「絃歌ぁ。プリントあるから、ドア開けて」
放課後、絃歌へのプリントを届けるため絃歌の家まで来ていた。
「…また来たのかよ。朝も夕方も、飽きねぇな。」
「俺ぐらいしか絃歌に近寄らないしね。」
そう言ったが、俺は少しそれが良いと思っている。
絃歌の優しい所などの普段からでは見えないところは、俺だけが知っていればいい。
(って、俺は絃歌の彼女かって。メンヘラかよ。 )
たまに、俺の中にはそんな考えがよぎる。
なんでこんな感情が出るのかは、分からない。
「で、プリント。早く渡せよ。 」
「うん。はい、これ。」
プリントを渡したとき、絃歌の後ろ側から女の人がでてきた。
少し乱れた服装に、とかれた髪。
茶色のロングヘアの可愛らしい女性だった。
「絃歌君、どうしたの?その子、お友達?」
「ばっ、お前奥に居ろって言っただろ」
俺でもこの状況は理解出来る。
この茶髪の方は絃歌の恋人か何かなのだろう。
それで、家に遊びに来た時に俺に邪魔された、という訳だ。
絃歌の恋人、そう考えた時少し胸が痛くなった。
胸が痛くなるだなんて、恋…?
いや、まさかな。
絃歌に恋だなんて、思う節が…ありすぎる。
なんてことを考えていると、茶髪の方が寄ってくる。
俺は咄嗟に、その場を去ることしか出来なかった。
頭の中では、ふわふわしたことばかり考えていたのに、胸はずっと痛い。
太い針が刺さっているようで、中々抜けない。
家へと走りながら向かう時、涙が頬をつたったのが分かった。
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