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それから2人は、3年という時間を取り戻すかのように、いろんな場所でデートをした。

時には水族館。

「それでは早速!イルカ達の素晴らしいパフォーマンスをお楽しみください!まず最初にご覧いただくのは、イルカのジャンプです!せーのジャンプ!」

イルカショーの司会を務める飼育員の合図とともにイルカが、水面から天高く飛び上がる。

「わぁ❤︎すんごいよ!駿!ホラ!」

梓は人生初のイルカショーという事もあり、まるで小学生かと言わんばかりにはしゃぎながら、満面の笑みでイルカを指差す。

「うわぁ!初めて見たけど迫力が凄いな!」

駿も年甲斐もなく大はしゃぎする。

「素晴らしいジャンプでしたね?ですがイルカの凄さはジャンプだけじゃないんです!実はイルカはチームワークに長けた生き物で、一緒に協力するパフォーマンスも得意なんですよー!せーの!」

飼育員の合図とともに3頭のイルカが一斉にジャンプし、互いにぶつかる事なく、綺麗な弧を描きながら着水する。

「すっごーい❤︎」梓は水飛沫を全身に浴びている事などお構いなしと言った様子で、飛び跳ねながらはじゃく。




また、ある時は遊園地にもデート訪れた。

「わぁ❤︎高ーい!ウチ見えるかな?」

観覧車に乗った梓は景色を指差しながら駿に尋ねる。

「あはは!こっからじゃ見えないって!」

「もう!駿は夢がないなぁ〜」梓は駿の発言に頬を膨らませるが「あ!そうだ!」と何かを思いついたように、駿の横に座る。

「ん?どうした?」駿は首を傾げる。

「これだよ!ハイ!して!」梓は目を閉じて駿を待つ。

「え?ここで?キス?」

駿は戸惑いながら尋ねるが、梓は黙ってうなずく。

「いや、ホラ・・他にも利用してる人居るしさ・・ここじゃちょっと・・」駿は顔を赤く染めてキスを躊躇う。

「何言ってんの?観覧車+男女=キスじゃん!」

「なんだよその式!」

「観覧車はキスする為の乗り物なんだよ?知らないの?」

「いや、初めて聞いたわ!」

「いーじゃん!しようよ!キスしたい!」

梓はキスを躊躇する駿にご立腹と言った様子で地団駄を踏む。

「わかった!わかった!キスするから揺らすなってば!危ないだろ!」

駿は暴れる梓を静止する。

「ならキスしてよ!ホラ!来て!」

梓は目を閉じて、駿のキスを待つ体制に入る。

「わかったよ・・もう」

駿は恥ずかしさのあまりに、頭が噴火しそうになりながらも、優しく口づけをする。

そんな2人を別のゴンドラに乗った子供が凝視している。

「あはは・・どーもー」駿は苦笑いをしながら、その子供に手を振る。

そんな駿に子供も笑顔で手を振る。




そうやって、今までろくに出来ていなかったカップルらしい事を満喫して数ヶ月が経過した頃。

駿と梓は、いつものように駿の家で梓の手料理を食べていた。

「梓!また料理の腕あげたんじゃないか?すげーうまいよ!」

「ホント!?」梓は満面の笑みで駿を見つめる。

「ああ!ホント美味しいよ!いやぁ、キッチンをメチャクチャにしてたあの頃が懐かしいよな!あはは!」

「もー!いーじゃん!その話は!いつの話してんの?」梓は頬を膨らませる。

「でさ・・ちょっと・・その・・相談したい事があるんだけど・・いいかな?」

駿は箸を置き、真剣な面持ちで語り出す。

「え?なんか怖いんだけど・・何?」

いきなり真面目なトーンで話を切り出す駿に、梓は身構える。

「いやさ・・そろそろ内見行きたいなぁ・・ってさ」

「ナイケン?ナイケンって何?」

「いや、だからさ、これから住む部屋の下見?みたいな・・」

