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コメント
1件
寺島あおいです🌷 第23話、読み終わりました……。 近衛たちが黄金の光に包まれて帰還したあと、反省のフリしかできなかった者たちが地獄に取り残される──この対比が痛すぎました。特に「頭では理解していても心が拒絶する」という、人間のどうしようもない弱さがリアルで。最後の絶叫、届くはずのない空に向かって叫ぶしかない絶望感が、文章からひしひしと伝わってきました。この終わり方、胸が締め付けられます……。
赤い空が、あざ笑うように俺を見下ろしている。「嘘だ……嘘だろ近衛ぇぇぇっ! 帰せ! 帰してくれよおおおっ!」
血の混じった泥に顔を擦り付けながら、俺——神条蓮は、真っ暗になった画面を狂ったように殴りつけた。
画面にはもう、何の通知も届かない。
あのムカつく近衛の顔も、豪華な料理の画像も、何も映らない。ただの冷たい黒いガラス板だ。
アプリが、消えた。
俺たちをこの地獄に繋ぎ止めていた最後の糸が、プツリと切り捨てられたのだ。
「なんでだよ……! 白石や佐藤たちは帰れたじゃねぇか! 遠藤だって帰れただろ!?」
後ろを振り返っても、もうそこには俺たちを守ってくれる「盾」も「戦力」も存在しない。
自分の罪を認めて泥をすすり、まともなスキルを手に入れた12人は、数日前に黄金の光に包まれて消えてしまった。
残されたのは、俺を含めた「反省のフリ」しかできなかったゴミくずだけだ。
「おい神条! どうすんだよこれ! 白石たちがいなきゃ飯も獲れねぇぞ!」
「寒いのよ! 神条くん、その微風でもいいから早く出しなさいよ!」
鬼塚が胸ぐらを掴んできやがる。姫宮は髪を振り乱して俺の顔を引っ掻いてくる。
かつてスクールカーストの頂点で俺の顔色を伺っていた取り巻きどもが、今や飢えと恐怖で狂った目で俺に襲いかかってくる。
「うるせぇ! 触るな! 俺のせいじゃない! 全部近衛が悪いんだ!!」
俺は鬼塚を突き飛ばした。
だが、俺の手に宿る能力は『体温を0.1度上げる微風』だけだ。鬼塚を押し返す力すらない。
鬼塚の『10分間瞬きを我慢して鼻毛が1ミリ伸びる能力』も、姫宮の『爪を半透明にする能力』も、担任の黒岩が泣きながら生み出す数枚の1円玉も。
こんなクソみたいな能力で、この世界を生きていけるわけがない。
俺たちは、知っていたのだ。
心から近衛に謝罪し、自分がやってきた苛烈ないじめと向き合えば、能力が覚醒して地球へ帰れるかもしれないという「ルール」を。
だけど……できなかった。
「俺が……俺が悪いっていうのかよ……! 陰キャの近衛がいじられるのは当たり前だろ! 演出だよ、クラスを盛り上げるための!!」
頭では理解していても、心がどうしても拒絶する。
プライドが、自分の罪を認めることを許さない。
「助かりたいから」吐き捨てる偽りの「ごめんなさい」は、あの近衛の『森羅万象』の理に見透かされ、一度だって光を宿すことはなかった。
自分たちの心がどこまでも腐りきっていて、反省すらできないという残酷な現実。
ドシン……ドシン……。
大地が不気味に揺れ始めた。
「ヒッ……!? 来た……また来たぞ!!」
地平線の向こうから、漆黒の煙を撒き散らす巨獣の群れが現れる。
以前なら白石の雷剣が一閃し、佐藤の指示で退けていた未知の化け物たちだ。
だが、今の俺たちには、何の盾もない。
「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ! 助けてくれ警察! お父さん! 誰か!!」
黒岩担任が1円玉を撒き散らしながら真っ先に逃げ出す。だが、巨獣の巨大な足が容赦なく降り注ぐ。
「近衛ぇぇぇぇっ! 悪かった! 俺が悪かったからああああっ!」
俺は涙と鼻水と泥でぐちゃぐちゃになった顔を上げ、届くはずのない赤い空に向かって絶叫した。
一度味わわされた、あの地球での「24時間の一時帰還」。
実家で食った温かいラーメンの味。ふかふかのベッドの感触。
あの温もりを思い出せば出すほど、今足元に広がる冷たい泥と、迫り来る死の恐怖が、俺の精神をギシギシと粉砕していく。
「帰せ……地球に帰せよぉぉぉっ!!」
声は虚しく暴風に吹き消された。
遠く次元の彼方では、近衛が世界中の喝采を浴びながら、華やかな光の中で笑っているのだろう。
俺たちを完全に「忘れた」状態で。
ドゴォォォンッ!!
目の前が、巨大な影で覆い尽くされた。
一生終わらない地獄と、永遠に解けない絶望の中で、俺の惨めな叫び声だけがどこまでも響き渡っていた。