「てか、あやか、何をやらかしたん。」
飲んでない三人で、てくてくと夜道を歩いて駅へ向かう。
「セクハラおっさんに酒をぶっかけた。」
「それは…。」
おっさんが悪いが、あやかもひでぇ。
「高氏がだいぶ庇ってくれてたんだけどね。私が耐えきれなかったー。」
けらけら笑うあやかは強いと思う。
「りょーちゃんがね、高氏つけてくれたみたい。二人で話し合って、未成年組も保護者がいるし、紅一点の私にも大人が欲しい。『僕そういうのはよく分かんないから、お酒飲むのに徹する!』って、君らの方に行ったみたいよ?」
確かに、俺らは一滴たりとも飲まずに済んだ。
「『女の子に何かあっちゃ、ご両親に合わせる顔がないから』って、高氏によーくよーく言い聞かせてあって、だいぶ助かった。本当、感謝。」
そんな話を、アイツはいつしてたんだろう。
「りょうちゃん、大丈夫かな。」
「高氏が連れてったし、大丈夫でしょ。りょーちゃんが唯一頼れる大人なんだから。」
あぁ、そうか。
俺らは、『守られて』たんだ。
あんなに頼りないと思ってた『あいつ』に。
俺らに大人の汚い所を見せないように。
バンドがちゃんと売れるように。
「コミュ力お化けは、仕事したみたいね。」
元貴のメールを覗き見したあやかが呟く。
「コミュ力お化け。」
「そう、りょーちゃん。じゃ、私こっちだから。」
バイバイと手を振って、あやかと別れる。
「吐くまで飲んで、吐いても飲んで、そこまでして…。」
元貴がスマホを握りしめる。
「アイツ、吐いてたの?」
「一回ね、そばに寄った時に、そんな匂いがした。きっとトイレに行ったあの時じゃないかな。」
何やってんだよ、アイツは。
元貴が見せてくれたメールは、タイアップがほぼ決まったという、マネからのメールだった。
「涼ちゃん。」
口の中で、モゴモゴ呟いてみる。
悪くは、なかった。
コメント
1件
名前呼ぶのに、ここまでかかる誰かさん…なんと面倒な…