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センシティブタグが付いていますが、そういった表現は使われていません。 これからも特に使う予定はないので安心して閲覧して下さい(*^^*)
私が仮面を外し、目と目が合った瞬間、ハンスは私に駆け寄り抱き締めてきた
思わず私も抱き締め返す
「良かった……本当に良かった……!! 」
ハンスは私の存在を確認する為に何度も私に触れる
見えることはないが酷い顔をしているのだろう
貴方も私も
ハンスと体が離れ、目と目が合う
記憶の彼と一寸違わない姿に……
「……っぁ」
顔を見られないように仮面を被る
…が、すぐに外されてしまい
「…っ……スミレ………」
ポロポロと涙が流れている顔があらわになる
少し落ち着いてから互いに起きたことを説明し合った
あの後からずっと苦しんだこと
依頼に明け暮れていたこと
自暴自棄になって入社したこと
何故か生きていたこと
Aという人物に拉致されたこと
無理矢理入社させられたこと
互いが居ないことで苦しんでいたこと
(……そうだ。)
この話をしたことで言わなければならないことを思い出す
「あの…いつもありがと
……えっと……いつも助けて貰ってるのに感謝の一つも言えてなかったなって……」
「…こちらこそ。
きっとスミレが居なきゃ俺は今頃生きて無かったと思うんだ」
「…私だって──
話の途中で二人に作業の指示が入る
「…あ、作業指示が……」
「あぁ、また後でな」
『また後で』
この言葉がどれだけ幸せだろうか
もう二度と会えないのではと思っていた為、この言葉が胸に響く
無責任に『逃げて』などと言って去った私には勿体ない言葉だ
…ただ
それでもまた生きて言葉を交わすことが出来たのだ
それだけで十分だろう
「……~~♪」
これまでに無いほど上機嫌で収容室へ向かう
ハンスとはまだまだ話したい事があるのだ
収容室へ入り、いつも通りに作業を済ます
『O-04-72』今日収容されたアブノーマリティだ
…が、あまり良い作業結果とは言えず、思った以上に怪我を負ってしまう
そうして血が流れている手の甲を見つめていると…
(この場所はハンスにとって危険じゃないの?)
そうだ
ここL社は簡単に人が死ぬ場所
実際何人も殉職していった職員やオフィサーを見てきた
それに先程までハンスはアブノーマリティに殺されかけていたのだ
「…守らなきゃ」
あの男に叩き切られ、
ハンスを置いていってしまったあの時とは違う
私が彼を守るのだ
作業が終わり、ハンスとまた会う
ハンスはニコニコとしていたが、私の手を見るとすぐさまに顔を真っ青にする
「スミレ!?どうしたんだそう手!!? 」
慌てて駆け寄り優しく私の手を取るハンスの、まるで大怪我でもしたような形相に面食らう
「…え、えっと…
少しだけアブノーマリティに抵抗されちゃって…」
「どこかに治療出来る場所は無いのか?!」
「大丈夫だって。
ほら、少しずつ塞がってる」
今私達はメインルームに居るため、傷は勝手に塞がっていく
…そのお陰で周りの視線は痛いけれど…
「………そうか、すまない。 」
ハンスがゆっくりと私の手を離す
「…心配してくれてありがと」
(そんなになるほど心配してくれるんだ……)
ハンスも私と同じくらい大切にしてくれていることに口角が上がる
…仮面を付けていて良かった
「……あのさ、私─
『管理人!O-04-72が脱走しました!』
「「!」」
先程作業していたアブノーマリティだ
確か危険度はWAWだったはず…
『笑顔』を取り出しハンスに背を向け
「…ハンス、一応エレベーターに避難し
ドスッ
私の身体に不思議な感触が広がる
腹を見やると
「…っ?!」
腹に赤い枝が突き刺さっていた
認識すると同時、鋭い痛みが走る
『アレックスは死んでいる』
『ティアは死んでいる』
『メイは死んでいる』
目の前の…O-04-72は収容室で見たときよりも倍は大きく、コントロールチーム内を飛び回っている
と思えば、瞬きの間に消えてしまった
『メリーは死んでいる』
『ハルは死んでいる』
『情報チームの全職員が死亡しました』
(…嘘でしょ…!?)
一度に大量の死亡報告が放送され耳を疑う
(…っそうだ!!)
「ハンス!!!」
すぐさま振り返る
するとそこには…
「………ぇ」
『ハンスは死んでいる』
嘘だ
ウソだ
うそだ
「ハンス……?」
そこには…そこには赤い樹木が床から生えており、
その樹木には腕、足、胴体、そして頭が実っていた
「ハンス?」
どうして
『■■は死んでいる』
『■■■■■は死んでいる』
『■■■は死んでいる』
『■■■は死んでいる』
『う…うそ……みんな死んじゃったの…?
………あんなに頑張ったのに………』
「うそだ」
『■■■■■■は死んでいる』
『■■■■は死んでいる』
『■■は死んでいる』
「ハン…」
『スミレは死んでいる』
目が覚める