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ソロモ……じゃなくて、アパートよ! 俺たちは帰ってきた! よし、やっと到着したな。
でもまずは、この大量の食糧《しょくりょう》をどうするかだよな。
これだけ多いと、運ぶのも大変だし……。うーん、どうにかならないかな。
俺と名取はウーちゃん(オオカミ)たちの背中に乗っている荷物を眺めながら、いい方法がないか考えていた。すると。
「ナオトー! あたしを受け止めてー!」
どこかで聞いたことのある声が聞こえた。
俺が声のした方に目をやると、ミサキ(巨大な亀型モンスターの外装)の甲羅《こうら》の中心と合体しているアパートから、こちらに落下している幼女の姿があった。
メイド服かドレスか分からない服を身に纏《まと》っているその子の黒髪は赤と黒が混ざったリボンでツインテールになっている。
少し尖った耳と普通の人間より少し長い犬歯と黒い瞳《ひとみ》が特徴的な身長『百三十三センチ』の【吸血鬼】。
彼女は俺が最初に出会ったモンスターチルドレン、ミノリである。
しかし、なぜこのタイミングで落下してきたのかは見当もつかなかった。
なんか『緋《ひ》○のアリア』一期の五話で見たことのある展開だな……って、のんきなこと言ってる場合じゃねえ! えっと、もう少し右か? 左か? いや、前か? 後ろか?
あー! 全然分からん! と、とりあえずここに留《とど》まるか。
俺は両手を広げながら、ミノリがここに来てくれることを祈った。
「来《こ》い! ミノリ! 俺の腕の中に飛び込めええええええええええ!!」
「スーパーウルトラグレートデリシャスワンダフル、ミノリダーーーーーーーーーーーーーーイブ!!」
ミノリはそう言いながら、こちらに向かって来た。
「『に○じょう』の『相○裕子』と『干物妹!う○るちゃん』の『う○る』ちゃんかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
俺は、そう叫びながら、ミノリを受け止めた。
俺はミノリを受け止めた瞬間、仰向《あおむ》けで倒れた。
その後、俺の腕の中にある確かな温もりを感じていた。
ミノリは涙目になりながら、こちらに顔を向けると笑顔でこう言った。
「おかえりなさい……ナオト」
俺はミノリの頭を優しく撫でながら、こう言った。
「ただいま……ミノリ」
「もう、今までどこで何をしてたの?」
俺はミノリの小さな手を握りながら、こう言った。
「今回も色んな事に巻き込まれてな。早めに帰るつもりが、かなり遅くなっちまった。すまない」
ミノリは首を横に振りながら、こう言った。
「そんなことはどうでもいいの。あたしは、あんたたちが無事に帰って来てくれただけで嬉しいわ」
「はははは、お前は、いつから俺の親になったんだ?」
「う、うるさい。家族の心配をするのは当然でしょう?」
「……そうだな。じゃあ、帰るか。俺たちの家に」
「ええ、そうしましょう。みんなが待ちくたびれてるから、早くあの荷物を運びましょう」
「ああ、そうだな。じゃあ、運ぶか」
俺たちがスッと起き上がると、アパートに留守番していたはずのメンバーが集結した。
その後、例のたくさんの荷物をバケツレースでミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)の周囲に運び始めていた。
____いつのまにか、ミサキの周囲には大量の食糧《しょくりょう》が置かれていた。
ミサキは、あぐらをかいて座ると、パンッと手を叩いた。
すると、たくさんあったはずの食糧がどこかに転送された。
どこに転送したのかは謎《なぞ》だが、おそらくミサキの外装……つまり、アパートと合体している巨大な亀型モンスター(金属製)の体内に転送したのであろう。
さて、そろそろ帰ろうかな。
俺がミサキにアパートまで転送してもらおうとしたその時、複数の何かに押し倒された。
それは、俺がよく知っているメンバーだった。
「ナ、ナオトさん! おかえりなさい!」
マナミ(茶髪ショートの獣人《ネコ》)は少し涙目になっていた。
「ナオ兄、おかえり!」
シオリ(白髪ロングの獣人《ネコ》【ジト目】)は、いつも通りの真顔だった。
「兄さん、おかえりなさい」
ツキネ(変身型スライム。黒髪ポニテ。今は、アパートの管理人である『橋本 かな子』さんに変身している)は優しい笑みを浮かべていた。
「マスター、よくぞ、ご無事で」
その時のコユリ(本物の天使。銀髪ロング。いつも無表情というよりかは感情を表に出せないようだ。ナオトのことを独り占めにしたいと思っているかもしれない)は、少しだけ笑っているように見えた。
「よう! マスター! 無事に帰ってこられたみたいだな。さすがはあたしの……いや、あたしたちのマスターだ!」
カオリ(首から下を包帯でぐるぐる巻きにしているゾンビ。ピンク色の長髪と赤い瞳《ひとみ》が特徴)は嬉しそうに笑っていた。
「お兄様! 会いたかったですわー!」
久々に登場した、コハル(『藍色の湖』の主。旧名は『インディゴファースネーク』。藍色の長髪と黒い瞳《ひとみ》が特徴。ミサキの妹。ライクかラブかは分からないが、ミサキのことが好き。ナオトをお兄様と呼ぶ)は、俺のおなかに顔をスリスリと擦《こす》りつけながら「えへへー」と嬉しそうな声を出していた。
「お楽しみのところ申し訳ないけれど、少しいいかしら?」
カリン(『黄竜《こうりゅう》』と『麒麟《きりん》』と『陰《いん》』と『陽《よう》』の力を持った幼女。金髪ツインテールと銀色の瞳《ひとみ》が特徴。昔、力を暴走させてしまったせいで【封印石】に封印されていた。『四聖獣《しせいじゅう》』たちが深い眠りにつかなければならなくなった原因)は、両腕をあるのかないのか分からない胸《むね》の前で両腕を組みながら、そう言った。すると。
「ちょっと待って。あんたが言いたいことは分かるから少し待っててくれる?」
ミノリが応答した。
「そう。なら、いいのだけれど」
カリンはそう言うと、俺たちに背を向けた。
その後、アパートに向かってミサキの外装を軽々と登り始めた。
登るというよりかは、忍者のように高速で移動し始めたという方が妥当《だとう》だろう。
ミノリは俺の周囲に集結していた全員を集合させると、早くアパートに戻るように言った。
「あとは私に任せていいから、あんたたちは早く戻りなさい!」
ミノリの発言に対し、コユリは。
「はいはい、分かりましたよ。アホ吸血鬼」
サラッとひどいことを言った。しかし、ミノリはこう言った。
「じゃあ、早く行きなさいよ。銀髪天使」
いつもは、この二人がケンカ腰になるパターンだが、今回はそうならなかった。
俺がいない間に何かあったのだろうか?
