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第7話「軋轢」の中の一文を変更しました。結構気に入ってたセリフだったのですが、私の語彙力では繋げられなかった…ちょっと変わっているので、お手数ですが、一度読み返して頂ければ幸いです。すみません🙇
「すいません!遅れましたあっ!」
かなり走ったが微妙に間に合ってない。落ち着け俺。いつも通り、いつも通り笑え。
いつも遅刻する方じゃないから、何があったのかと心配するような、空気が流れている。
元貴を除いて、
「若井が遅刻なんて珍しいじゃん、どうしたの?」
涼ちゃんがいつも通り聞いてくる。俺と一緒に来たって記憶が消えてるのか?アオキは今出てきてなさそうだ。何にしろ、元に戻ってよかった。
元貴からだけは探るような視線を感じる。
やばい、何かバレた…?
元貴はまだこちらを見ていたが、時間を気にしたのか、会議が始まった。俺はこの後元貴に何を聞かれるのかが怖すぎて、またも冷や汗が止まらなくなった。
思っていた以上にスラスラと会議は進んでしま い、 半分諦めながらもこそっと帰っていこうとしてみたが、思った通り、元貴に捕まった 。
「珍しいじゃん、遅刻なんて。 何してた?」
やっぱりそのことか…お小言くらいで済んだらいいなぁ…、やべえ、何て言おう、でも涼ちゃんが覚えてないから何言ってもいいんじゃね?
「いや前の仕事終わった後さ、 まだ時間あったから寝ちゃおうと思って。 そしたら思った以上に寝過ぎちゃってさ、」
「どこで?」
すかさず元貴の鋭い声が飛ぶ。どこで? そんなの聞く必要あるか?
元貴は真っすぐにこちらと見据えている。この嘘がもうとっくにバレてんじゃないかとヒヤヒヤして、きゅっと表情をひきしめた。
「…そのまま、楽屋で。」
「その楽屋ってここの本館だったよな、…俺この会議の10分前くらいにさ、別館歩いてるお前と涼ちゃん見たんだけど。あれ誰?」
あっ…
気づかなかった。 そうか、あの時もう元貴着いてたんだ。
多分元貴が見たのは俺がスズカを別の場所につれていってるとき。一人じゃ歩けなさそうだったから肩をかしながら行った。
まさか、見られてるなんて思わなかった。 どうしよう、でも誤魔化すしかない。 スズカは元貴にバレたくないって言ってた。
元貴に本当のことは話せない、
「..俺、今日別館行ってないけど、元貴の見間違いじゃね?」
スズカがいたのは別館…そもそも俺が別館に行ってなかったことにしちゃえばいい。
「…いや、あれは絶対お前と涼ちゃんだった。 なぁ、何してたんだよ。」
「なんもしてねえって!そんな疑うなら涼ちゃんに聞いてみろよ。」
涼ちゃんが話すはずがない、だって記憶がないんだから。多分、アオキと入れ替わってた間とその前後が無くなってるんだろう。
元貴の釈然としない顔を見て、苦しくなる。
ごめん、元貴、全部終わったら話すから。
と、その時、マネージャーが元貴を呼んだ。元貴には申し訳ないが、話が終わってホッとした。 スズカは大丈夫だろうか。すぐ様子を見にいこう。
元貴が出ていったのを確認して、少し早足でスズカの方へ向かった。
別れた場所までいくと、小さく丸まって、うずくまっているスズカを見つけ、すぐに駆け寄った。 その顔は苦しさで歪んでいた。
「ひ、ろと…!アオキが、りょうかを攻撃してる…!もときとっ、り、りょうかが…危ない…」
スズカは右の胸の辺りを押さえながら、荒い呼吸をしていた。
「アオキが、!?スズカは?どうしたんだよ!」
「共鳴…して、る…りょうかと、。りょうかが今、苦しんでる…」
共鳴?双子だから…?ってことは涼ちゃんも同じように苦しんでるってこと?
