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「俺は准さんと職種が違うし、職場も見てないから何とも言えませんが、上司がやりにくい人だと仕事やりにくいですよね」
「あぁ、お前エンジニアなんだな。名刺に載ってた会社、調べたよ」
「えぇ、社畜です」
自虐的な言葉が返ってきたが、自分も似たようなものだ。父に言われるまま今の会社に入った。縁故採用と思われてもおかしくない。だから余計、がむしゃらに働いている。
准はテーブルに伏せて嗚咽した。酔って感情が高ぶってしまっている。
「ちょっ准さん、寝るならベッドに行きましょう。ほら、肩貸しますんで」
「うーん……」
完全にダウンした准は涼に引き摺られ、寝室へ入った。そこでベッドに寝かされる。
「前も言った気がしますけど、チキンでも童貞でも、准さんは良い人ですよ。だから泣かないでください」
涼に言われて気が付いた。俺泣いてる。
仕事の不満や愚痴から感極まるとか、新人の頃を思い出す。……でも仕事をこなせるようになったからこそ出てくる不満もあるかな。
「はい、ティッシュどうぞ」
「う、さんきゅ……」
横たわってると、自然と全身の力が抜けた。
「准さん、約束します。何があっても、俺は貴方の味方です」
「……?」
涼は、穏やかな表情で准を見下ろしていた。
「俺と違って、貴方はひとりじゃない。周りにはたくさん支えてくれる人がいるでしょ? でもそれは、准さんが周りを支えてきたからこそできた関係性ですよ。もっと自分に自信を持ってください。恋愛だって例外じゃない」
優しい顔に、優しい声。彼にしてはよくできた慰めかもしれなかった。でも、やはりひとつ引っかかることは。
「涼……お前は、ひとりなのか」
「ひとりです。俺には、あんまし味方はいませんね」
「そんなことないだろ」
「そんなことあります」
「ない。俺がいるだろ。お前はひとりじゃないよ」
自分でも不思議なぐらい、強く言いきった。涼は唖然としていたけど、やがて可笑しそうに吹き出した。腹を押さえて、地声を押し殺している。
「あははっ! 准さんは本当に優しいですね」
「冗談で言ってるわけじゃないぞ。俺はわりとマジで……」
「あぁ……はい、ありがとうございます。そんな風に言ってもらえて、俺もわりとマジで嬉しいです」