そんなことを考えていると、ミノリ以外のメンバーと名取がミサキの外装を登り始めた。(名取の影が薄《うす》すぎるせいか、全員に認識されていない)
コユリは天使なので飛んでいるが、マナミたちと名取はカリンと同じく忍者のように高速で移動していた。(コユリは、未《いま》だに眠っている『狐の巫女《みこ》』をアパートに帰るついでに運んでいた)
小さな体からは想像もできないくらいの身体能力なのは相変わらずのようだ。(ツキネの身長は百五十二センチなので例外。ただし、身体能力においては他のメンバーと変わらない)
俺とミノリの二人きりになると、俺はムクリと起き上がった。
その後、ミノリの方に歩き始めた。
ミノリは、こちらに気づき何事かと身構《みがま》えたが。
「ミノリ、お前に言っておかなきゃいけないことがあるんだが……聞いてくれるか?」
「な、なによ、急に改まって。何かあったの?」
「もし……もし俺が……」
「もし、ナオトが?」
俺は迷った。これを言ってしまったら、ミノリとの関係が終わるかもしれないからだ。
俺が言うのを躊躇《ためら》っていると、ミノリが、こう言った。
「用があるなら目を見て言いなさいな! ……みたいなことを『か○み』ちゃんに言ってほしいの?」
「そうじゃない。俺はお前に大事な話があって……」
「大事な話をする時は、ちゃんと相手の目を見て言わないと伝わらないわよ?」
「でも、俺は……」
「でも、じゃない! あんたは、あたしに言いたいことがあるんでしょう! はっきり言いなさいよ!!」
「……なら、お前はこれから俺が話すことを聞いても俺と旅を続けてくれるのか?」
「ええ、もちろんよ! 私を誰だと思ってるの? どーんと来なさい!」
「……そうか……なら、もし、俺がお前たちの敵だとしたら、お前はどうする?」
「言ってる意味がまるで分からないわ。ナオトは今までもこれからもずっとあたしたちの家族よ。もし、敵だったら、あたしが……あたしたちが目を覚まさせてあげるわ!」
「……本当か?」
「本当も何も、あたしたちにとって、あんたはもう必要不可欠な存在なんだから、当然でしょ?」
「俺が鎖《くさり》の力を制御しきれなくなって、お前たちを傷つけてしまうかもしれないんだぞ?」
「その時はあたしたちが止めてみせるわ!」
「じゃあ……じゃあ……」
「いい加減にしなさいよ! さっきから、なに弱気になってんのよ! 少なくともあたしは今まであんたのことを敵だなんて思ったことないわよ!」
「…………」
「あたしは、ナオトがいない世界で生きていける自信なんてないし、あんたがいるから楽しく旅が続けられてるのよ?」
「……違う」
「何が違うのよ! 言ってみなさいよ!」
「俺はそんな人間じゃない! 俺は……自分が分からないんだ」
「……そんなの、当たり前じゃない……」
「…………」
「要するに、あんたは怖いんでしょう? いつか自分がこうなったらとか、自分のせいでみんながひどい目にあったら……って」
「俺は……」
「ナオト!」
「は、はい!」
「あんたの本音を言いなさい。じゃないと、あたしは今のあんたとは旅を続けられない」
「…………」
「下を向かずに、あたしの目を見て言いなさいよ。さすがに、キレるわよ?」
「……かったよ」
「えっ?」
「すごく怖かったよおおおおおおおおおおおお!!」
ミノリは両膝をついて泣き叫ぶ俺をしっかり抱きしめると、頭を撫で始めた。
「もう、最初からそう言いなさいよ。バカ」
「う、うう……だって……だって!」
「はいはい、よーしよし。怖かったわね」
「うわあああああああああああああああああん!!」
「まったく、あんたは無茶しすぎよ。自分一人でなんとかしようとせずに、あたしたちを頼りなさいって、いつも言ってるでしょ?」
「……そんなこと分かってる。だけど、だけど!!」
まさかナオトの履歴書に書いてあった通りのことが起きるなんて思いもしなかったわ。
ストレスを感じ過ぎると、弱虫になる。
しかも、ナオトの母親に近い身長の者でないと元には戻らない……か。
でもまあ、あたしに頼ってくれたから、よしとしましょう。
俺がコンビニで働いていた理由がこれだ。
俺が働いていたコンビニは、先生が紹介してくれた店で店長さんも店員さんたちもすごくいい人たちだったから、今までこうならずになんとかやってこられた。(例を挙げるなら、焼肉店 セ○ゴクだろう)
まあ、こうなったのは約十年ぶりになるかな。というか、何回なっても慣れないものだな。
ミノリは彼が泣き止むまで、まるで彼の母親のように彼の頭を撫で続けていた。