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## 第42話:『忘却の都市、再び』
深い霧に包まれたガドルフの工房は、かつて旧大戦の最前線で兵器開発を行っていた地下ドックそのものだった。ゼストの整備班は、到着するなりリンを筆頭にガドルフの弟子たちと合流し、ウイングエックスの解体作業に着手していた。
「……おいおい、レフト。お前、よくもまあこれだけ呪われた機体をここまで維持してくれたものじゃな」
作業を見下ろすキャットウォークの上で、ガドルフは杖を突きながら、ゼストの艦長――レフトの名前を呼んだ。旧知の仲である二人の間には、長年連れ添った者だけが持つ独特の空気がある。
「すまない、ガドルフ。だが、あの少年(ゼロ)とウイングエックスがいなければ、我々はここまで来られなかった」
「ふん、綺麗事を。……おい、小僧(ゼロ)!」
ガドルフの鋭い怒声が、下で右腕のフレームを外していたゼロに飛んだ。ゼロは顔を上げ、眉をひそめる。
「なんだよ、頑固ジジイ。こっちは忙しいんだよ」
「忙しいのはこっちのセリフじゃ! 言っておくがな、前にお前が壊したあの『リフレクター』……あれを根元からひしゃげさせたツケは、とんでもなく高いぞ! 旧大戦の最高機密パーツじゃぞ? サテライトを捨ててディバイダーに換装するにしても、エネルギーの変調を行うためのコアとなる『超高密度マルチリンク・コンデンサ』が決定的に足りん!」
「コンデンサ……? そんなもん、そこらのジャンク屋じゃ逆立ちしたって手に入らねえぞ」
「だから調達しに行ってもらうんじゃ。場所は……ここへ来る直前、お前さんが通ってきた廃都市『メトロポリス』じゃよ」
その名前を聞いた瞬間、ゼロの背筋に冷たいものが走った。
メトロポリス。ガドルフの工房にたどり着く直前、ミラと共にゼストに拾われるよりも前――ゼロが初めてあの「ゼロ・システム」の暴走を経験した、あの不気味な忘却の都市だ。
「……あそこへ戻るのかよ」
「そうじゃ。あそこは旧大戦時、エネルギー研究のハブ都市だった。放棄されて久しい廃都市だが、地下の隔離シェルターにはまだ生きたパーツが眠っているはず。……ただし、あそこにはルカス軍の息がかかった『漆黒のガンダム』――ノワールレイスとはまた別の、不気味な黒い機体がうろついているという情報もある。ウイングエックスが使えん今、どう動くかはお前さん次第じゃ」
ゼロはウイングエックスを見上げた。仮補修した右腕はついたものの、システム調整のために今は絶対に動かせない。
「……ミラとノアは、ここに残ってもらう。ノアの精神状態も不安定だし、あそこへは連れていけねえ。セレス、ジュード。あんたたちの機体を借りるぜ」
「分かったわ。ヴィヴァーチェの調整は終わっている。行きましょう、ゼロ」
「シャドウエッジもいつでも行けるぜ、新入り。あの不気味な街のデートに、俺も付き合ってやるよ」
数時間後。マゼンタのヴィヴァーチェと、光学迷彩の粒子を微かに纏ったシャドウエッジは、濃霧を抜けてメトロポリスの境界へと足を踏み入れていた。
空を突くような高層ビル群はすべて斜めに傾き、ガラスの割れた窓がまるで無数の死んだ魚の目のようにこちらを見下ろしている。街全体を支配する、生物の気配が一切ない不気味な静寂。地面には、ゼロが以前ここで引き起こした「暴走の痕跡」――ゼロ・システムに意識を乗っ取られ、敵味方の区別なく周囲を破壊し尽くした際の大地を抉るような亀裂が、今も生々しく残っていた。
「……ひどいツラした街だ。思い出すだけで吐き気がしてくるぜ」
ゼロは、ヴィヴァーチェのコクピットの中で小さく毒づいた。
ウイングエックスのコクピットは比較的幅があり、二人乗りも考慮された設計だったが、このヴィヴァーチェは完全な「一人乗りの実戦機」だ。戦闘機のようにゴツゴツとした計器類が四方に突出し、内部の照明はやけに暗い。
その狭い空間に、ゼロはセレスのすぐ後ろに密着する形で同乗していた。お互いの肩や膝が嫌でもぶつかり合い、密閉された空間にはセレスの微かな香りと、ゼロのオイルの匂いが混ざり合っている。
「……ちょっとゼロ、少し右に寄って。レバーが引きにくいのよ」
「無茶言うなよセレス! こっちだって動くスペースがねえんだよ。シートの金具が腰に刺さって痛ぇし……お前、意外と骨張ってんだな」
「なっ……! バ、バカじゃないの!? 女の子に向かってなんてこと言うのよ! 窮屈なのはお互い様でしょ、我慢しなさい!」
セレスの耳まで真っ赤になっているのが、暗いコクピットの計器の光に照らされてよく分かった。
『おーいお二人さん、暗闇の狭い部屋でイチャつくのは勝手だが、通信は繋がってんだよ。ごちそうさまでーす』
回線越しにジュードのニヤニヤした声が響く。
「ジュード!! ふざけたこと言ってると、本当にシャドウエッジの足を引っ掛けて転ばせるわよ!」
『へいへい、怒るなってエース様。……ほら、冗談言ってる場合じゃなくなったぜ。見ろよ、センサーに異様な熱源だ』
ジュードの声が鋭さを増す。
メトロポリスの中央広場。かつてゼロがウイングエックスを見つけた場所とは違う、この街の象徴である中央議事堂の前に、それは佇んでいた。
ノワールレイスとは異なる、禍々しい刺突状の装甲を持つ「漆黒のガンダム」。
ルカス軍がメトロポリスの遺産を回収するために配備した、もう一機の闇の眷属だった。
「……あいつ、俺たちに気づいてやがる」
ゼロの言葉と同時に、漆黒の機体のモノアイが怪しく赤く発光した。
**次回予告**
メトロポリスの暗がりに潜む、もう一機の漆黒のガンダム。
狭いコクピットの中で、ゼロとセレスの呼吸がシンクロする!
「セレス、あいつの動き……ゼロ・システムの予測パターンと同じだ! 右から来るぞ!」
動けぬウイングエックスの代わりに、ヴィヴァーチェのビーム・サイズが闇を切り裂く!
そして、崩壊する地下シェルターの奥で、ゼロが掴み取る再誕への最後のパーツとは!?
次回、『漆黒の機体、再戦』
**「この狭苦しい場所からでも、俺たちの未来は見えてんだよ!!」**
コメント
1件
あー、これこれ!メトロポリス編キター🔥 ガドルフとレフトの旧知の間柄、渋すぎるぜ…。それにしてもゼロとセレスの密着コクピット、えっちすぎて草。ジュードのニヤニヤ回線乗りが仕事しすぎだろ(笑) 漆黒の新型ガンダム、モノアイ発光で「お前らもう死んでるぞ」オーラ出してんのヤバい。動けないウイングエックス、ヴィヴァーチェとシャドウエッジでどう戦うのか続きが気になりすぎる…!