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夢を見た。暖かくて輪郭が優しくて煙草とスパイスの効いた咖哩の香りがした。

少し癖のついた赤毛を揺らした彼はボロ雑巾のごとく床に這いつくばってる私をそっと抱えあげ、雲のように柔らかいベットに横たわらせた。


彼は少しごつごつした冷たい手で私の頬にできた傷を優しく撫でたあと、頭を撫でて丁寧に、丁寧に手当してくれた。


「全く。あまり怪我をするなど言っただろう」

私は彼の言葉に少し口角をあげ

「オダサクが手当してくれるから」


私がそう言うと彼は少し苦笑いして私の裂けた皮膚を縫い合わせ、破れた皮膚に蓋をしてくれた。





冷たいコンクリート。

生温い血液。

じくじく痛む傷口。

誰も手当してくれない切り傷と擦り傷。


なんて惨めな事だろう。もういっそ、君のそばに行かせておくれ。もう十分じゃないか。


希死念慮が一気に溢れ出た。


もう嫌だ。

痛いのは嫌だ。

苦しいのも嫌だ。

寒いのは嫌だ。



私の心に住み着いて離れない子供の私が一気に泣き出した。大丈夫、探偵社の誰かが来てくれるよと慰めても依然、涙は止まらない。いずれ、わたしと子供の周りは水浸しになって


痛いし、寒いし、苦しいし、



自分の首を自分で絞めてた

子供がぽつりと呟いた。誰か…ぼくを見つけてよぼくを暖かい手で抱きしめて、慰めてよ

とそして「ぼくは一人は嫌だ」と。


夢に出たオダサクは居ない。暗い路地裏で誰が私を見つけられよう?

私が遥か昔から死ぬほど望んでた死がすぐそこにあるのに、私はそれを拒否している。

私は子供に聞いてみた

何故、嫌なのだと。彼は淋しいと答えた。いつもオダサクがいてくれただけど、ある日突然消えてしまった。一人は慣れてる、だから大丈夫だと自分に言い聞かせていたと彼は言う。

だがその言葉は震えていて、目尻に少しばかり涙が溜まっていた。


そんな子供の姿を見て私は何を思っただろう。まだ死にたいと思っただろうか?


否、死ぬのなら織田作のそばで死にたいと思ったに違いない。

私は私を救えない。救えるのは織田作だけだ。なら彼が迎えに来るまで静かに待ってやろうじゃないか。


迎えに来てくれたその時にとびっきり驚かせてやって、彼と共に行こうじゃないか。

子供にそう言うと子供はピタリと涙が止んだ。


嗚呼、誰かの足音と煙草とスパイスの効いた咖哩の香り。さっきの夢は正夢だったのか、それともまだ夢の中にいたのか

誰が私を迎えに来たのだろう


「太宰さん、太宰さん!!」


私の名を呼ぶ青年の声で目を覚ます。


そこは見慣れた探偵社の医務室だった

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