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公園にたどり着くと日陰になっているベンチが丁度空いていたので2人並んで腰を下ろす。飲み物を2つ持ったまま瀬南くんがこちらを見つめる。

「ありがとう」

自分のを受け取ろうと手を伸ばしたら、瀬南くんは私から りんごジュースを遠ざけた。

「そのタオル、しまって」

「え、大丈夫だよ。持っててくれてありがとう」

「両手自由になったら渡す」

信用されてない…。このままってわけにもいかないので鞄を開ける。ちょっと中がぐちゃぐちゃしてたのでついでに綺麗に整える。タオルの濡れている所を内側にして畳み、元々鞄に入っていた綺麗に畳まれたハンカチと重ねて入れた

「それっ」

「ん?」

「……何で ハンカチとタオル両方持ってるの?1枚あれば良くない?」

「あ、これ?こっちのタオルは使う用」

「そっちは?」

「これはお守りみたいなもの」


白い生地にワンポイントで刺繍の施されている綺麗なハンカチ。これはどこかに出かける時、必ず持ち歩いている。もちろん学校でも。

「ハンカチがお守りなの?」

「…瀬南くんにならいいか。あんまり他の人には教えてないんだけど、さっき絵を見て泣いたって話したよね」

「うん」

「その時に知らない優しい人がハンカチくれたって」

「その時のものってこと?」

綺麗な刺繍に指を滑らせて撫でる。


「うん、あの日からずっと持ち歩いてるの。あの絵を思い出せるし、これ触ってると安心するから」

「毎日持って歩いてるの?」

「そう。泣いた時に使っただけでそれ以外では使ったことないの。こうして持ってるだけ、お守りだから」

「ふーん」


ハンカチとタオルをしまって瀬南くんからりんごジュースを受け取る

「くれた人に返したいって思ったんだけど、その人にね’もう会うこともないだろうからそれは君にあげるよ’って言われたの」

「まぁ展示会場で会っただけなら、次会えるなんて思わないからね」

「そうだよね、会えないよね。ハンカチありがとうございましたってお礼言いたかったんだけどなぁ」

ストローを咥えて吸い込めば、酸味と甘みが丁度良いりんごジュースが流れ込んでくる。5月なのにちょっと暑い今日の天気にはぴったりだった。

「それ、学校にも持ってきてんの?」

「うん、制服の内ポケットにいつもいれてる」

「落として無くさないようにね」

りんごジュースでやらかした間抜けな私のことを心配してくれているのか、ぽつりとそう言ってくれた


「無くしたら泣いちゃう」

「拭うもの無いのに泣くの?」

「泣くよー!あの時の出来事の中で唯一残ってるものなんだよ?」

「泣きたくなかったら気をつける事だね」

「うん、気をつける」

返事をしながら、ふと目を向けると眼鏡をかけている瀬南くんの横顔。眼鏡のレンズを通さないと結構目が大きい。鼻筋が通っててEラインがとても綺麗。

そういえば、美しい人の条件に横顔が綺麗であることって何かの記事に書いてあった気がする。瀬南くんって近くで観察してるとめちゃくちゃお顔が整って…

ジーッと見つめていたら、彼がこちらを向いてバッチリと目が合う。

「何?僕の顔に何かついてる?」

「ん?!え?いや?!つ、ついてない!」

「ついてないなら、何でそんな人の顔をジロジロ見てくるの」

こちらを向いた彼の顔も近い距離で よーく観察してみれば益々お顔が整っていることがよく分かる。私が気付かなかっただけで瀬南くんってかなり美男子なのでは?

「ちょっと、聞いてるの?」

「瀬南くんって…」

「何?」

「すっごく綺麗な顔してるよね」

「………は?」

私の言葉を聞いてから数秒後に声を発して、ポカンとした顔でこちらを見てくる

「いや、近くで見てて思ったんだけど、めちゃくちゃお顔整ってると思って」

「は?…いや、普通は仮にそんなこと思ったとしても本人に向かって言わないでしょ」

「え?綺麗なものには綺麗って言うよ」

「……僕は分かってるからいいけど、他の男にはそういうの思っても言わない方がいいよ。たぶん色々勘違いさせるから」

そう言って瀬南くんはストローを口に咥えて、さっきよりもハイペースでぶどうジュースを飲んでいる。


「綺麗って称賛してるのに勘違いされるの?」

「男は単純だから。そういうこと言われたら五十嵐が自分に気があるんじゃないかって勘違いするかもしれないってこと」

「そういうもの?」

「そういうもの」

「じゃあ、他の男の人には言わないようにしよ」

「うん」

「瀬南くんには、もう言っちゃったからまた綺麗だなって思ったら言うね!」

「え、なんっ…そういう………はぁ…もう好きにして」

ふいっと顔を背けられてしまったけど、許可をもらえたので嬉しい気分になってりんごジュースのストローを咥えた。


微糖な貴方に惹かれる私

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