テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「、、、、、ん。 」
眩しい。
重い瞼を上げ、起き上がる。
カーテンの方を見ると、朝日が差し込んでいた。
そのせいかと思いつつ、隣に目をやる。
見るからに柔らかそうな髪。どことなく幼い顔立ち。
長い睫毛が、陶器のような白い肌に影を落としている。
「んう、、、、、すち、、、、、」
寝言で自分の名前を呼ばれ、自然と口角が上がった。
「ほんと可愛い、、、、、」
昨日は結構激しかったから、疲れたんだろう。
頭を優しく撫でると、みことは穏やかな微笑みを浮かべた。
その様子がますます愛おしい。
布団に潜り込み、そっと彼を抱き寄せる。
みことの身体は、思ったより暖かい。
足を絡ませ、もう一度目を閉じる。
今は、この幸せな時間を噛み締めていたかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーーすちくんっ!」
大好きな人の声がした。
「、、、、、みこちゃん? 」
起き上がって隣をみる。
と、みことがベットに座り込んでいた。
さっきまで裸だったのに、今はシャツの上に胡桃色のベストを着ている。
「すちくんやっと起きた!」
「あ、ごめん待たせた?」
全然平気、と無邪気に笑う彼。
その笑顔を見るたびに、きゅうっと何かが締め付けられる。
「っていうかすちくんっ!」
何となく、言われることに予想はついていた。
「なあに?」
彼の隣に座り込み、少し意地悪な笑みを浮かべる。
みことは頬を真っ赤に染めながら抗議した。
「昨日、、、、、やりすぎだってっ、、、、、!」
「ごめんごめん〜」
「それ絶対思ってないやろ! 」
「え〜でも、気持ちよかったでしょ?」
「っ、、、、、!」
図星なのかさらに頬を赤く染め、ぽかぽかと俺を殴るみこちゃん。
「可愛い〜」
からかいなんかじゃなくて、本当に。
彼の頭を優しく撫でる。
髪の毛は ふわふわで、やっぱり柔らかかった。
「 、、、、、ッ もう!俺行くからねっ!」
みことは、顔を真っ赤にしたまま立ち上がった。
ーーあ。
そう思ったのも一瞬で、俺の手が軽く空をきる。
分かってたはずなのに、心が小さく揺れた。
ベット近くに置いてあったリュックを背負い、みこちゃんがこっちを振り返る。
「また連絡するから!すちくんも風邪引かんようにね!」
「、、、、、はーい」
いってらっしゃい、とひらひら手を振る。
パタンと音を立て、みことはドアの向こうに消えていった。
「、、、、、いっちゃったか」
誰もいない部屋に、小さな呟きが響く。
さっきまでの暖かさは、もうどこにもなくって。
残ったのは、綺麗な笑顔の面影だけだった。
小さくため息をつき、ベットに倒れ込む。
そして、にしても、と笑みをこぼす 。
みこちゃんはやっぱり優しい。
だって、ただの浮気相手の体調まで心配してくれるんだから。
ーーみこちゃんと俺は付き合ってない。
みこちゃんの彼氏は、同級生の暇72という奴らしい。
そいつはどうやらクズ野郎で、他の女と浮気を繰り返してるんだとか。
立ち上がって自分のバックを漁る。
煙草を取り出すと、俺はそのまま火をつけた。
みこちゃんの前で 吸ったことはない。
嫌われたくないし、体に良くないから。
けどやっぱり、一人だと吸ってしまう。
このホテルは禁煙ではなかったはずだ、多分。
思いっきり吸い込み、吐き出す。
こういうことをするにつれ、みこちゃんは徐々に自分のことを話してくれた。
彼氏が浮気性なこと。
でも大好きだから許してしまっていること。
そのままずるずる付き合っていること。
寂しさのあまり、自分も浮気したいと思ったこと。
だから、俺を呼んだこと。
本当に少しずつだったけど、デリヘルで出会った身としては嬉しい。
いつから好きになっていたかなんて、もう分からない。
見た目も性格も話し方も、気づいたら全部好きになってた。
今までたくさんの人と体を重ねてきた。
けど、人を本気で好きになったことはない。
そこに恋愛感情はないし、持つべきじゃないのは理解していた。
鏡に映る自分を見る。
「ッw、、、、、 」
かなり情けない表情をしていて、思わず笑ってしまう。
ただのセフレ。 ただの浮気相手。
分かっているのに、彼と会うほど好きになっていって。
本当は今すぐ抱きしめたい。
キスをして俺のものにしたい。
いつもの深いのじゃなくて、優しくて甘い方。
ねえ、みこちゃん。
煙草を吸い殻に押し付け、そっと目を閉じる。
俺、好きだよ。
君のことが、好き。
いつも言ってることだけど、嘘じゃないよ。
本当に愛おしくて 、大好きで、
ーーーーーーーーーーーーー
目の前の君がふわりと笑う。
「すちくん!今日はどこ行く?」
ーーーー愛してるよ。
ちくり。
胸の痛み気づかないふりをして、俺は微笑みを浮かべた。
「、、、、、どうしよっか?」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!