「あぁ!内見ね!でも・・駿って引っ越すの?」

梓は駿の言葉の真意を理解できていないようで、首を傾げる。

「いや・・だから・・前も話したろ?同棲だよ!そろそろ・・梓と同棲したいなって・・」

駿は顔を赤くしながら呟く。

「え?ど、同棲!?」梓は声を張り上げて立ち上がる。

「ま、まぁ、梓が嫌じゃなければなんだけどさ・・」

「嫌なんて言う訳ないじゃん!」

梓は駿の体に涙を流しながら抱きつく。

「ぐすっ・・一緒に住めるなんて・・嬉しいよ・・駿・・」

「そっか・・良かった・・なら近いうちに」

「嫌だ!明日!明日行こうよ!内見!ね?明日!ね?ね?」

梓は目をキラキラと輝かせながら、駿に顔を近づける。

「はぁ?明日?いやいや、急すぎるだろ!そもそも予約」

「なら今すぐにネットで物件探ししよ!ね?」

梓は駿と同棲出来る事が嬉しいようで、スマホを取り出して物件探しをする。

「ふっ、分かったよ・・」

それから駿と梓は、互いにスマホで物件探しをする。しかし、中々希望通りの物件が見つからず難航する。

しかし「あ!これいいんじゃないか?」

いい物件が見つかったようで、駿はスマホの画面を梓に見せる。

「え?どれ?どれ?見せて」

それは、最寄駅もだいぶ近く、駿と梓の職場からさほど離れていない立地にある、2LDKのマンションだった。

14.4帖のLDKがあり、6帖の洋室、5.5帖和室、独立洗面台とトイレ、風呂、クローゼットが洋室と和室にそれぞれひとつづつあり、LDKに面した物入がある。

「2人で暮らすには充分な広さだろ?かなりいいなぁと思うんだけど、梓はどうかな?」

「いいじゃん!ここ!家賃もそんな高くないし!ここにしよ?ね?ね?」

「分かった!分かったから!慌てるなってば!なら予約するから!」


翌日、駿と梓は予約した時刻に不動産へ赴き、内見に向かう。

部屋は見取り図や写真で想像していたよりもだいぶ広く、開放的な造りだった。

「いい感じじゃん!ね?駿!」

「ああ!かなり広く感じるなぁ」

「気に入っていただけましたか?」

内見に立ち会っている、不動産の女性社員が優しい表情で語りかける。

「はい!すっごくいいです!気に入っちゃいました!キッチンだって広くて使いやすいし!」

梓はウキウキした表情で、キッチンでクルリと回ってスカートをはためかせる。

「はーい!駿!料理出来たから持ってって!」

梓は同棲した時の事を想像しながら、料理を並べる素振りをする。

「・・・ん?料理?てか何やってんの?」梓のいきなりの行動に駿は驚きを隠せず、豆鉄砲を喰らった鳩のように目が点になる。

「何って、シミュレーションだよ!シミュレーション!同棲した時の為の!ホラ持ってって!」

「いや、良いって!やめろよ!恥ずかしいから!」

駿は照れたように、女性社員をチラチラと横目で見る。

「あ、私の事はお構いなく・・あはは」

女性社員は苦笑いを浮かべる。

「ホラ!大丈夫だってば!はーい!持ってって!」

「わ、分かったよ・・・」

駿は照れながらも梓のシミュレーションに付き合う。

「えー・・っと、どこに・・持っていけば良い・・のかな?」

駿は両手に料理を持ったつもりで、部屋を見渡す。

「あ!そこにテーブルと椅子があるって設定だから!そこにおいて!」梓はリビングを指差す。

「あ、は、はー・・い」駿は顔を真っ赤にしながら、架空のテーブルの上に、架空の料理を並べる。

「ふふふ、同棲のシミュレーションされた方は、今まで居ませんでしたよ」女性社員は優しく微笑む。

「あはは・・なんかすいませんね・・変ですよね・・あはは」

「いえいえ!仲がよろしいようで、微笑ましいです」

