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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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「…それでは、会議を始めましょう。」


落ち着いた声が、会議室に響く。

今日は、月に一度の大切な会議の日。

時が止まったこの“リーヴル”のこれからについて話し合うのだ。


どうして時が止まったか?

そんなの簡単よ、我らが創造神が“更新”をやめてしまったから。

私達登場人物は、創造神が居なければ動けない。

だから、創造神が更新をしない限りここは昼のままだし、時計の秒針だって動くことはない。

運命の出会いも、胸が熱くなるような友情も、創造神の更新なしには、一生訪れないのだ。


「ここ1ヶ月の間、創造神が更新した回数は、ゼロ。由々しき事態です。」


ゼロ回、この言葉を聞いて会議室はザワザワしだした。

特に、第三作目の荒くれ者たちの辺りが。


「そこで、本日はこの世界の最初の住民、

メシアが名案を持ってきてくれたようです。」


私に視線を移して、言った。

彼女はディア。私と同じ、第一作目が出身。

私は主人公、彼女は準主人公だった。


「そうでしょう?メシア。」


半分呆れたような、困ったような顔をして、私を見つめている。

周りの反応も同じ。


当然の反応だと思う。

私が会議で意見を出すのは、これで5回目。

10回ある会議で、こんなに案を出すのは私だけ。

他の人は、ほとんど高芯を諦めているけど、私は違う。

創造神はきっと、筆を握ってくれる。

自信たっぷりの笑みで、こう返した。


「はい、もちろんです!ディア」

「それでは、前に立って、みんなに説明してあげて。」

「はい!」


踊るような足取りで、真ん中にある舞台へと向かう。

会議室、というより劇場のようなこの部屋は、

円を描くように座席が並んでいて、2階席まで満員だ。

何かを期待してるような、そうでも無いような、そんな眼差しが私に降り注いだ。


お得意の魔法を使って、資料を空に映し出した。

咳払いをして、息を吸い込む。


「えー、私は…創造神が再び私たちの世界を更新し、いつものような日常が戻ってくると、心から信じています」


呆れたため息が、周りから聞こえる。


「しかし、指を咥えて見ているだけでは、時計の針は一向に動かぬまま。」


「そこで!私が創造神の世界に行って、彼女を説得するんです!」


肩で息を整えながら、周りの反応を伺う。

皆、驚きのあまり空いた口が塞がらない様子。


短い沈黙のあと、今までにないほど、周りがザワザワしだした。

眉間に皺を寄せ、抗議する者。

ディアといえば、眉間に手を当て、大きなため息を吐いていた。


「ね?ね?いい考えでしょ?」

「……。」

「お願い!」


返答に困るディア。

彼女の言いたいことを代弁したのは、召使いと共に会議に参加する王女様だった。


「無理だ。」


彼女の一声で、周りは一気に静まり返った。


「王妃、そんなにはっきり言っては…」

「この夢見がちなバカには、これくらい言わなければ効かないだろう。」


ディアが黙ると、彼女は追い打ちをかけるように続ける。


「このバカが、会議で意見を出したのはこれで5回目。1度でも、此奴が出した案が成功したか?」


次々と顔を見合わせる周りの観客達。



まずい、このままでは、負ける。

なにか、何か反論を。


「こ、今度こそは成功させるわ!」

「その言葉を聞いたのも、今回で五回目だ。」


「今回は大丈夫なの!」

「ほぉ?随分な自身だ。なにか証拠でもあるのか?」

「う…。」


助けを求めるように、ディアの顔を見る。

困ったような顔で私を見つめた彼女は、小さくため息を吐いた。


「王妃、あなたの言う通りです。

メシア、あなたの意見はよくわかったわ。貴重な意見をありがとう。」

「でも…!」


「しかし。」


私の言葉を遮ったディアが、鋭い目付きで私を射抜く。


「しかし、彼女の言う通りあまりに無謀な計画です。案を出すのだとしたら、他の案を出してちょうだい。」

「…わかった。」


拳を強く握りしめる。

待ってたって、時計の針は止まり続けるだけじゃない。

ハッピーエンドはいつまでも訪れないのに。

「これにて、会議を終了いたします。

私達は、これまで通り創造神の更新を待ち続ける。それだけです。」


本当に、それでいいって言うの?


「ありえないわ…」


初めに王妃が、呆れたような声をあげて、乱暴に開いた扇子を仰ぎながら会議室を出ていく。

それに続いて他の住民たちも、会議室を出ていった。


私はただ立ち尽くして、王妃の後ろ姿を睨む。


何よ、王妃のやつ。

なにか文句を言う前に、代案でも出したらどう?


「メシア。」


後ろから、片付けを終えたディアがそっと私の肩を持つ。


「王妃のこと、恨まないであげて。

彼女にも、守りたいものがあるのよ。」

「そんなのは分かってる…!でも…」


「皆、時が止まって焦っているの。」

「……。」

「最初の住民である私たちの役割は、皆をまとめ、治めること。」


私を正面に向かせて、真っ直ぐに目を見つめる。

私によく似たサファイアの瞳が、私の不満げな顔を映した。


「ねぇ、メシア。」

「なに?」

「あなたの案、斬新だったわ。皆、驚いていたの。でもね、あなたには__」


ディアの肩を押しのけて、キッと睨みつける。


「危険すぎる?もう何回も聞いた!私だって子供じゃないの!」

「待って、メシア…まだ__」


「もういい!」


ディアの返事を待つことなく、ヒールを床に叩きつけながら会議室を出ていった。

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