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(ここからが私の出番ね。自分の手を汚さずに,、人の手を使って制裁するんだから、落ち着いて行動しなければ!)
目的地に到着したときはまだ夜明け前で、森の中は当然暗く、まずは前日に設置したライトの電源を入れに颯爽と車から降り、誰よりも先に森の中に進んだ。
榊原さんと岡本さんは、夫を運ぶために後部座席でやり取りし、斎藤さんは現地に持って行く荷物をまとめる。
地元よりも標高の高いところだから、当然肌寒いハズなのに、これからやってやるぞという気合いが、これでもかと入っているおかげで、寒さを感じることがなかった。サクサク森の中を歩き、設置しているライトに次々と電源を入れて、明かりを照らす。
ライトのスイッチを入れるたびに、仄かに照らされる明かりが、私の闘志に火をつけてる気がした。
すべてのライトを照らし終え、急いで車に戻ると、榊原さんは夫を背負い、その傍を岡本さんが付き添って、足元にライトを照らして明るくした。
「奥様、喋っても大丈夫なように、津久野さんに耳栓しました」
「ありがとう、助かるわ」
「お願いがあります。ハナの荷物運びを手伝ってください」
親指で後方を差したので、言われたとおりに斎藤さんのもとに向かう。
「精密機器は私が持つので、食料品など細々したものが入ってる、このリュックを持ってもらえますか? 少しだけ重いです」
「大丈夫よ、まかせて」
大きなリュックサックを受け取り、ポケットからスマホを取り出した。
「奥様、森の中につけたライトの点灯、ありがとうございます。これで少しでも時間短縮して、準備できます」
抱えるように両腕で荷物を持つ斎藤さんの足元を、持っているスマホのライトで明るく照らした。
「何からなにまで、ありがとうございます」
「いいのよ。これからアナタたちは私の代わりに、存分に働いてもらうんですもの」
お互いほほ笑み合いながら、躓かないように目的地に足を進ませた。
「ハナと奥様、手を貸してください。津久野さんを木にキッチリ縛りつけます!」
輝明さんはのん気に木の根元に倒れていて、榊原さんが長い鎖を巻きやすいように準備している。そこに斎藤さんとふたりで駆けつけて、4人がかりで彼の体を動かせないように、キツく木に括りつけた。
「よし! あっちにカメラを設置して、ばっちり映るようにセッティングします」
フットワークの軽い榊原さんは、手早くビデオカメラをセッティングする。少し離れたところから、輝明さんの様子が綺麗に映るようにしてくれた。
「絵里さんと斎藤さんは、津久野さんの両脇に立ってください。そうそう! 彼の表情がカメラで映せるように、そこから制裁を加えることでよろしくです!」
私は皆さんが小休憩できるように、紙コップに暖かいお茶を淹れ、コンビニで買ったおにぎりを用意した。輝明さんの薬が切れるのは、予想では夜明けと同時らしい。それまでに少しでも休憩をとってもらって、本番に挑んでもらう。