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翌日の昼、ふたりは旅館の近くを少しだけ散歩することにした。
みことはすちの手を握りながら、ちらりとすちを見上げた。
「なんか……こうして歩いてるだけでも、しあわせ」
「俺も。……なんか、ほんとにふたりきりの世界って感じだ」
誰にも気づかれない場所、隠し通した関係。
だからこそ、今日この時間がいっそう特別に感じられる。
ふたりは展望台に立ち寄り、湯気の立つ缶コーヒーを分け合って飲む。
みことのほっぺたが赤く染まっていて、すちはそれに思わず触れた。
「冷えてる……温める?」
「……それ、反則」
みことはすちの手のひらに頬を寄せながら、微笑んだ。
「すっちーの手、ほんと安心する……」
「じゃあ、手じゃなくても、温めるよ」
「えっ……?」
部屋に戻ると、すちはゆっくりとみことを抱きしめた。
昼間の光の中で、改めてみことの存在を確かめるように、優しく額をくっつける。
「ねぇ、みこちゃん。……もう戻りたくないね」
「……うん。ここで、ずっとふたりだけでいたい……」
「それが叶わないってわかってても……みこちゃんといると、そう思っちゃう」
窓の外には、静かな風。
言葉少なでも、しっかりと伝わっていた。
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