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『双子の名探偵は今日も嗤う』〜謎あるところに闇は生まれる〜
第4章 『愛するが故に犯してしまった罪
破った約束』
〜護る為に嘘を吐く〜
第4話 杜撰な計画
『まず、1階の我々が聞いた内容では料理長のアグリさんは周りの従業員からとても慕われていたそうです。料理長としての腕もよく料理も美味しいと評判で、副料理長の方も尊敬していると。』
『なるほど……。』
『でも、興味深いことを聞きました。レストランの見習いの方から…料理長を殺害したのは副料理長かもしれない。と。』
『え!?』
遡ること1時間前。
『え?副料理長が料理長を殺したかもしれない?』
『はい……。料理長はここを辞めて新しい料理長を決めると支配人と話していたのを偶然聞いてしまったんです。』
数日前。
料理長の部屋の前の廊下
『この食材は保管庫に閉まってくれ。』
『はい。』
料理長の部屋が少し開いていて…私と副料理長は聞き耳を立ててたんです。
『次の料理長は副料理長の彼だと私は考えている。どうですかな?支配人。』
『パティシエの彼ですか?いやぁ、彼はスイーツ脳ではいいが料理の腕は如何なものかと思います。やはり新しく雇うのがいいのではありませんか?』
『ふむ…。分かりました。』
『そんな……。』
『副料理長…。』
『だからもしかしたら副料理長が殺したかもしれない。と彼は言うんだね?』
『はい。』
『なるほど……。2階の執事のみんなはどうだった?』
『俺たちも同じようなものでした。料理長は周りの人から慕われてて…。』
『殺されるような人ではないって言ってたっす。』
『つまり、料理長を殺して得をする人物の反抗だと思います。』
『…副料理長。か。』
『はい。主様に罪を擦り付けてるということです。』
『実は私達料理長の部屋で気になるものを見つけたんだ。ナック君。』
『はい。日記のようなもので…。』
『あいつのスイーツの腕は素晴らしい。いずれ私の跡を継がせるにふさわしい。』
『この文面を見るに、料理長は副料理長を継がせる気だったようです。』
『え、でも見習いの話を聞く以上新しく料理長を雇うって……。』
『…早とちりで殺した、だとしたら厄介だね。』
『え?』
『最後まで話を聞いた訳ではないんだよね?その2人は。早とちりで殺したなら今までの辻褄が合うんだ。』
『料理長を殺して得をする人物は副料理長しかいないからね。』
『じゃあ、これで主様を助けられるんですね!?』
『うん。伝書鳩で主様に伝えよう。』
『……待ってくれ。みんな。』
『え?ミヤジさん?』
『第一発見者の彼から聞いたんだ。』
『……っ。』
私は胸がドクンっと高鳴る。
『主様を目撃した時…顔を照らしたそうだ。そして見えたのは仮面だけじゃなくて…。』
『右耳にピアスが空いていたんです。』
『……え?』
『ベリアンさん、麻里衣様ってピアス空けてませんよね…?』
『えぇ…。ピアスを空けているのは百合菜様だけです。』
『ってことは…っ。』
一斉にみんなが私の方を向いた。
『…っ。』
『主様…?』
『ごめんね、みんな…。』
『百合菜様…?』
『もう、隠しきれないよね。そう……。お姉ちゃんは…私を庇ってるの。 』
『え……っ?』
『ど、どういうことだよ?主様がまさか…。』
『ううん。私は殺してない…。でも…。』
昨日の夜…寝付けなくて、外に風を当たりに行ったの。そしたらフロントに人が倒れてて、その傍に人がいて…。
『……!!』
バタバタバタ…!
その人は私を見た途端逃げて…。
私はつい落ちてた凶器を拾ってしまったの。
『どうしよう、私、私…。』
『おい、そこで何してる!』
『っ!』
カチャン!
私はナイフを投げ捨て走って逃げる。
『っ待て…!』
バタバタバタ…っ!
(どうしよう、さっきまでお姉ちゃんとお揃いにして仮面までつけて行っちゃった……どうしよう。このままじゃお姉ちゃんが…!)
バタンッ!
