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7月末、幼なじみの晴が死んだ。
夏休みに入る直前だった。川岸で倒れてるのが見つかったらしい。川で遊んでの事故らしいと、周りの大人たちが言ってた。
どうでもよかった。
棺桶に眠る幼なじみは、溺死は遺体の損傷が激しいと聞いていたけど、存外綺麗な顔で眠ってた。
火葬場に入っていく晴を見ても何も感じなかった。
あぁ、なんかあっさりだな、そう思って火葬された晴の骨はとても白かったのを覚えている。
夏休みに入る直前だからか、先生も忙しそうで、通う高校は元から人が少ないのもあってかすぐに噂は広まり晴のことで持ち切りで、でもそれも先生たちによって何事も無かったかのように、夏休みへと入った。
「あちぃー、先輩はアイス食います?学校終わって、夏休み入るって時のアイス美味いっすよ?」
「あー、いらんわ。じゃあ、俺帰りこっちだから、」
「うぃーす。お疲れ様でした!また9月!」
別にアイス食べながら帰っても良かったかな、なんて曇り空の下、思いながら川沿いの道を歩いていたら、食欲が消えた。しばらく歩くと、階段を上りひとつ上の道へと出る、こんな気持ちになるぐらいなら早く川から離れようなんて階段を登っていると右の土手にいたのは晴だった。
とうとう気でも狂ったのかと思った。晴のような形をした白い羽の生えた、例えるなら天使のような“ヤツ”がいたから。
“ヤツ”は空を見上げ物憂げな表情をしていた。
自分はきっと気でも狂った。そうだそうでもしないと、、
「あ!おーい!こうちゃん!」
話しかけてきた、そう思ってビクリと肩を震わせ、ヘッドホンをより強く耳に当て聞こえない、見えないフリをする。
ダメだこんなのあってはならない、見てはいけない、認識してはいけない。
そう思いながら俯き足早に帰路を進む。
「こうちゃん?あれ?さっき目合ったよね?おーいこうちゃん!」
ずっと話しかけてくる“ヤツ”。なんだ、なんなんだ!あーもう!!
「うるさいんだよ!!」
辺りがしんと、静まる。あ、やってしまったと本能的に感じ取った、また、“ヤツ”無視して歩き出す。
「やっぱこうちゃんやね!天城高校2年2組主席番号10番!谷崎 光!!」
ご丁寧に、俺のプロフィール紹介しやがって。周りにきこえてたらどうすんだ。幸いにも“ヤツ”は、自分以外の人間には見えても聞こえてもないらしい。
しばらくして無視を決め込み、自宅へと。
自室に入ってずっと着いてきている“ヤツ”に話しかけた。
「なんでいんだよ。」
「!!やっぱり!おれのことみえてるべ!わー!俺ずっと誰にも認識してくれへんでさ、、死んだんだろ?おれ!よかったーー!!」
う、うるさっ、、覚悟決めて問いかけたら、問の答えをかえしてこないで、斜め上の別の回答をしてきた。しかもべらべらと関係ないことずっと話すわ、色々と覚悟を決めて話しかけたのに、肩透かしを食らった気がする。と、同時に安堵した。こいつは晴だ。先月、俺の部屋に居座って、ゲームしてた晴に、喧しさに懐かしさを感じて、目頭が熱くなるのを感じた。
「このアホ」
「はぁ?!この流れでアホ言う奴いる!?ひどないか?!」
あゝ、晴だ、いなくなってなんかない、ちゃんとここにいる。
どうせ夏休み予定は無いし、晴とゲームでもしようか、
「そーいえば、お前が苦戦してたあのステー
「ところで、こうちゃん。“なんで俺死んでるん?“」
蝉の喧騒と、肌に張り付くような暑さ。
こうして俺と晴の奇妙な夏休みが始まった。