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本当に素敵で好きな物語でした…! 連載お疲れ様です!! ハッピーエンドに終わって良かったですт т ♡
めっちゃ感動しました!!!!寝る前にこんな素敵な作品を読めてほんとに良かったです!!!!フォロー失礼します!!!!!これからも頑張ってください!!!!!
────準備が整ってしまった。これから俺らは皇室に乗り込み、皇帝を殺し、世界に復讐する。気が乗らないのは当たり前だが、これは俺の子達による俺のための復讐。誰に恨まれようと、俺だけは否定してはいけない。
俺は青いニット帽に赤いチェック柄のマフラー、青い上着といった軍人時代の服を渡され、大人しくそれらに袖を通した。数年ぶりに着たというのに虫食いや色落ちした雰囲気もなく、運営のみんながこれを大切に保管してくれていたのを感じる。
「──ここが、皇室……」
デケェだとか、憎たらしいだとか、様々な感想がら民からあがる。彼らはほとんどが卑賎の生まれ。身寄りのない子を俺が育てたのだから、こんな綺麗な城を見るのは初めてのはずだ。中には不安に顔を青ざめさせている子もいて、心が痛くなる。まぁ、もう全員子供なんて年齢ではないのだけれど。
ここで、俺は英雄の称号を盛大なパーティーと共に、皇帝から直々に授かった。そのときが人生の全盛期だったと断言できるほど、その日は全てが報われた気分だった。
……すぐ絶望に叩きつけられるとは知らずに。
「……ラダオクン…」
俯いている俺の顔を覗くように、翡翠が下から顔を出す。その顔には俺への心配だけが映っていて、国家を敵にする恐怖もら民が傷つく不安も一切なかった。…そのことに、少しだけ寂しくなる。それを紛らわすために彼の頭を魔女帽子の上からワシャワシャと撫でた。ヤメテヨーと反論が聞こえたが、同時に笑い声も聞こえてきたので本心ではないだろう。
「お前はここに色んな思いがあるやろ。…キツイならやめてもええぞ、俺らだけでやるから」
「……やだよ、おれもやる。仲間はずれにするつもり?」
「ちゃうわ!せやから…はぁ、まぁええわ」
周りを見渡して、後方で物資の確認をしているコンちゃんはともかくレウさんが見当たらないことに気がついた。キョロキョロと人と人の間を縫って歩き、緋色を探す。
「…あっ、いた」
「うぉっ!?……なんだ、らっだぁか」
「なんだとはなんだ。…顔色悪いよ、大丈夫?」
「……大丈夫、ちょっと緊張しちゃって。ダメだなぁ俺、未だに戦争慣れないんだよ」
「レウさんは、それでいいよ。…いや、それでいて」
不思議そうにこちらを見据える緋色には見ないふりをした。もう逃げてばっかじゃいられない。そう、決意したんだ。どんな結末になっても俺はコイツらと共に咲いて共に散るから。
「───ぽ前ら!俺に着いてこい!」
らっだぁ達が乗り込んでくるのはもうすぐ。こばさんからの情報によれば準備は万端、きっと作戦通りに動くはずとのこと。こばさんがこちらと繋がっていると向こうバレないように、彼との通信記録が残っている媒体は全て壊してある。最後の通信の際に激励の言葉を貰った。彼の期待を裏切ることのないようにしなければ。
先に勘づかれて逃げられても厄介なので我々は城内のあちらこちらに散らばっている。俺は城門付近にげんぴょんと焼きパン、各々の同僚と共に忍んでいる。彼らは強いが故きっと正面突破を挑んでくるだろう。というか、そうこばさんに教えて貰った。
片手にレーザー銃、腰にナイフ、背中にライフルを背負った完全武装で出迎える。見渡す限り全員の顔に少なからず緊張が浮かんでいる。きっと俺も同じ顔をしているんだろうな。
『ぽ前ら!俺に着いてこい!』
らっだぁのその声が合図となり、ら民が一気に攻めてくる。負けじと盾や銃を駆使して応戦するが、既に仲間が数人血を吹き出していた。さすがの精鋭部隊。
「青鬼向こう行ったよ!!」
銃声や叫び声に混じり焼きパンの声が俺の耳に飛び込んできた。それに対して俺は焼きパンに視線で了解の旨を伝え、焼きパンの示した方向へと全速力で向かう。
「おい!!アイツ止めろ!!…ぶるちゃん!!!」
は!?今なんて言った!?ぶるちゃん!?あの!?マジかよ、あの人が追ってくるのは大変まずいかもしれない。多分レウさんの指示に従ったであろうぶるちゃんの足音がこちらに向かってくる。だが俺だって足は早い方だったのだ、そもそもの距離があるからこちらの方が若干有利だろう。知らんけど!!!!
