テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
合宿の全日程が終了し、帰りのバスが学校の駐車場に滑り込んだ。
解散の号令をかけるため、部員たちの前に立った小谷先生の表情は、初日と変わらず険しい。
「……今回の合宿で、自分の課題が見えたはずだ。特に上級生、私情をコートに持ち込み、集中を欠くような真似は二度と許さん。以上だ、解散」
先生の言葉は突き放すように冷たい。けれど、成瀬先輩はその厳しい横顔を、真っ直ぐな瞳で見つめていた。一年の合宿で、先輩たちに囲まれていた自分を「今は試合のことだけ考えろ」と助けてくれたあの日から、先輩の視線の先には、いつもあの背中がある。
「ふぅ……やっと終わったわね。紗南ちゃん、お疲れ様!」
成瀬先輩が私の肩を抱き寄せ、大きく伸びをした。
「成瀬。お前は居残りだ。今回の遠征報告書、不備がある」
背後から先生の声が飛ぶ。
「えー! 先生、また? 厳しいんだから、もう……」
先輩は不満げに声を上げながらも、どこか嬉しそうに先生の後を追って校舎へ消えていった。
残されたのは、私と、荷物を持った凌先輩、そして松葉杖を突いた遥の三人だった。
「紗南ちゃん、送るよ。タクシーを呼んだんだ。遥くんもいるしね」
凌先輩が、いつもの穏やかな笑顔で提案してくる。
「……いらねーよ。俺と紗南、二人で帰れるわ」
遥がそっぽを向いて吐き捨てる。
夕暮れの駐車場、成瀬先輩たちのいなくなった空間で、三人の影が長く伸びていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!