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小さい頃、友達と一緒に水族館へ遊びに行った。初めに見たのはよく分からない幻想的な魚だった。その隣のスペースは何かよく分からないものを沢山飾っていたのを覚えている。
階段を降りて行くとそこには見た事も無いような魚でいっぱいだった。
その端の方で(金のイルカに運が良ければ会えます。)となんとも不思議なチラシを見つけた。その時はイルカに会うこともなく、水族館を抜けた
5年が過ぎ、私はもう高校生になっていた。そして1人でその水族館を訪れた。理由は簡単で本当に居るのなら会ってみたいと言う夢見がちなものだ。そして私は何度か足を運んだ。ガラスに張り付きずっと眺めていた。今日もいつも通りそこに行くとガラスの向こうに金のイルカが居た。金のイルカはそのガラスをすり抜けて私の手とハイタッチをしてくれた。不思議と感触があった。でもガラスをすり抜けるなんでありえないし、
「CGか……」とボソッと言って落ち込んだ。
わかっていたのだ。どうせ存在しない事を。薄々気づいていて、それでもその貼り紙を真実だと、小さい頃からの希望を追いかけてきた。私は後ろを振り向いて帰ろうと足を進めた。
でも次の瞬間だった。その日の客は私だけのはずなのに、後ろから(不思議な子。)と言われた。
後ろを振り向いてもそこには2匹のクラゲらしきものが泳いでいるだけだった。
すると、(貴方、私達の声が聞こえてるの?)と言われた。それはクラゲらしきものが発していた。
そしてその2匹から、いろんなことを聞いた。
この水族館の魚達はとても、とても遠い所から来たこと。
昔は人がぼちぼち来ていたけどもう数年は人が来ていないこと。
友人の話、自分の昔話、どれも聞いていて、とても楽しかった。そして時間が過ぎていた。もう日が沈み、反対側から少し月が見えていた。
私はそれに気づいて急いで家に帰ると言った。
そしたらクラゲ達に言われた。
……もうここに来てはいけないよ……?と。
私はよく分からなかった。それよりも早く帰らないと家族に怒られてしまう。そう思い深くは考えなかった。
家に帰り私はお母さんに帰りが遅くなった事を謝りながら、ご飯を食べていた。お母さんがテレビを見たいと言ってテレビをつけた。そのチャンネルはお母さんがいつも見ているニュース番組だった。そこで私は目を疑った。
そこには、今日行ってきたあの水族館がもうすぐ取り壊されると流れて来た。私は驚いて(この水族館とても綺麗なのに……)と言った。するとその言葉が聞こえたお母さんは、
(あの水族館だった場所、建物も壊されちゃうのね……)と言った。
とても引っかかった。
水族館だった、と言うのが意味が分からなかった。私は(今日この水族館行ってきたよ。改めて思うけどとても綺麗だったよ)と言うとお母さんは(何言ってるのよ。あの水族館はもう何年も前に閉鎖しちゃったじゃない)と言った。
驚いた。じゃあ、あの魚達はなんだったのだろう。と、それはいまも分からないままだ……。
でも、またあのイルカ達に会えるといいな……と心の底から願った。