『百合菜…?どうしたの…?って、どうしたの、その血……。』
『お姉ちゃん、下で、人が倒れてて、わたし、その、凶器のナイフをつい持ってしまって、はぁ、はぁ……!』
(突然の出来事すぎてパニックを起こしてる…。)
『百合菜、落ち着いて。大丈夫。貴方は殺してなんか居ないわ。落ち着いて。』
『でも、私、私、見られちゃったの、人に……。』
『…っ!……百合菜。仮面をつけて行ってくれたのね。ありがとう。』
『え…?お姉ちゃん……?まさか…』
『いい?この先何があっても真実を話しちゃダメよ。夜寝付けなくて外に出たのは私。凶器のナイフを持ったのは私。わかった?』
『お姉ちゃん、私の身代わりになるつもりなの!?ダメだよ、そんなの…!』
『双子なんだから普通の人に見分けが着くはずないわ。仮面は目立つからね。』
『っ…。』
『朝執事のみんなが起こしに来るけど、貴方は起きてきちゃダメ。百合菜。お姉ちゃんとの約束、守れるわね?』
『っ……。』
『つまり、麻里衣様は百合菜様を守る為に…?』
『うん…だから、お姉ちゃんは悪くないの……私のせいなの…っ。ごめん、なさい、ずっと言えなくて…っ。』
『我が主様ながら大胆なことをしますね……。主様はそれ程まで妹である百合菜様のことを大事に思ってるんですね…。』
『ルカスさん、主様に伝えましょう。それで一刻も早く主様を助けなければ。』
『そうだね…。』
私達は伝書鳩を飛ばした。
グロバナー家。
『執事のみんなから手紙ですか?』
『あぁ。君宛に。』
『…なるほど、私の代わりに捜査をしてくれたのね…。』
『優秀だな。君の執事は。』
『えぇ。きっと私のことを今すぐにでも助けたいと思った一心で動いてくれたんだと思います。』
『麻里衣。私は君が犯人ではないと分かっている。だから……。』
『……フィンレイ様。みんなが謎を解いて犯人を捕まえるまで…私はここを出ません。』
『…強情だな。全く。』
『犯人は安心しきってるだろうね。身代わりの主様が捕まってくれて。』
『つまり余裕ぶっこいてるってことっすね?』
『あぁ。でも、犯人は主様を狙っているかもしれない。犯人の姿を見たのは百合菜様だけだ。』
『じゃあこのホテルにいれば犯人は主様を狙って来る訳か。』
『逆にそれを逆手に取ればいい。我々の主様には手出しさせないよ。ふふっ。』
その日の夜――。
私達はレストランで食事を取ることに。
『副料理長さん、大丈夫ですか?あんなことがあったばかりで…。』
『とんでもないです、料理長はいつどんな時もお客様には美味しい料理を提供するのが本物の料理人だと仰っていましたから。』
『そうですか…。』
『モグモグ…。』
と、その時だった。
バチンッ!
レストランの電気が突然消えた。
『え!?停電…!?』
『何も見えないぞ!』
『すぐに復旧させます!』
ザワザワ…。
(この混乱に乗じて殺してやる。ふっ。確かによく似ている。だけど、客商売していると双子の見分けなどすぐに分かる。身代わりに姉が捕まるのは想定外だったが、妹もいなくなれば犯人は私だと気付かれることなど…。)
私はナイフを構えゆっくりと近付いた。
と、その時――。
パチンッ!
レストランの灯りがついた。
それと同時にどこからか声がする。
『殺す相手を見誤ってはいけませんよ。副料理長さん。いいえ…。料理長を殺した、デリート・カシフさん?』
『っ……!』
『主様、こちらへ!』
『う、うん!』
『な…っ!副料理長…?なんでナイフを構えて…。その人を殺そうと…?』
『ち、違う!わ、私は…。』
ギィィ……。
レストランの扉が開く。
コツコツ……。
『妹に手出しはさせませんよ。 謎と闇は全て暴かれました。 さぁ。光の名のもとへ全てを明白に。』
私は仮面を外した。
次回
第5話 早とちりは身を滅ぼす
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