「……私、ホストクラブとか、別に興味ないんで」
そうお断りを告げた後に、別れ際に怒らせたりしても面倒だからと、その男が怒ってはいないらしいことをチラリと目で確認をして、
「じゃっ……」
と、前方に立ちはだかる銀河の脇をすり抜けて、二度目の青信号を駆け出そうとした。
その私の背中に、
「いつでも来てくれてかまわないからな! その名刺がそのまま店のカードキーになってるから!」
そう、声が飛んできた──。
「……カードキー?」
横断歩道を渡り終えた後で、もらったカードをまじまじと見てみると、店名と彼の名前が刻印されたその裏側には、こんな一文がまことしやかに書かれていた──。
『超イケメン✧ホストクラブは、会員制のホストクラブです。
会員になれる方は、当クラブのホストによって選ばれた方のみの限定となっています。
お客様の自薦については、一切受け付けません。
このカードキーを手にされた方だけが、超イケメン✧ホストクラブへの扉を開かれるのです』
「どういう意味? ……っていうか、やっぱりからかわれてるの?」
読み終えたところで、盛大なため息を「ハァ──…」と一つ吐き出して、そのカードキーとやらを持っていた肩掛けのカバンの奥へしまい込んだ。
できれば、わけのわからないそれがもう目に触れることすらなく、このままあの銀河とかいう軽薄そうな男とともに、自分の記憶の中からも綺麗さっぱりと消し去られることを願って──。
コメント
1件
そういうナンパもあるのかな?それとも呼び込みの一種? 行ったらお高い料金が発生するのかな?とか考えてしまう。 でも気になる😊