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「はぁ…っはぁ…っ…う、そ、だろ…?な、なぁ嘘と言ってくれよ…なんで俺の身代わりになんか…」
千冬ゥ…
ー生涯で一番不幸せな秋をー
「松野千冬さんは…残念ながら、もう助かりません…」
千冬の母ちゃんのすすり泣く声。
それを隣で慰める自分の母親。
泣きじゃくる東卍メンバー達。
そんな光景を目にすれば、心臓がもぎ取られたような痛みが走る。
千冬の眠る病室に行くと、やっぱりまだ眠っているんじゃないかってくらい綺麗な顔で眠っていた。
当然心音などは聞こえる筈もなく、シンと静まりかえった部屋に俺の泣き声が響くのみだ。
枯れた花はもう咲かない、こういうことなのだろうか。
運命の人だった。
愛し、愛されたいと初めて思えた人だった。
でも仲間も大切だし、千冬のことも俺にとって大きな存在だった。
二つを同時に守るには、彼を「踏み絵」として殴るしか方法がなかった。
そして、この「血のハロウィン」自分が死ぬことも計画に入っていた。
その為に千冬宛に遺書も書いた。
それなのに、俺の計画は完璧だった筈なのに彼は死んだ。
いや、完璧じゃない。
生前、千冬の身体は開かないようにしていたのに全く顔も知らないような芭流覇羅メンバーに呆気なくハジメテを盗られて、ローションも慣らす事もなくただ気持ち悪い大きなソレを好き勝手挿れられていた。
そんなの、見てられなかった。
自分を誰一人として庇えないような体制になったのに彼は刺された。
それに、死ぬ前に「愛してる」って言いたかったのにそれさえも言う事なく終わった。
俺の計画はやっぱり欠陥箇所がたくさんあって、そのせいで千冬は死んだんた。
俺は結果的に東卍に戻って、皆はすごく喜んでいた。
でもどこか俺には寂しい雰囲気があって、隣が不自然な感じがして。
もう副隊長はお前しかいないから、安心しろよ千冬。
完全には楽しめなかった復帰祝いが終わった。
祝いが終わって家に帰ると、眠気が襲ってきた。
そのまま眠気に従いベッドに身を預けると、そのまま眠りについた。
「…ここは?」
ひぐっぐすっ
「…誰が泣いているんだ?」
俺の背後のほうで誰かがすすり泣いている。
この泣き声には聞き覚えがある。
「…千冬!千冬、ほら早く帰ろう?やっぱりお前は死んでねぇよ!ほら、な…」
そして千冬を優しく抱きしめようとすると、ドンッといきなり体を押された。
動揺して「何しやがる」声を荒げてしまう。
横を見ると俺の多分今一番苦手な奴、花垣がいた。
「俺の相棒に触らないでください」
「…あ?千冬はお前の相棒の前に俺の…」
「俺の」のあとに続く言葉に詰まってしまった。
本当に俺が相棒なんて言っていいんだろうか?
相棒を殴った奴なんて本当の相棒と言えない気がした。
「千冬はお前のこと相棒なんて思ってねぇよ」
隣で声がしたと思うとマイキーが立っていた。
その目は闇に落ちたような目をしていて、少々怖い。
「だって自分のこと殴ったんだぜ?立ち直れる訳ねぇだろ」
続けてドラケンが言う。
ドラケンもいつになく冷たい声だった。
「お前に千冬を触る資格なんてねぇよ、お前が殺したようなもんなんだから」
三ツ谷の言っていることが酷く胸に刺さった。
心臓を射抜かれたよりも、えぐられたよりもはるかに痛かった。
みんないつもより声は低く冷たい声色で話す。
そして千冬を守るように俺の前に立ちはだかった。
「……俺、もっと生きたかったよ」
千冬の震えて泣きながら話す声に自然と涙が溢れる。
そうだ、俺は千冬を殺したも同然なんだ。
呆然と涙を流していると、マイキーに蹴られた。
蹴られた所で意識が浮上した。