「当然ですよ!私たちはずーっと一緒ですから!ね?駿❤︎」

梓は駿に抱きつく。

「こらこら!辞めろってば!」駿は照れながらも満更でもない様子だ。

それから駿と梓は、不動産での契約を済ませ、鍵の引渡しを済ませ、無事に入居当日を迎えた。




そしてしばらくして駿と梓は、新居に聖奈と沙月、それからつかさを招き、同棲記念の食事会を開く。

「ココが2人の愛の巣か!いい感じの部屋じゃん!」「うんうん!良い物件見つけたね!」

聖奈と沙月は部屋を物珍しそうに見渡す。

「金森さん!良かったわね!念願叶ってやっと同棲ね!おめでとう!はい!記念に!」

つかさはそう言うと、ケーキを手渡して来た。

「わぁ!ケーキ!ありがとう!つかさ先生!」

「わざわざありがとうございます!」

駿はつかさに深々と頭を下げる。

「いいんですよ!私たちにとって、皆川先生と金森さんは特別ですから」

「そうそう!御礼なんていいんだよ!」

「私たちの仲じゃん!」


それからテーブルには、梓とつかさが作った手料理がズラリと並ぶ。

「わぁ、すげー豪華だな!」

駿は料理を目を輝かせて前のめりで見つめる。

「あの梓がここまで料理が出来るようになるなんてね!いやぁ、分かんないもんよね」

沙月は腕を組みながら感傷に浸ったように目を瞑る。

「まぁ、これも全部つかさ先生が料理教えてくれたおかげだけどね」

「そんな事ないわ!私はちょっと教えただけよ?金森さんの要領が良かったのよ」

「いやぁ〜❤︎やっぱそっかなぁ〜❤︎えへへ❤︎」

梓はつかさに褒められた事が嬉しいのか、照れながらにニヤける。

そして皆が席につくと聖奈がグラスを片手に、おもむろに立ち上がる。

「コホン!コホン!アー、アー、はい!みなさん!グラス持ってくださーい!」

「なに聖奈が仕切ってんの?」

「いいでしょ?ホラホラ!みんな!グラス持つ!ホラ!」

聖奈に言われて、皆がグラスを手にする。

「えっと、この度は駿くんと梓!同棲おめでとうございます!」

聖奈が祝いの言葉を言うと、駿と梓が微笑みながら頭を下げる。

「まぁ、いろいろ紆余曲折あったかもしんないけど、こうやって2人が再会して、同棲出来るようになって、ホントに自分の事の様にうれしいです!」

聖奈の挨拶を皆が黙って聞く。

「たぶん2人は喧嘩しながら、互いを励まし合いながら、幸せに暮らしていくと思うけど、私たちは2人のこれからの暮らしが幸福に満ち溢れるように祈ってます!」

聖奈はそう言うと、手に持ったグラスを持ち上げる。

「2人がこれからも、仲良く暮らしていけます様に!カンパーイ!」

聖奈の乾杯の挨拶と同時に、皆が乾杯をする。

部屋にはグラスの甲高い音色が響き渡る。

それからしばらく、部屋は皆が仲睦まじく談笑する声で満ちていた。




駿と梓はかなりの遠回りをしてきた。

しかしだからこそ、みんなと過ごす何気ない時間が、何よりもかけがえのないものであることを誰よりも知っている。

たくさん笑い、たくさん泣き、たくさん喧嘩し、様々な困難を乗り越えてきたからこそ、その思い出が強固な絆となっていることを誰よりも知っている。

これからの二人には、今まで以上に辛い出来事が待ち受けているかもしれない。

別れの危機を匂わせるような大きな喧嘩をするかもしれない。

難病にかかり、生死の境を彷徨うことになるかもしれない。

しかし、二人ならどんな困難や逆境も乗り越えていけるだろう。終生寄り添い、手を取り合って生きていけるだろう。

二人はそんな未来を予感させる、幸福に満ちていた。

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