━━━━━━━━━━━━━━━
ある日、みことがそわそわしながらスマホを見つめていた。
そんな様子に気づいたすちが、隣から覗き込む。
「なに見てるの?」
「……温泉、行きたいなって思って……」
「温泉?」
「うん……すっちーと、ふたりで。誰にも内緒で……ふたりきりで、ゆっくりしたい……ダメ?」
すちは目を細めて微笑む。
「いいよ。俺も、みこちゃんとふたりきりになりたいって思ってた」
数日後。
ふたりはひっそりと人気の少ない山奥の温泉旅館へ向かった。
チェックインを済ませ、部屋に入ると、広々とした和室に内風呂つきの露天。
静けさと木の香りに包まれた空間に、ふたりの心は自然とほどけていった。
みことは嬉しそうに畳に座り込み、「わぁ……すちくん、見て、空が……!」と指差す。
すちはそんな無邪気なみことを見て、そっと抱き寄せた。
「……こういうとこ来たら、なんか……したくならない?」
「……えっ? ……な、なにを……」
「俺のこと、もっと好きにさせてやろうかなって」
「や、もう……充分好きやもん……」
「じゃあ、その“充分”をもっと深くしようよ」
すちはみことの手を引き、露天風呂の縁に腰掛けさせる。
湯気の中で交わされるキスは、ゆっくり、けれど確実に熱を上げていった。
肌に触れる湯のあたたかさと、互いの体温が溶け合っていく。
「誰にも見られないって、こういうことか……」
「すちくん、顔赤いよ……でも、嬉しそう……」
「当たり前。みこちゃんがこんな可愛い顔して、俺のものって思えるなんて」
露天の湯気に包まれながら、ふたりの時間はゆっくりと、けれど確かに、また熱を帯びていった。
━━━━━━━━━━━━━━━
♡400↑ 次話公開
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!