「………ぐちつぼ」
「なんすか!!あんたがぶるちゃん!?」
「ウン、そう。…俺ぐちつぼのこと追ってるふりだけするから、らっだぁのことよろしくね」
「…はっ!?」
思っていた10倍早く追いつかれたが、何故からっだぁを託された。意図はわからないがチャンスであることは間違いない。ありがとうぶるちゃん!!
階段を駆け上り、長い廊下を突き進み、見当たる限りの扉を開ける。彼は、らっだぁは玉座の間の扉前にいた。
「らっだぁ!!!!」
「……はは、やっぱりお前が来るのかよ」
乾いた笑いをこぼしたあと、彼は俺から視線を外し扉に手をかけた。終わりだ、と小さく呟いて。
お願いだ、間に合っててくれ……たらこ!!
ギィィ…と扉が重たい音を鳴らしながらゆっくりと開く。そこには玉座に座る皇帝。そして──
「……らっでぃ!?」
帝国の同盟国であるakagaminの総統、及びらっだぁと旧知の仲である『赤髪のとも』。
「………と、も、さん…?」
「間に合ったんすね!?ともさん!!」
「うん!ぐっちもお疲れ様〜!」
「ぐちつぼ俺にも感謝して」
「たらこよくやったぁ!!!!」
「…ぐちつぼさん!!あの件は…」
「は!?こばこだ!?」
「大丈夫!ちゃんと作成通りに進んだよ」
そう、こばさんに相談していた俺の作戦。それはともさんにらっだぁの罪を無くすよう国家に取り合ってもらうこと。正直akagaminは帝国と近いわけではなく、中々に時間が必要な所をらっだぁ達が攻めてくるまでの残り2日でこちらに来て交渉して貰えないかという要請をたらこに頼み、俺達はともさんが来るまでの時間稼ぎをする役割だった。
その作戦は見事に幸をなし、らっだぁが死刑になることはなくなった。
「……じゃあ、もう戦う必要ないってこと…?」
「そういうこと!あー、マジ疲れたわ〜!!」
「らっでぃ、きょーさん達に伝えに行こう!もう戦う必要ないんだよって!」
「……うん…ぐちつぼ、ともさん、こばこだ、たらこ…ありがとう…」
「ごめんね、俺らっでぃがそんな風になってるって知らなくて…」
らっだぁは半泣きのままともさんに手を引かれ城門へ向かう。その後ろを疲弊しきった俺とたらこがずるずると着いて行った。らっだぁとともさんによりこの戦いは終止符を打たれた。らっだぁの無罪を知った彼らは涙を流し、くずおれていった。その様子を穏やかな顔で見守るこばこだとぶるちゃん。そして大の字で庭園に寝転ぶ傷だらけのげんぴょん焼きパン。全員もれなく顔に疲労が浮かんでいたけれど、同時に満足そうな表情でもあった。
「そういえば、なんでぶるちゃんさん僕のこと庇ってくれたんですか?」
「…んー、ほんとは俺こばさんがぐちつぼ達と組んでたの知ってたんだよね。なんか怪しくて尾行したから」
「えっ」
「でも着いてった先でこばさんのらっだぁへの気持ち聞いて、俺はこれ止める資格ないかなって思ったから。あと単純にスパイみたいなのかっこいいし」
「えぇ…」
「ともさん、ほんまなんか。らっだぁがもうあんな扱い受けなくて良いって…!!」
「ラダオクン、帰ってくるの…?」
「もう、大丈夫なんだよね?らっだぁ苦しまなくていいんだよね?」
「…何はともあれ、ありがとうございます…俺らの…リーダーを救ってくれて…!!」
「うん、もう大丈夫だよ。よく頑張ったね」
「さってっと…感動は済んだということで!全員お縄に着きやがれぇ!!!」
「「「「はぁ!!??」」」」
その後らっだぁ、運営、ら民は国家反逆罪で逮捕された。だが原因は英雄に対する不当な扱いによるものであるということを踏まえ、懲役3年という国家反逆罪史上最も軽い罰となった。
「ぐちつぼー」
「…なんだよ」
「いや?別に。ただ暇だっただけ」
ケタケタと憎たらしく笑う彼はかつての英雄、かつての囚人、現在の俺の後輩、らっだぁだ。釈放後、運営は以前と同じく士官学校に勤務し、ら民は士官学校の講師をやったり、国の軍隊に入ったり…まぁ各々好きなように生きている。その中でらっだぁは刑務官になることを選んだ。何故その道を選んだのかを教えてはくれないが、多分俺のおかげだろうな!!
