らない点が多くあるかもしれませんが、暖かい目で読んで頂けると幸いです☺️ 連載中のチャットノベルがあるので、こちらは投稿頻度が少なくなってしまうかもしれません…🙇♂️