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アタシは山道ユリカ。おかっぱデコ出しヘアーが特徴の高校二年生。キリスト教の学校に通っている。
成績は悪くないけど、遅刻しまくったり学校行事の途中で抜けて帰ってきたりするから先生からは怒られてばかり。
今日もまた担任の顎奈ヶ崎先生に職員室へ連れていかれる。
「山道さん。あなたはどうしていつも反抗的な態度なんですか。」
またながーい説教か…
そう思っていたら——
「僕はこんなことになってほしくなかったんですけどね。しょうがない、ついてきてください。」
顎奈ヶ崎は私をエレベーターへ誘導する。全ての階を同時に押し、何やら呟く。
「認証要求。顎奈ヶ崎、No.364」
エレベーターが動き出し、下へ降りてゆく。
ドアが開くと、そこには真っ暗な廊下が広がっていた。初めて来る場所だ。顎奈ヶ崎は右の通路を進んでゆく。
「…おい、なんでアタシがこんなとこに連れてこられたんだよ!」
「裏職員会議で決められたことです。あなたに拒否権はありません。」
「はぁ?答えになってねーよ!」
廊下の先には、体育館ほどの大きさの広場があった。壁には電子機器が張り巡らされていて、上からは機械のアームが幾多も飛び出していた。中央には人を拘束できる台が直立していた。
「な、なんだよここ…」
「あなたには機械人間として、奴等と戦ってもらいます。」
「お、おいどういうことだ機械人間って、奴等って!」
顎奈ヶ崎は私を中央の台に押し付け、拘束具をつける。
「すぐ終わりますよ。」
アームが近づき、注射器を挿すと、アタシは意識が遠のいた。
目が覚めると、台は横になっており、拘束具は外れていた。
慌てて制服を捲ってみたが、体の変化は何も感じられない。
しばらくして、顎奈ヶ崎が部屋に入ってきた。
「…これであなたは機械人間です。自身ではわからないでしょうがあなたは人離れした耐久力と攻撃力を持っており、僕ら教師があなたを制御することも可能です。」
「何のためにこんなことをしたんだ。アタシは戦わない。」
「では、あなたに聞かせる必要がありますね。我々の戦いの歴史を。」
顎奈ヶ崎は私を別の部屋へ案内した。そこには、カフェテリアのような空間が広がっていた。彼は紅茶と、スノーボールのような見た目のお菓子を出してくれた。
「あなたはポルボロンを知っていますか?」
「スペインの伝統的な焼き菓子でしょ。この学校で昔シスターたちが売ってたらしいじゃん。食べたことないけど。…もしかしてこれって。」
「これがそうです。食べてみてください。」
アタシはポルボロンをそっと持ち上げ、口に入れる。口の中でその塊がゆっくりと重みを持って溶けてゆく。甘くて、まろやかだ。信じられない美味しさに目を見開く。
「めっちゃ美味しい。」
「でしょう?我が校のは小麦粉を炒り、材料のラードも手作りなんです。」
「これでアタシを買収するつもりなの?」
「まさか。我が校のポルボロンはあなたのこれからの戦いにとても重要なのです。」
「これが?」
「我が校のポルボロンは、伝統を重んじながらも独自に進化を重ねてきました。その結果、これを食べた人は皆、この食べ物の虜になりました。…ただ、それが尋常じゃなかったのです。この食べ物は人々を支配することができるとわかったのです。」
「なんでそんなもんアタシに食わせた!」
「まあまあ落ち着いて。…この話は多くの教会に広まりました。そこに目をつけたのが、教会に属しながらも世界の支配と混沌を望む反逆者集団、通称『闇シスター協会』。奴等は我が校のポルボロンのレシピを狙っています。」
「それで、アタシが奴等と戦えってか。」
「その通り。『闇シスター協会』の連中は、普通の教会関係者に擬態しています。あなたは奴等を発見し、我々に報告、そして場合によっては戦闘していただきたい。奴等は時として手段を選びませんからね。」
「…拒否権ないんでしょ。しょうがない、やってやるよ。具体的にまず何すればいいの。」
「話が早くて助かります。今度の日曜日、三ツ谷駅前の教会でミサがあります。我が校へのサイバー攻撃の発信源の一つとしてこの教会が特定されました。奴等のメンバーがいる可能性があります。行って、探ってきてください。」
「えー!そんな無茶な…。だいたいミサに行ったって誰が『闇シスター協会』のメンバーかなんてわかるわけないでしょ。」
「あなたには無茶をしてもらいたいのです。ご褒美としてポルボロンを好きなだけあげましょう。」
「しょ、しょうがないなあ。交通費も出してよね!」
こうしてアタシの奇妙な日常がスタートするのだった。
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