こばさんとは未だに連絡を取っていて、時々会いに来てくれたりもする。そのときにらっだぁが居合わせると色々と面倒なのだが…。こばさんは現在教師をしている。体育などの教師ではなく、ちゃんと座学の教師。イメージとピッタリで、彼自身性に合っていると言っているから満足した日常を送れているようで良かった。
そしてレウさんから聞いた話だと、みどりくんは昔俺の事を問題児だのなんだの言っておきながら、特別優秀であると褒めてもいたという。本当にあの人ツンデレ……言ったら多分死ぬほどいたぶられるんだろうけど。
あの時運営がいくら頼んでもらっだぁを解放しなかった国家がともさんには二つ返事で頷くのだから、ともさんすごい!とたくさんの人が褒め称えていた。だが後々あの時ともさんは、「らっだぁを釈放しなければakagaminは帝国に牙を向ける。俺が要請すれば、日常も、ぴくとはうすも、WTもきっと乗っかってくれるはずだ。どうする?」と恐喝めいたことを皇帝相手にしたことを聞いた。俺と一緒に聞いていたたらこと絶対にともさんを怒らせないようにしようと固く誓ったのもいい思い出だ。
「ねぇこの作業いつまでやんなきゃいけないの〜?刑務官って囚人見張ってるだけかと思ってたぁ」
「うっせぇ!!文句垂れてねぇで手動かせ!!」
「は?動かしてますけど!?目見えてないのかな!?」
「うるせぇぞらだぐち!!!!」
先輩から拳を1発食らったところで双方黙る。俺が殴ろうとすると避けるくせに先輩からの暴力は甘んじて受けるのだから憎たらしい。
「らっだぁ、ぐちつぼ、客だ」
「客?」
「あぁ。…まぁ、行けばわかる」
そう言われ、机上の書類を片付けないまま2人で応接間へ向かった。俺がノックをして、ドアノブに手をかけるが返事がない。そろそろと扉を開けると、パァンとクラッカーの弾ける音が響いた。
「おう遅いぞ、いつまで待たせんねん」
「ソウダヨ、何してたノ」
「おめでと〜ぐっちぃ〜!!」
「おめでとうございますぐちつぼさん、お久しぶりです」
「おめ〜〜〜〜〜!!!!!!!」
「…何人いんだこれ…」
「えーと…ともさん、運営4人、こばさん、ぶるちゃん、たらこ、げんぴょん、焼きパン…俺らいれて12人」
「よく入ったな…」
「まっ、とにかく…」
らっだぁが俺をすり抜けて、俺と向き合う形で目の前に立つ。
「誕生日おめでとう、ぐちつぼ」
「……へ…?」
そういえば、今日は9月3日──俺の誕生日だ。俺でさえ忘れていたのに、みんなは覚えててくれたのか。感動で辺りを見渡すことができていなかった俺は感謝を伝えるために前を向いた。
それと同時に顔面にベチャッと不快な感触と口に入ってくる少しの甘み。…まぁ、お決まりのパイを投げつけられたわけだが、その勢いが強すぎて俺ごと吹っ飛んだ。投げたのはらっだぁらしく、起き上がった時に死ぬ程笑ってた。本当に許さない。
「らっだぁテメェゴラァ!!!!!!!!!!!!!!」
「きゃー!こわぁーーい!!」
「またやってるね…」
「飽きないなぁ」
「ねぇケーキ食べようよ〜」
そんな、平和な世界に生きている1人の刑務官、そしてみんなに希望を与えた英雄の生まれた特別な日。それを理解していないのは本人のみ。彼は、自分のした事がどれだけ偉大であるかなど知る由もないのだ。
END
あとがき
この度は「羨望と諦念と」を読んで頂きありがとうございました!!ここまでの長編を書いたのは初めてで、所々おかしな場所があったかもしれませんが寛大な心で見逃してくれると幸いです……
ちなみにタイトルの『羨望』はgtがrdに抱いた憧れ、『諦念』はrdが監獄の中で死ぬことを受け入れて(諦めて)しまったことです。
こばさんは元々起承転結決める時から出るの決定してたんですけど、ぶるちゃんは完全に筆者の推しだから出演してもらいました………すみません。
はじめは本当にこんなストーリー書きたいな〜くらいの軽い気持ちで書き始めたのでこんなに長くなるとは想定してませんでした。なんなら起承転結決め始めたのおいよさんが出た辺りなんで承まで書いてから決めたっていう。オチにずっと悩んでて、オチを書くのに3日くらいかかりました(嘘ですもっとかかってました)。
最後のともさんが出てくる場面、ぺいんとさんとぴくとさんも出す予定だったんですが、それだとボリューミー過ぎるので回想としてともさんが脅す際に少し登場してもらいました。
ちなみにこの作品の総文字数は2万文字くらいでした。本当にはじめての長さだ…
色々と言いたいことはあるのですが、とにかく書ききれて良かったです!本当にここまで見てくださってありがとうございました!
これからも作品投稿はしていきたいと思いますが、『羨望と諦念と』はこれで完結になります!次の作品も見てくれると嬉しいです!!何度もしつこいようですが、本当にありがとうございました!!