「お、俺は大丈夫だから…りょうかを、たすけて…、」
「…無理、そりゃ涼ちゃんのこともめっちゃ大事だけどさ、スズカ置いてまで行くのは違うよ。…それに、涼ちゃんには元貴がいるし。」
スズカが辛そうに、でもふわりと笑った。しばらくすると痛みは治ってきたようで、それと同時くらいにマネージャーから、涼ちゃんが病院に運ばれたと連絡があった。今は安静にしていて、この後諸々の検査があるらしい。
スズカは一旦俺の家に帰らせて、すぐに病院へと向かった。
道中、苛立ちが抑えられなかった。俺らの大事な大事な、宝物のような涼ちゃんを傷つけたこと、元貴の愛しい人を奪って不安に陥れたこと、そして、スズカを苦しめていること、
どこに苛立ちを向ければいいのかわからなかった、ただあのアオキという奴に怒りが込み上げた。
同時に、このまま何かが壊れていってしまいそうで、心底不安だった。
病院が近づくにつれ、嫌に鼓動が速くなっていった。
涼ちゃんが無事じゃなかったらどうしよう、 大丈夫かな、
病室に入ると、元気そうに元貴としゃべって、いる涼ちゃんを見て、一気に肩の力が抜けた。
「あ、若井!ごめんねえ、心配かけちゃって、」
「ほんとだよ、まじでびっくりした。もう大丈夫なの?」
「うん、急に胸が痛くなってきて、息が苦しくなってきてさ、たまたま通りかかったスタッフさんが救急車呼んでくれたんだけどね、そん時にはもう治って元気だったんだよね。ほんと、何だったんだろ、」
スズカとおなじだ…。 スズカも胸を抑えて苦し そうにしていて、。スズカによると、あれはアオキのやったことらしいけど、アオキは何を考えてるんだ?涼ちゃんとスズカは、これから大丈夫なのか?
それと、元貴から何やら厳しい視線を感じる。お前さっきまでニコニコ涼ちゃんとしゃべってたじゃねえか。まぁあんな別れ方したし…仕方ないか、
元貴が何やら外に出ろというように目線と顔で促した。何か聞かれるんだろうなと半ば腹を括って、促されるままに立ち上がった。元貴が何を聞こうと、俺は何も言えない。ごめんな、元貴、
「ごめん涼ちゃん、若井と話してくる。じゃあね、お大事に、」
そう言って優しく、腫れ物に触るように涼ちゃんの手を包み込んだ。その目は慈しみに溢れていて、その気持ちは痛いほどにわかっていた。胸の辺りがチクリと少しだけ痛んだ。
廊下はシンと静まり返っていて、まるで誰もいないみたいだった。ここじゃあ邪魔になってしまうから、と病院の外のちょっとしたスペースに行った。
「…おい、若井、お前今回のこと分かってんだろ?」
「…何のこと?」
何となくわかってるけど、わかってるけどしらばっくれておく。元貴から浴びせられる、責めるような目が痛い。
「しらばっくれんなよ、スズカのことだよ」
「…っ…、やっぱわかってんだ…」
「そうだよ、今どこにいる?」
「知らない。てか知ってどうすんの。」
少しの間、静寂が流れた。その時、元貴の目がドロリと暗く沈んだ気がした。
「…消す」
「は?お前、それ本気で言ってんのっ」
ぐっと視界がゆれて、胸ぐらを引かれた。 元貴の鬼気迫るような顔をみて、ひくりと喉がしまった。
「ああ、本気だよ。だって、涼ちゃんがついさっき死にかけたのだってあいつのせいじゃないか!」
「それは違うっ!」
俺の突然放った鋭い声に元貴は少し目を見開いた。
くそ、くそ…違うんだよ、元貴…!それはアオキが…
「どう、違うんだよ。」
「…言えない…」
「っ!」
ああ、もういっそのこと、全部話せてしまえたらどれだけ楽だろうか。でも、出来ない。したくない。それは、スズカの思いを無駄にすることになる。
…これまで、古い付き合いだから、元貴と喧嘩したことなんて山程あるけど、こんなに感情的になる元貴は久々に見た。元貴だって俺にキレたところでどうにもならないことはわかってるはずだ。…?なんか、ちょっと変だ。
「…なぁ、元貴今日なんかおかしいんじゃね?いつもそんな感情的にならねえじゃん。」
「…俺さ、涼ちゃんのこと好きなんだよ。」
まさか今、元貴の口からそのことが出てくるとは思っておらず、少し驚く。
もちろん、…知ってるよ。
「出会った時からずっと好きでさ、最近特に涼ちゃんを見てると、愛しさで胸が痛くなる。もう俺涼ちゃんがいなくちゃ生きていけない。」
うん、それも知ってる。
誰よりも近くで見てきたんだから、俺が知らないわけがないだろ。大丈夫、きっと全部終わった後には幸せが訪れる。それまで、ごめんな。
でも、スズカのことは誤解しないで欲しい。お前らのために今、めっちゃ頑張ってんだよ。ほんとに。頼むから消すなんて絶対言うな。
何も言わない俺に痺れを切らしたのか、元貴はすっと背を向けて歩き出した。俺はその、下を向く小さな後ろ姿から目が離せなかった。
更新遅くなりました…!!すみません!🙇
やっぱ佳境に入ってくると、大変ですね…