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あれから10年の月日がながれ、俺は27歳になった。
しかし周りからは「ぜんぜん変わってない」だの「若づくり」だの「詐欺」だの「ハゲろ!」だのいろいろと言われている。
まぁ言われるのもそのはずで、外見は10年前とほぼ変わっていないのだ。
女神さまは『緩やかに老化していくはず』とおっしゃっていたのだが……、知らんがな!
住んでいる所はもちろんデレクの町である。
あれから爵位も上がって俺は伯爵になった。
…………あれは5年程前の事だったか。
北の海で ”リヴァイアサン” なる巨大な海龍が暴れており、貿易船が何隻も沈められたことがあった。
このままでは順調にいっていた他国貿易も立ち行かなくなってしまう。ということで、
我が国が誇る騎士団や魔法士団がしばらく派遣されていたようだけど、全く歯が立たなかったようだね。
そこで困ったシオンの親父であるラファール辺境伯と王宮は、
「是が非でも、海龍の討伐をお願いしたい!」
俺に泣きついてきたのである。
はい、それは行ってきましたよ、北の海までシロを連れて。
シロは海で泳げるからって喜んでいたなぁ。
それで行ってみたら、いやー、デカいのなんのって。
海にいるから潜られたら手が出せないでしょう。
いろいろ考えて、浅瀬におびき寄せるのに20日近くは掛かったんじゃないかな。
そんなこんなでリヴァイアサンの討伐は果たした。
その功績によって伯爵に陞爵したというわけ。
それに伴い、今まで代官として治めていた ”デレクの町” がまんま俺の領地となった。
まぁ領地といっても、もともとが山なんだよねぇ。
……別にいいけど。
その後は思いっきり開拓してやったさ。
半径5㎞範囲の地形を変え、町の規模も2倍にしてやった。
周りの農業区画においても然り。
畑の肥料なども研究してデレク (ダンジョン) に作ってもらっているし、地熱の調整なども合わせて行っていった結果、通常の3倍近い収穫が得られるようになったのさ。
ダンジョンからの産出物資と農作物で町は裕福になり、現在飢える者など一人もいないはず。
そして、このデレクの町にはスラムが存在しないのである。
出稼ぎで流れくる者でも、選ばなければ仕事は沢山あるのだ。
病気やケガの治療には補助金を出すようにしている。
ここは山の中で田舎だけど、噂が噂をよんで人が集まってくる。
町もこれ以上は広げることができないので、新しい村を周りに増やしていっている。
ダンジョンの力があれば大概何だってできるのだ。
ならばいっそ、地下都市でも建設してみようかと密かに計画を立てているところだったりする。
シロ? もちろん元気だよ。
朝の散歩だって毎朝続けている。
最近は町の中だけでは飽きたらず、山岳ステージへ突入しているなぁ。
山 (2000m級) の頂上まで往復したり、反対側の麓まで行って転移して戻ってきたりと、とても散歩とは呼べないハードなものになっている。
それでも、みんな平気な顔してついてくるんだよねぇ。
それも世間話をしながらだぞ。 おかしいだろ!
2000m級の山脈なんだぞ。 夏でも雪が残っているんだぞ。
……考えるな。考えてはダメなんだ。
メアリー?
メアリーは今王都の学校だな。
貴族学校は卒業して、今は魔法学校に進学している。
特に行く必要もなかったのだが、アランさんのたっての希望なので致し方ない。
『くれぐれも本気は出すなよ』とメアリーには言ってある。
それでも、実力が他の生徒とかけ離れているところもあって、男女共に憧れの的になっているようだ。
その反面、貴族子女からのやっかみや嫉妬も多いようだけれど、本人は割とあっけらかんとしている様子。
まあ、立場は大公爵令嬢だし、俺の嫁になることも決まっているからな。
そうなのだ、おばば様のはからいで婚約者として大々的に発表されたのだ。
このあいだ、アランさんと温泉施設でご一緒したときの話になるが、
俺との婚約を言い渡されたメアリーは、それはもう飛びあがって喜んでいたという。
尻尾は毛羽立ち、いつもは垂れている耳はピーンと立っていたというのだ。
メアリーのビックリ顔……、俺も見てみたかったなぁ。
マリアベル?
こちらも今は学校に通っている。
王都にある貴族学校の方だな。
メアリーもそうなのだが、この秋には卒業である。
そしてそうそう、マリアベルもまた俺の婚約者となったのだ。
王家が勧める縁談話を彼女が悉く蹴りまくった結果でもあるな。
ちょうど都合の良いことに俺が伯爵になったものだから、それですんなり決まってしまった感じだな。
王族派の貴族は俺を抱き込むことができて大満足らしい。王族派の筆頭はアランさんね。
ただ本妻には王家の人間が優先されるということで、マリアベルが成人してからメアリー共々迎え入れるかたちだな。
チャトも相変わらずマリアベルにべったりで、至って元気だな。
ナツ?
…………もちろん元気にやっているよ。
3児の母として。
えぇ~、まぁ、その~。 俺の娘 (こ) ができたのだ。
名前はハル、今年2歳だ。
皆のアイドルであり、めちゃくちゃ可愛がられている。
マリアベルが特に可愛がっているかな。
毎日、ログハウスに顔を出しては抱っこしてあやしている。学校もあるというのに大丈夫なのだろうか?
でも本当に可愛いので仕方ないかもな。
赤ちゃんに天然の丸いクマ耳は反則すぎる。
異種族間の性交渉では子供はでき辛いということだったが……、頑張っちゃいましたwww。
それで生まれる子供はハーフとして混ざるのではなく、どちらかの種族となって生まれてくるのだ。
今回は熊ん子であるが次回はわからないそうだ。
どちらでも可愛いのは変わらないよな。自分の子なんだし。
そしてナツの子供でクマ姉弟のメルとガル。
二人とも成人して、今は冒険者になっている。(この国での成人は15歳です)
メルなんか17歳なのにBランクだよ。
弟のガルもそれなりには頑張っているようだけど。
この前、臨時で組んだ冒険者パーティーなんだが……、猫人族のお姉さんに言い寄られて四苦八苦していたそうだ。
――変な女に引っ掛かったらダメだぞ~。
そして奴隷の兄妹、狼人族のフウガとキロも元気だ。
今は二人共奴隷から解放、”お傍付き”として俺の身辺警護をしてもらっている。
あれから奴隷の数も増えたよなぁ。
今では全部で24名。これからも適時増やしていく方針である。
その内の8名は王都やデレクを中心に屋台を出しており、それぞれが情報収集活動をおこなっている。
残りは下男に扮して、デレクのツーハイム本邸や王都の屋敷にて働いていたり、温泉施設で下働きをやっている。
そう、彼らは俺が鍛え上げた【影の軍団】であり、いわゆる邸 (うち) の暗部ということになる。
そして影の軍団を率いているのが、邸のメイドである猫人族のタマ……。
だったのだが、事情があり今はその弟のトキが担っている。
だってタマは、ここツーハイム本邸の元気印! ムードメーカーであり最終防衛ラインなのだ。
俺たちが居ない時はタマが本邸の家人達を守るのだ。
まぁ大層なことを言っているのだが……、俺のお手付きでもあるんです。はい。
……あの白くて硬い尻尾がいけないのだ! そう、あの尻尾のせいなのだ!